



そう、コレが、私の 定番挨拶。
別にバイリンガルでも帰国子女でもないんだけど、
とにかく、
発しやすい言葉、
それが、「ハ~イ」だった。
物心ついた頃には、どもり、
今で言う吃音。
とにかく、私はどもっていた。
特に発しづらい言葉があって、
私の場合、
あ行、か行、た行、ま行、ら行、
濁音全般、
ほとんどの言葉がアウトやないかい、
って言われるほど、
発しづらい言葉ばかりだった。
そうなると、普通、
話すのも嫌になると思われがちですが、
私は、演劇部、放送部、年頃にはタレントオーディション、などなど、
この 吃音と共に過ごしたのです。
この 吃音ってのは、なかなかの厄介もんで、
普段も結構どもるのに、
緊張なんてしたひにゃあ、
マジすごい、
普段よりも、強烈 な「どもり」が炸裂する。
例えば、放送部、
アナウンサーだった私の担当は火曜日で、
朝から放課後まで、どもりっぱなし。
「ぜ、ぜぜぜ、ぜ全校の皆さん、おおっ、お、おはようございますっっ」みたいな。
クラスに戻ると、
「今日、放送、ミツエビチリちゃんだったね、すぐ分かるよ~っっ(笑)」って。
昼 の放送ともなると、もっと最悪。
とにかく、放送時間も長く、
「き、きょ、今日はババ、バトミントン部の皆さんに、お、お、お、お越しいただきました~っっ」みたいな。
自分の意思とは全く関係なく、
ヤツらはいつも、付きまとう。
それが 吃音。
思うように喋れない、話せない、伝えられない、
本当に悔しい。
朝、友達や近所のおばちゃんに、
「おはよう」と言えない。
本当に悔しい。
キャラ的に、人前では、明るくニコニコしていないといけなかったから、
誰にも相談出来なくて、
たまに母の前でワンワン泣いた。
思うように話せないコトが悔しくて。
さすがに年頃になると、
どもっているコトが恥ずかしく、
どうにか吃音を隠せないモノかと、
試行錯誤 を繰り返した。
そこで編み出した技が、
ルー大柴 。
吃音経験者なら分かると思うのですが、
なぜか吃音、
歌っている時には出ない。
多分、体に変に力が入らないからでしょう。
なので、力の入らない喋り方、
日本語と、英語と、そしてまるでミュージカルのように身振り手振りを大きく使い、歌っているかのような喋り方、
それが、ルー大柴のような喋り方だった。
この頃から、
「ミツエビチリちゃんの真似~っっ」と、
身振り手振りの物真似をされるようにはなったが、
吃音は私の中に、ひっそりと影を潜めるようになった。
友達と会えば 朝昼晩 問わず、
「ハ~イっっ」と
陽気に挨拶を交わし、
近所のおばちゃんなど大人の方々には、
にこやかな笑顔で、口パクで、
大きく会釈をする。
その頃から、おはよう、こんにちは、こんばんはという、挨拶は私の中で姿を消した。
身振り手振り表情 で、
相手に気持ちを伝えるという技は、
中学校で 演劇部 だった私には 武器となり、
中3の文化祭では、主役をゲットした。
しかし、
ここから大変、
演劇には、台本というモノがあり、
当然のコトながら、
自分でセリフを変えることなど出来ない。
今までガン無視していた
発しづらい言葉のオンパレード。
今までのように誤魔化しがきかない状況の中、
顔は平然としていても、
心の中は、大パニックだった。
でも誰にも言えなかった。
どうせ分かってもらえないし、
何より悔しい。
そこで私は考えた。
ルー を捨てた。
舞台の上で、
私は、吉永小百合 になったのだ。
発しづらいセリフは、
力を入れぬよう、物静かに。
確実に出るセリフは、
意気揚々と。
それでも、どうしても、どうしても、
発することが出来ないセリフは、
とんでもない間をあけたのち、
聞こえるか聞こえないかの声量でささやいた。
必要に迫られてやってのけた技だったが、
顧問も部員も 驚いた。
大女優 が誕生した。
非常に滑稽である。
真実は 私 しか知らないのだから。
それ以来、大きな舞台に立つことは無かったが、
今でも時々、その時のコトを夢に見る。
悪夢だ。
まぁ、悪夢は見るが、悔しさは無い。
その方が私はいい。
どんな形であれ、
伝えられる方が、悔しさが残らないからだ。
悔しいという感情は、
誰かに向けられるものではなく、
伝えることが出来ない自分自身に対して、
不甲斐なく、悔しいのだと思った。
今現在でも、言いづらい言葉は山ほどあるが、
相変わらず、身振り手振り表情を使い、
悔しくない毎日を送っている。
日々書くブログが、
フレンドリーで、チャラい感じなのも、
話す時の癖が、文章となって表れているのであろう。
そういう事にしておこう。
吃音のお陰で、私は多くのモノを得た。
今、息子は不登校である。
そんな息子が、
「不登校のお陰で多くのモノを得た。」と、
笑顔を浮かべながら誰かに話す日を、
私は楽しみにしている。
一般の方々にはなかなか理解しづらい
吃音の話、
最後までお付き合い頂き、
ありがとうございました
またね~っっ