「転校生はモデル」












「今年の流行はマーメイドスカートか…。」 


真希がファッション誌を開いていた。


「真希さん、そのモデルは誰?」


乙骨の割り込みに真希が答える。


「バカ、そのくらいも知らないのかよ。今人気急上昇中のモデル、桜海はるかだ。」


「真希、憂太は男だから知らなくて当然じゃないか?」


「しゃけ。」


パンダと狗巻が更に割り込む。


ファッション誌に載っている人物は桜海はるか、17歳。


乙骨達と同じ学年だ。


青のトップスに白いマーメイドスカートを身にまとっている。


彼女は小柄ながらも笑顔を武器にしたように笑みを浮かべている。


その姿になぜか乙骨はこっそりと赤面した。





『ドン!!』


五条が飄々と戸を開けた。


「うわー!!」


「びっくりした!!


バカ目隠し!


静かに開けろよ!!」


「ごめんごめん!今日は大切なお知らせがあってね!


なんと、今日転校生が来てまーす!!」


「ツナマヨ?」


「そんなことは早く言え!!」


「じゃあ紹介するね!」


入ってきた少女に一斉が驚いた。


少女はあの桜海はるかに瓜二つの容姿をしていた。


この後更に驚くことになる。


「みなさん、はじめまして!


桜海はるか、17歳!


モデルやっています!!


みなさん、よろしくお願いします!!」


「えー!?」


二年生組は口を揃えて言った。


「っていうことでみんな!


モデルとしても活躍中の桜海はるかさんをよろしく!!」


二年生組は開いた口が塞がらない。


「早速だけどみんなには二手に分かれて行って貰うよ!!」


五条は単刀直入に行った。


「棘、真希、パンダは鹿羽根中学校、憂太とはるかはショッピングモールへ行ってね!!」


『えっ?』


乙骨は再び赤面した。


「よろしくね!乙骨くん!!」









「やっと着いたね!乙骨くん!」


「そうだね。」


乙骨は桜海に好意を寄せていると自覚していた。


しかし、中々言い辛かったり、リカのことを考えると申し訳なかった。


自分よりもうんと背が低い美少女が栗毛色の髪をなびかせる。


「じゃあ、行くよ!」


「うん!」


ショッピングモールとその外の間に帳という境界線が姿を現した。





『うわあ…。』


無人の本屋には桜海が表紙を飾ったファッション誌が並んでいた。


それが乙骨の気が散る原因を作っていた。


桜海は自分の載ったファッション誌を読み飽きているので見向きもしなかった。


「乙骨くん、あれ…。」


桜海はある物に気付き、乙骨に声をかけた。


巨大で真赤な口唇の呪霊が浮遊していた。


それは二人に威圧的な姿勢をとると、乙骨に襲いかかってきた。


「危ない!!」


桜海は自分の呪霊を出す。


それらは約10センチメートルの様々な色のハムスターで無数に現れた。


そして乙骨に襲いかかってきた呪霊を一気に噛む。


「痛いわね!何すんのよ!!」


「それはこっちの台詞よ!


乙骨くんから離れなさい!!」


「このクソネズミが!!」


敵の呪霊はハムスターの呪霊を振り払った。


いくつかのハムスターの呪霊は本棚に当たってすぐ消えた。


「桜海さん、次は僕がやるよ!!」


乙骨は敵の呪霊から逃げ、剣を素早く抜く。


「ええい!二人いるのか!?卑怯者!!」


「街を襲っている呪霊なんかに言われたくないわ!!」


    



「来い!!リカ!!」


乙骨はリカを呼んだ。


「リカ、憂太に近付く桜海はるか嫌いー!!」


「えっ?」


桜海がリカに襲われそうになったところで乙骨は咎めた。


「リカ!!桜海さんを襲うな!!


あの呪霊を襲え!!」


乙骨は敵の呪霊を指す。


いきなり怒鳴られたリカは驚いたが乙骨の言う事を聞いた。


「分かったー!


リカ、憂太の言う通りにするー!!」


そしてリカは敵の呪霊に噛みついた。


「痛ー!!


何すんのよこの女ガキ!!」


敵の呪霊は一気にリカに侵食された。


「リカ、赤好きー!!」


そこはまるで今まで敵の呪霊がいたという形跡はない様子だった。


辺りは赤い血に染まっていた。


「やったね!乙骨くん!!」


「うん!」








あれから三日後、乙骨と桜海は完全に戦いの怪我が治った。


放課後、茜色に染まる教室で乙骨と桜海は談話していた。


「ところで、あのハムスターの呪霊は?」


「私が昔飼ってたハムスターだよ!


呪霊として私の周りにいてくれるの!


リカって?」


「僕の幼馴染の婚約者だよ!


あの時はリカが乱暴してごめんね!


えっと…。」


乙骨は赤面して言った。


「モデルしてるなんて凄いね!


僕と友達になってくれませんか!?」


桜海は顔を輝かせた。


「何言ってるの?


私達はもう友達だよ!!」







fin.