🎸🦔(🦔目線)
同棲中
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はーーぁっ」
時刻は21時と少し。ちょっと遅めの夕食を終え、ソファに直行する由依。
いつも通りころんと仰向けになり、ブランケットをお腹に抱えて一息ついて、スマホをすいすいといじりはじめる。
私はというと、申告したよりも帰りが30分遅れたという理由で由依を怒らせ、罰として粛々とお皿を洗っているところだ。
「りさぁー?」
「はいー?」
「お風呂も入れてほしいなあ。あと掃除も昨日できてなくて…」
「……」
「りさ?」
「わかりましたっ」
私より優位に立てる理由を見つけた由依は強い。
たとえそれが本当に些細なことでも、私を寂しがらせた、私を大事にしなかった、信用取り戻してよ、と、とにかく強気に出る。
普段はしっかりしてて我儘もあんまり言わなくて、私にたくさん尽くしてくれる由依だけど、ちょこちょここういう日がある。
そして私も、なんだかんだ少しだけ、そんな我儘な由依を待っている。
いつ何時でも自分のことを一番にしてほしい、それがわかるようにしてほしい、そういう我儘は言われれば言われるほど、私の存在価値が上がっていく気がして。
食器洗いとお風呂掃除を終え、給湯のスイッチを入れてリビングへ戻ると、スマホ越しの由依と目があった。
「ありがと、理佐」
「ううん、」
「ん」
スマホから目を離さないまま、腕を広げる由依。
思わず駆け寄って由依の上にダイブし、胸に顔を埋める。
「ゔっ、ちょっ重、」
「ゆいーー」
「なに、」
「んふふ」
ふわふわの胸に埋めていた顔をちょっとあげて、由依を見上げた。
ちょっと上目遣いになるこの顔を、由依が好んでいることなんてとっくにわかってる。
「…はぁ、」
軽くため息をついた由依の片手が頭に伸びてくるのを感じて、目を閉じた。
頭を撫でて、髪をゆるゆるとかき分けて、そのまま軽く握り込む。
スマホ片手に、もう片方の手で気怠げに私に触れてくれるこの時間が好き。
「ねえゆい〜」
「なあに」
スマホから目を離さずに、声色だけは優しい由依。
これは…いける。
精一杯の上目遣いで、期待をこめて由依を見る。
「お風呂一緒入ろ」
「嫌」
あれ!?なんで!?
「……」
「私を怒らせてること忘れたのーー」
「…いろいろやってあげたもん」
「フン」
「フンて」
鼻を鳴らしつつ、少し緩む口元を私は見逃さない。
もぞもぞと上に上がって、スマホと由依の間に割って入る。
「ねーーえ近い」
「お願いっ」
「いやd、ん、」
唇を奪うと、顔を背けようとする。
…やーだ、逃がさないよ。
片手で頬を掴んで、キスを深くする。
諦めたように力を抜いた由依の身体をもう片方の手でそっと撫でると、唇の間から小さく息が漏れた。
「ね?由依」
「嫌」
「なんで!?」
こんなにうまくいかないとは思わなくて、愕然と由依を見つめる。
由依はぷいと顔をそむけて、スマホをテーブルに放り、立ち上がった。
「私先に入ってくるねーー」
「い・や・だ」
「はいはい」
「ねえええ」
しがみつく私を振り払って、スタスタとお風呂場に消えていく由依。
…はあ、つれないなあ。
⭐︎
ちゃんと由依が上がるのを待ってからお風呂に入り、スキンケアやらなんやらを終えてリビングに戻った時には、由依はもう寝室に引き上げていた。
えー、先寝ちゃったのかあ。
今回ちょっと、いつもより冷たいな。私も仕返ししてやろうかなあ。
由依がいない部屋にいてもやることがないので、私もさっさと寝室に向かう。
いつも私が寝ている方を律儀に空けて布団の中で丸くなっている由依を目にしたら、仕返ししてやろうなんて気持ちはどこかに消えて、いそいそと布団に潜り込んだ。
こっちに背中を向けている由依をそっとつんつんして、声をかける。
「ゆーい」
「………」
「由依?寝た?」
「………………」
あれ?まじで?
「…………ゆいー…」
「……………………………寝たよ」
「あ!!由依!!もう寝ちゃったのかと思ったよお」
「寝てます」
「もうっ」
ぎゅっと抱きつくと、はあっと大きなため息をついて、由依がこちらに向き直った。
「ねえ機嫌治った?」
「今日は治らない」
「えー」
「寝るまでよしよしして」
「何それかわいい」
「うるさい」
「んふふー、わかったよっ」
腕枕して、さらさらの髪を撫でて、おでこに1回キスして。
気持ちよさそうに目を細めた由依から、唇に1回お返しを貰って。
…意外と寝るまで、時間かかるからな………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございました😊