「かい……?」
廉の顔はちっちゃいから、ほっぺたを触るつもりだったのに親指が唇に触れてしまって、想像通りの柔らかさに思わずその輪郭をなぞった。
「……っ……」
廉の肩がピクってなって、俺を見ていた廉の瞳が伏せられる。
あぁ、廉ってこんな表情もするんだ
……もっと
もっともっと……
知らない廉を知りたい
俺しか知らない廉を知りたい
もっと触れたい
目の前にある長い睫毛に縁取られた琥珀色の瞳
いつか、俺だけ写して欲しい、とか
自分の独占欲の強さに驚く、けど
「…………」
「……え?……」
廉がボソリとなにか呟いたのが聞こえなくて聞き返したら、廉のほっぺたを触っていた俺の手をぺいって振り払った廉が俺を睨むように見上げた。
「ほんま、俺が悪かったって。からかってごめんって」
「え?廉、なんか怒ってる?」
だけど、顔と耳が……なんなら首まで赤くて。
「えぇ?!れぇん、どうしたの?!もしかして照れてるの?!えぇー!めっちゃ可愛いんですけどっっっ!」
いつもクールで、俺と話してる時は絶対的なお兄ちゃん感を出してる廉が、首まで真っ赤にして困ったように怒ったみたいに何か言ってる姿は今まで見た事のない姿でほんっとに可愛く見えちゃって思わずぎゅーって抱きしめちゃった。
「離せ!ばか!あほ!」
「あははー!れぇん、かわいーい」
俺の腕の中でじたばたしてる廉もほんっとに可愛い。
「可愛くないやろ!」
「かわいいもーん」
「もぉ、離せって、ほんまに!」
「やぁだー」
ぎゅって腕に力を入れて首もとに顔を埋めたら、すんごいいい匂いがして今自分が何してるかって突然しっかり把握して心臓がバクバク暴れ出して汗がまた吹き出した。
このままじゃ、廉にバレちゃう
心臓がばくばくしてるのきっとわかっちゃう
……でも、ずっとこうしてたい
廉は俺の腕の中から出ることを諦めたみたいでさっきからおとなしい。
「……れん、いいにおい、する」
「なんも付けてへんけど」
「うん。でもいいにおい」
「海人は無臭やな」
離れるタイミングも離れた後にどんな顔したらいいのかもわかんなくて、そしたら今度は急に恥ずかしくなって廉の肩にぐりぐり額を擦り付ける。
「そろそろ昼休み終わんで?」
ぽんぽんって廉が優しく俺の背中を叩くから、仕方なく廉から腕を外した。
「ほら、行こ?」
「……うん」
また差し出された手を今度は俺から恋人繋ぎにしちゃっても廉は何も言わずにまたゆるゆると繋いだ手を振って歩いていく。
だけどさっきの廉とはちょっと違うとこもあって……
ほんのり赤く染った耳と首。
これってもしかして、期待しちゃってもいいヤツだったりしちゃったりしちゃうんしゃない?なんて、今度は俺が鼻歌を歌いながら教室に戻った。
おしまい
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