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大分走った。かなり遠くまで来た。

2人はゼエゼエ喘ぎながら、水筒に口を当てた。



「おい」



「何?龍葉姉」

「ぁ?何も言ってねぇぞ?」

「でも今声が...」

「おい、暑苦しいんだょ、早くタオルを剥がせ!!」

「ぇ、こいつ...喋ってる!?!?」

そう、2人に声をかけていたのは、誰であろう、赤子であった。

しっかりを2人を見据え、偉そうな口を叩く。

龍葉は、赤子が死んではならないと、急いでタオルを剥がした。


「ったく、鬱陶しいんだょ!!!」

赤子は、龍葉を突き飛ばし、地面に着地し、いとも簡単に二足歩行しだした。

「え!?なにこいつ...赤ちゃんじゃないよっっ!?」

さっきまで寝ていた赤ん坊だというのに。

うっすらしか生えていなかった髪の毛も、

今ではきちんと生えそろえっている。

「んで?俺の名前は??」

赤ん坊は、振り返って姉2人を睨みつけながら訊ねた。

「え....」

決めていなかった。

赤子を連れ出すことで必死だった。

「まさか決めてないとか言うんじゃないよな!?殺すぞ?」

顔は丸々とした赤子の癖に、恐ろしいことを口走っている。

「はっ....はは、決めてるっ、きめてるよ!!勿論。」

龍葉は、怯えながら口元を曳きつけて苦笑いをした。

「じゃ、何なんだよ。言え。」

「ぇっとぉ........」

龍葉は頭が悪かった。

戦闘時は本能で戦っていた。だが、漢字すらも覚えていないし、むしろ教えられていないので、分からなかった。

ただ、今見た赤ん坊の光景は、


『立っている』


唯それだけだった。

立つ...位の漢字は、龍葉でも知っている。

立つ...は、「リツ」という読み方をしたなぁ。

それで、あたし等は『龍葉』、『麗葉』と、『○葉』形式だから........


「立葉(リッハ)」

「はぁ?」

「御前の名前は立葉だ阿呆、呼ばれたら『はい』と返事をしろ。

姉に向かって何だ、その口の訊き方は。」

「そうよそうよ!!さっきから何でそんなに偉そうなのよ!!ていうか何で立てるし、喋れるの!?」

麗葉が核心を突いた。

「......(クスクス)訊きたいか??俺が凄い理由(ワケ)」

「訊きたいわよ!!!」

「俺は御前らと違って、特別なんだよ。俺は御前らが生まれる前からこの世に居た。

ただ、生まれてなかっただけだ。」

「は??何だよ、それ。意味不明だよ馬鹿!!」

「体外受精って知ってるか?」

「はぁ!?!?知らねぇよ。」

「テレビで見たことある」

麗葉は龍葉よりも賢い。

戦闘時も、いつも冷静に判断し、的確に相手を仕留められる。

「俺は、体外受精されたんだよ。んで、胎児の時から機械でいろいろな知識を脳に送り込まれた。

そして、骨も細胞も、大人のものと取り替えられた。

だから俺は、こんなに成長が早いし、いろいろな言葉も知ってる。」


――――――――どういうわけか、母親と父親の手に罹ってしまったらしい。