vol.9 強さと人気、そのあいだで
貴乃花は、
いつも注目されていました。
勝てば当たり前。
負ければ大騒ぎ。
横綱だから、
という一言で片づけられる毎日。
でも、
不思議と貴乃花は
“愛想のいい人気者”ではなかった。
笑顔でファンサービスをするわけでもなく、
言葉少なに、
どこか距離を保っていた。
それなのに、
目が離せなかった。
応援してしまう。
たぶんそれは、
貴乃花が
ごまかさなかったから。
自分を売らない。
迎合しない。
軽くならない。
その姿勢が、
見る人の心に
強く刺さった。
人気って、
好かれることだけじゃない。
「気になる」
「忘れられない」
それも、
立派な人気。
貴乃花は、
近づきやすくはなかったけど、
誰よりも
存在感があった。
そして、
その分だけ
孤独も大きかったと思う。
強さを求められ、
横綱像を押し付けられ、
それでも
自分を曲げなかった。
だからこそ、
熱狂的なファンが生まれた。
「この人を
ちゃんと見ていたい」
そんな気持ちに
させる横綱だった。
貴乃花の人気は、
にぎやかじゃない。
静かで、
深くて、
長く続くタイプ。
今もなお、
語られ続ける理由は、
そこにある気がします。
次は、
土俵を離れたあと、
親方・貴乃花としての姿に
触れていきたいな。