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公認会計士試験制度に関して思うこと(前篇)

平成15年5 月に公認会計士法の改正が行われた。その趣旨は金融審議会・公認会計士制度部会報告の「公認会計士については、量的に拡大するとともに質的な向上も求められている監査証明業務の担い手として、拡大・多様化している監査証明業務以外の担い手として、さらには、企業などにおける専門的な実務の担い手として、経済社会における重要な役割を担うことが一層求められている」とし、(1)監査証明業務の担い手のみならず、(2)監査証明業務以外の担い手、(3)企業などにおける専門的な実務の担い手、を期待されて公認会計士試験制度の改革が行わた。これに伴う新試験制度の施行は平成18年から導入された。

http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/singi/f-20021217-1.pdf



補足であるが、平成14年の金融審議会・公認会計士制度部会により「公認会計士監査制度の充実・強化」が発表された時には、奥山章雄日本公認会計士協会会長、同澤田眞史副会長がメンバーとして参加していた。また、島崎憲明住友商事株式会社常務取締役はこの当時も部会のメンバーであった。平成21年度から始まった公認会計士制度に関する懇談会に参加された平松一夫関西学院大学教授、八田進二青山学院大学会計大学院教授らは、平成15年度改正には加わっていない。



繰り返し1になるが、平成15年金融審議会・公認会計士制度部会報告の報告には、「公認会計士については…(中略)…監査証明業務の担い手として、…(中略)…監査証明業務以外の担い手として、…(中略)…企業などにおける専門的な実務の担い手として…」と公認会計士のあり方が明確に謳われていることである。すなわち、この当時は、公認会計士試験合格者は「公認会計士として」活躍することが期待されて制度が改正が行われたのである。



しかしながら、その後(2)監査証明業務以外の担い手、(3)企業などにおける専門的な実務の担い手、としての需要は伸びず、ここ数年で1,000名を超える待機合格者(未就職者)を生み出してしまう結果になっている。今年に関しても金融庁は「1,500名~2,000名が適当」としており、現在の状況からすると監査法人の求人数は伸びず数百名の待機合格者が発生してしまう可能性が高くなっている。



金融庁は、平成23年1月21日の公認会計士制度に関する懇談会で企業財務会計士なる新資格を創設し、もって公認会計士としての待機合格者を抑制しようとしたが、平成23年度の参議院金融財政委員会において、佐藤ゆかり自民党参議員からの修正法案が提出されて全会一致で企業財務会計士創設を含む公認会計士法の改正が見送られた。この結果、公認会計士試験合格者の未就職問題は再度検討をし直すことを余儀なくされたのである。



(後編に続く)

公認会計士試験合格者で未就職の方へ(後編)

(前編より)

同じことは司法試験の合格者の方にも言えます。公認会計士試験や司法試験の受験時代は辛く苦しい下積み時代でしたね。合格と同時に幼虫・さなぎから蝶に羽化させてあげられる制度が維持出来ていれば、それは喜ばしいことでした。しかし、現在はいずれの試験もそのようにはなっていない。運よく監査法人や法律事務所に就職出来る方もいますが、自ら就職先を開拓しなければならない方もいます。大量合格し未就職者が発生するようになって間がありませんから、支援体制が未整備なため本来は不要であるご苦労をかけています。未就職者の方々が深い失望を感じているのを肌で感じますが、日本の景気が悪く、公認会計士監査や弁護士の法的解決のニーズも縮小気味です。監査や法律の世界だけが活況という訳ではありませんので、今は致し方ありません。今は幼虫・さなぎの状態で世の中の変化を待つしかありません。

ただ、ここで負けないで欲しいと思います。皆さんには将来があります。
私の知り合いに幼い子供を残して不治の病に倒れ生涯を閉じなければならなかった女性がいます。また、今回の東日本大震災において家族の安否を心配しながら最期を遂げなければならなかった方がたくさんいらっしゃいます。「もっと生きたい」と心で叫びながらその夢を叶えられなかった方々がいる。彼らは将来を期待することを強制的に奪われてしまいました。本当に悲しかった、やるせなかっただろうと思います。それに対して、皆さんには将来があります。皆さんには夢を実現する能力と可能性があります。彼らが果たせなかった夢の分も懸命に生きていこうではありませんか。

人生には思い通りにならないことがいっぱいあります。私にも実現出来なくて残念に思うことがたくさんあります。けれども、前向きに生きていれば意外な展開が待っているのも人生のように思えます。人生を語るには足らない未熟な男ですが、それでも「あの時道が閉じられたと思った。失意の中でやってきたことが、後でこんなに素敵な花を咲かせるとは」と思わずにはいられない出来事がいくつかあります。皆さんより少しだけ長く生きてきた者としてアドバイス出来ることは、「人生において何が幸運かは後になってみないと分からない。不遇だとなげいていても始まらない。与えられた道を懸命に歩もう」ということです。

与えられた道(運命)には何か意味があります。先のことは誰にも分からないので不安かもしれませんが、自分を信じて歩み始めて欲しい。皆さんは公認会計士試験や司法試験に合格する能力をお持ちです。その能力は必ず役立ちますし、その資格が輝き出す日が来ると私は信じています。

アップル社のCEOであるスティーブン・ジョブズ(Steven Paul Jobs)氏がスタンフォード大学で卒業生に向けてスピーチした内容を読んだことがありますか? 読まれていない方はネット検索して読んでみて下さい。彼も自分たちで設立したアップル社を追い出されるという「レンガで後ろからぶん殴られたようなひどい経験」をしました。でも、彼は負けなかった。そして今の成功をおさめました。誰にも1つや2つはそんな経験をするものです。

「就職が無いならば試験など受けなければよかった」と書き込むお気持ちはよく分かります。若い皆さんには酷な環境です。苛立つ気持ちもよく分かります。そのような中で、私は無力で皆さんに直接何もしてあげられず申し訳なく思います。

それでも「あの時、公認会計士試験や司法試験を受験して良かった」と皆さんが思える日が来ると信じています。仕事の利害は考えていませんし、私の全くの個人的な意見ですが、今この時にも会計士試験や司法試験に挑戦したいと思う若者に会えば、迷わず「チャレンジしてごらん」と勧めます。

一流企業に入れたとしても、学閥・派閥の壁があったりするし、意図せざる異動・転勤もある。JALや東電の例もあるし、最近ではM&A等により、親会社の若手社員に気を使いながらの飲み会は楽しい経験ではありません。40歳を超える頃には「若手育成」の名の下に役職を追われる経験に愕然とする者も少なくない。定年になれば会社に入る事すら許されない。企業に勤務して成功するのはごく一部の人だけです。

何をもって人生の成功と言うかは人それぞれですが、私には「周りに翻弄されずに自分らしく生き抜くこと」に思えます。これからの社会は資本市場のボーダレス化がさらに加速することでしょう。会社勤務でも個人事業でもいいですから、「自らの人生の選択肢は自らが握って人に渡さない」ということがこれからのキーワードと思います。

若い皆さんの人生はまだまだ長い。希望通りのスタートではないかもしれませんが、貴方の人生の途中で必ず良いチャンスが巡ってきます。チャンスは努力してきた者に多く訪れます。それまでに様々な経験をして、来るべき日に輝いて下さい。

繰り返しになりますが、このブログはあくまでも個人的な意見を述べています。会社の立場・仕事とは全く無関係です。私の文章が稚拙で、このブログを読まれて気分を害することがあれば、心からお詫びいたします。


ちなみに、昨年(2010年)10月30日にもこのブログにて同様のことを書きました。もしご興味があればお読み下さい。

「不幸にも監査法人に就職出来なくても」
http ://ameblo.jp/piropo-f/entry-10692324840.html


また、一般的な就活に関して今年(2011年)2月16日に思っていることを書きました。

「就活して入社しても定年になれば辞めなければならない。就活狂騒曲は間違っていませんか?」
http://ameblo.jp/piropo-f/entry-10803534996.html

公認会計士試験合格者で未就職の方へ(前編)

公認会計士試験合格者の中には多数の未就職者がおられます。せっかく難しい試験に合格出来た方々なのに、残念でなりません。

未就職者問題の解決のため今国会に提出された公認会計士法の改正案に企業財務会計士創設が盛り込まれましたが、実現は見送られました。この資格創設が最適解だとは思いませんが、何らかの方法で未就職者問題が早期に議論されて解決に向かうことを願って止みません。平成15年に改正された公認会計士試験制度の設計に問題があるのは事実です。その問題は早期に解決されなければなりません。

しかし、未就職者の当事者の方々は、その解決を待つべきではないと思います。たとえそれが公認会計士登録要件の「実務経験」に直結しない職業経験だとしても、1日も早く何らかの就職をして欲しいです。

例えば、資格取得をすることなく、新卒として希望の会社に入社出来たとしましょう。入社した者のうちやりたい仕事に就ける者はごく一部です。優秀であったとしても「なんでこの私が!」と思うような部署へ配属になる可能性があります。外資系企業には職種別採用が多く見られますが、日本企業はある程度の専門性を持たせつつも幅広い業務に携わる社員(ゼネラリスト)を育てようとしているといわれています。そのような考えの日本企業が「仕事は多面的であり、日のあたる仕事もあれば日陰の仕事もあることを若手に経験させよう」と考えるのは至極当然に思えます。親心ってやつかな(笑)?

同じ釜の飯を食って、共に額に汗して働く経験は貴重だ、と年配の社会人の方は共感を持って下さると思います。名だたる経営者の本を読んでも、皆下積み時代を経験しています。希望通りにはならない状況でも絶え間ない努力をしたからこそ、その後に経営者として成功することが出来た、のは私が言うまでもないでしょう。「滅びに至る門は広い。狭き門より入れ」と書き残したのはアンドレ・ジイドでしたっけ? それとも聖書の言葉でしたっけ?

企業会計実務の世界に限っても「監査法人の人は作成者(企業側)の本当の苦労が分かっていない」と感じている企業経理実務者は少なくありません。ましてや今後は上場企業にIFRSが適用される可能性があります。言うまでもなくIFRSは原則主義、企業側で会計基準に従って判断して会計監査を受けなければなりません。そのような環境に身を置くのも良い経験になるでしょう。

また、何事も一人でやらねばならないような小さな会社で会計も税務も手がけるのも貴重な経験です。大きな会社では歯車の一つでしかなく、実務を経験するといっても業務の幅におのずから限りがあります。中小企業ではかけがえのない経験をすることが出来るかもしれません。そもそも、監査をしたくて会計士試験を受けたのでしょうか? 経営者に的確なアドバイスをするような仕事が出来るようになりたくて受験を決めたのではなかったでしょうか? いい機会ですので、監査法人にいては分かるはずもない、末端の社員の気持ちも分かる公認会計士を目指すのかいかがでしょうか。


企業のIT化は日進月歩ですが、それでも会社を動かしているのは社員であり、社員の下した決断です。そんな社員のやる気を引き出すことは今も重要です。だから、リーダーシップやコーチング等の社員のモチベーションを高めるセミナーや書籍があふれているのです。監査法人に勤務してしまうと、企業会計実務の現場で経理・財務部の社員がどれだけ苦労をしているのかに気が付かず、上から目線の指示になってしまうことがあります。監査法人を経験してから企業で活躍するという順番が自然だと考えるのは理解できますが、先に会社に勤務した方が、若さ故の失敗も許されますので、様々な経験をしやすく視野を広げられます。

(後編に続く)