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監督: ギリーズ・マッキノン 

ナチスによるロンドン空爆が激しさを増す第二次世界大戦中のスコットランドのトディー島。島民たちがこよなく愛するウイスキーの配給が止まってしまい、皆完全に無気力に陥っていた。島の郵便局長ジョセフ(グレゴール・フィッシャー)の2人の娘はそれぞれの恋人との結婚を望んでいたが、周囲から「ウイスキー無しじゃ結婚式はムリ!」と猛反対されていた…。 誰にとっても戦争は命の危機を招く最大の脅威のはず。だがトディー島民にとってそれ以上に重大な問題は、英国文化の代名詞である“命の水”ウイスキーの配給が止まり、底をついてしまったことだ。島全体が枯渇したような窮地に陥った時、目の前にウイスキーを積んだ船が流れ着き、なんと大量の積み荷を残したまま座礁。島民は神の恵みと感謝し、戦争よりもウイスキーの“救出”に命を賭ける。急いで船に向かおうとすると、日付が変わって安息日になってしまい、なかなか宝の山に手を出せない…。まるでジグソーパズルのピースが噛み合ったり噛み合わなかったり、先の読めない驚きの展開が島民たちを次々と襲う。愛する娘たちの幸せを願う郵便局長、気の弱い婚約者の男たち、お酒に目がない牧師、ムードメーカーのドクター、ちょっとマヌケな三人組など、個性豊かな島民たちはチカラを合わせてウイスキーを“救出”し、奇想天外な場所に“保管”する。そんな彼らの前に立ちはだかるワゲット大尉は、第一次世界大戦の時にはまだ幼く、第二次世界大戦に従軍するには歳を取りすぎていた…。ようやく民兵になった今、どうにかして自分の価値を証明しようと躍起になる姿が少し滑稽に描かれており、なぜか憎めない。沈没した船と共に消えたウイスキーの捜索にやって来る関税消費税庁と情報提供者のワゲット大尉。躍 起になって島中を調べる権力者たちに一泡吹かせる島民たちの様子には、権力に屈せず人生を謳歌する大切さを思い出させてくれる。 






オリジナル版の製作当時は法の制約がなかったため、有名メーカーの商品ラベルが映画に堂々と登場したが、現在の法律では酒造会社の商品を映すことは禁じられている。 そのため現存するブランド名は除外されている。リアリティを感じるウイスキーのブランド名とラベルを作るために企画段階で議論が重ねられた結果、沢山のケースやラベルには 実存する銘柄をもじった名前や、製作スタッフの名前、ロケ地名などが採用された。座礁したSSポリティシャン号には「ホワイトホース」「バランタイン」「デュワーズ」「アンティクァリー」「キングスランサム」「ジョニー・ウォーカー 赤ラベル」「ジョニー・ウォーカー 黒ラベル」等の、日本でも知名度の高い銘柄のウイスキーが積まれていたことが分かっている。

島の顔役で頑固おやじのジョセフ・マクルーンを演じた名優グレゴール・フィッシャーの味のある豊かな演技力は、素朴な島民の温かみを醸し出している。一方、人気コメディアンのエディ・イザードは、“権力の象徴”という憎まれ役なのにも関わらずどこかコミカルで人間味のあるワゲット大尉という難しい役柄を見事に演じ切っている。ナオミ・バトリックとエリー・ケンドリックが演じるマクルーン家の仲良し美人姉妹は、オリジナル版では郵便局の中で静かに過ごしていたが、本作(現代版)では大胆で行動的な女性として、本作に華やかな印象を与えている。姉妹の婚約者、オッド軍曹役とジョージに扮したショーン・ビガースタッフとマザコン息子役のケヴィン・ガスリーは、島民全員が出席する伝統的な結婚前の儀式「レイチェフ」の祝い酒として欠かせないウイスキー回収作戦に一翼を担い、見事にその務めを果たす。本作のキャストたちは自身のキャラクターを通 じてお酒について学び、最終的には “ウイスキーの味が分かる目利き”を自称するまでに至った。

本作では、安息日がブレーキのような機能を果たしている。ウイスキーの配給が止まりショックで寝込む者まで出ているとき、ちょうどウイスキーを積んだ船が沈み、島民たちは本来なら急いでボートに乗り込むところだ。しかし、安息日がきて全てがスローモーションになる。安息日には神の仕事(祈ること)以外はしてはならない。当時は神と人間の関係が現在とはずいぶん違って、神の日には働いてはならないことを人々は忠実に守っていた。日曜日には仕事も子供の遊びも禁止、エンジンもかけてはいけない、電話もかけられない、鳥が鳴くことさえ禁じられている。ウイスキー5万ケースを載せた今にも海底に沈みそうな貨物船を前に指をくわえて見ているだけの島民たちのもどかしさや“忍耐”が本作にさりげないユーモアを与えている。

スタッフは、SSポリティシャン号に乗船していた最後の生き残りである士官候補生、座礁した船を最初に目撃して島民に知らせた男性(当時は少年)に会い、リサーチを重ねた。島にウイスキーが配給されなくなったのは、ドイツ軍がイギリスの工業地帯を爆撃した際、多くの醸造所が破壊されてしまい、「膨大なウイスキーを敵の攻撃で失うのなら、いっそ国外に売り払って我が国の軍事費にしてしまおう!」と英国政府が決めたからだった。また、戦争という大混乱のなかでは、相手のことをよく知らぬまま結婚した者も大勢いたという。二度と故郷に戻れないかもしれない兵士には、愛する存在だけが生きる希望だったからだ。ワゲット大尉と共に民兵を訓練するためトディー島に配置されたオッド軍曹が、激戦地の北アフリカから無事に生還し、恋人ペギーと再会を果たせたのは、幸運と呼ぶ以上の奇跡だった。

コンプトン・マッケンジーの小説に登場するトディー島は架空の島名だが、本作の撮影はアウター・ヘブリディーズ諸島らしい特徴を備えた岩の多い離島の雰囲気を持つスコットランド内の場所で進められた。トディー島の村の外観を表現する場所として選ばれたのは、アバディーンシャー北岸のポートソイという村。17世紀に遡る家屋をはじめ古い建物が港を取り囲んでおり、岩がちな景観で崖も近く、船が座礁しているところを発見するシーンを撮影する場所として打って付けだった。主な舞台となる村のシーンをポートソイの古い港周辺で三週間にわたって撮影したため、ポートソイはさながら映画スタジオと化し、地元の人々が大勢エキストラとして参加。トディー島の男達がウイスキーを回収するために平底船で沖へ向かうシーンについては、地元のボートクラブがアイデアを出した。他にも、トム湖、ローモンド湖西岸のルス、ヘレンズバラ郊外の邸宅、セント・アバズの崖、セント・モナンズのファイフの漁村など、スコットランド各地でロケを敢行した。ウイスキーの回収を目前にしながら安息日を過ごすことになる教会は、875年に建てられたセント・モナンズの実際の教会で撮影した。レントンの「Central Bar」が島のパブとして使われた。ナショナル・トラスト・スコットランドが所有する見事な庭園で知られる18世紀の邸宅ゲイルストンハウスは、ワゲット大尉の家をはじめ、様々な室内シーンの場となった。トディー島へ本島から毎週郵便や食料を運んでくる定期船アイランド・クイーン号は、1938年に造られたチェーン駆動式のディーゼル・フェリーで、近年はスコットランド西岸沖のイルカ・ウォッチングで観光用に使われていたもの。関税消費税庁の小型船は、ある紳士が川遊びに行く目的で1929年に造られた50フィートのクルーザー、レディ・キリアーン号で、戦時中にはダンケルク沖から兵士を救出する際に使用された貴重な船である。
ラストのダンスが素晴らしい。