この犬は、身代わりだった。
15年前、
まだ息子が私のお腹の中にいた頃、
宇宙で1番愛していた私の愛犬が死んだ。
流産するんじゃないかと、
周りが心配するほど泣いた。
現実を受け入れたくなくて、
死んだ愛犬を火葬場になかなか連れて行かなかった。
死んだ愛犬を抱きしめながら、
2日間過ごし、
死んで3日目に、
やっと火葬場に連れて行った。
愛犬の骨を骨壷に入れ、
ワーワー泣きながら帰った。
私は小さな頃から、
犬を飼う時、
ペットショップで買うことはしない。
ずっと、
捨て犬や、迷い犬を、飼ってきたからだ。
しかし、愛犬が死んで、
頭がどーにかなっていた私は、
火葬場の帰り道、
骨壷を抱えたまま、
某有名ペットショップに入り、
仔犬を、18万円で、買ってしまったのだ。
賢そうで可愛い犬は、
たくさん売っていたのだが、
頭がどーにかなっていた私は、
頭にウンコを乗っけたまま、
バタバタ走り回っている、
バカそうで見た目の可愛くない犬を、
そのまま抱きしめて、連れて帰った。
お金は、コンビニのATMでおろして全額支払った。
ペットショップの店員さんが、
「シャンプーして、キレイにしてから、お渡しします」と、言ってくれたが、
私は、アタマウンコ犬と、骨壷を大事に抱えて連れて帰った。
そう、この子は、身代わりだった。
愛犬が死んで、
半年近く毎日号泣していた私を、
身代わり犬が、慰めてくれた。
息子が産まれて、
育児と仕事の忙しさで号泣はしなくなったが、
まだ時折メソメソする私を、
身代わり犬が、慰めてくれた。
あれから15年以上の歳月が流れ、
身代わり犬はあと数ヶ月で16才になる。
購入時、私と身代わり犬は契約を交わした。
「先代の犬の100万分の1しか愛せないけど、死ぬまで大事に世話するから、バカでもブスでも、楽しく長生きしてね」と、私。
「任せなさい」と、仔犬。
大病で手術をしても、
全身皮膚病になっても、
痴呆症が始まっても、
身代わり犬は、元気に生きていている。
昨年から、ガンになり、
その腫瘍の大きさは、
人間の握りこぶしほどある。
老犬だから、全身麻酔も出来ず、
手術も出来ない。
それでも、
身代わり犬は、
毎日楽しそうに生きている。
そう、
私との契約を守っているのだ。
この子が死んだら、
どうしよう、どうしよう、と、
ここ最近毎日思う。
お願いだから、お願いだから、
死なないで。
寿命が尽きる時も、1人で死なないで。
私の腕の中で死んでね。
結局、先代の犬同様、
身代わり犬を愛しすぎてしまった、
哀れな私。
ではでは皆様、本日も良い1日をお過ごし下さいませ
またね