初めまして。ピンクダークといいます。

ここではその日のうちに思いついた話をただただ書いてきました。

一応2000文字程度で、オチが付くように意識して書いています。

特に高尚な目標なんか掲げず書いていますのでサボることも多いかと思います。

というか自己満足です。オナニーみたいなものです。

高校生ではないので毎日は出来ません。そんなものです。

(とはいえ、1日複数回載せることもあるかもしれません。オナニーみたいなもんなんで)

 

今回はエッセイ風に書いていますが、特にオチもないので最後まで読まなくても大丈夫です。

ネットフリックスの方が1万倍面白いのでそちらをご覧ください。

時間は有限です。

 

さて、初回ですから自己紹介をした方がいいのでしょうが、これだけ言わせてください。

 

題名はオマージュです。

いえ、パクりました。

 

天下の鬼滅の刃から。

単行本(コミックス)を読んだこと無い方のために説明しますと、この題名の元ネタ「大正コソコソ話」はマンガの話と話の間に挟む真っ白なページに作者の遊び心で掲示される部分があり、多くはキャラクターや小道具や技の説明などが多いですが、鬼滅の刃の作者、吾峠呼世晴先生はキャラクターや設定の小話やより踏み込んだエピソードを載せているおまけページの事です。

 

貰えるものはもらいましょう。

使えるものは使いましょう。

 

勘のいい方は気づいているかもしれませんが、ペンネームのピンクダークも

ジョジョの奇妙な冒険から取っています。

詳しく知りたい方はググってください。

文明の利器も使えるだけ使いましょう。

 

さて、自己紹介ですが

ピンクダーク

27歳。

出身は大阪府吹田市です。(すいたしと読みます。)

趣味は読書。節々に出ておりますが、週刊少年ジャンプが大好きです。

あと好きなのはポケモンですね。

なぜか初めて買ってもらったポケモンは金銀両方でした。

妹はいますが、やらないので一人でどうやって二つのカセットで遊べばいいんだ?となった記憶があります。

 

読書は元々嫌いでした。

子供の頃に好きだった本と言われても1冊も思い出せません。

しかし、ディズニーランドやUSJの写真付きガイドは貪るように読んでいました。

エンタメと写真からの妄想は好きだったのかもしれません。

学生時代初めて買った漫画は「金色のガッシュ」←まさかのジャンプじゃなくサンデー

マンガやアニメは比較的よく見ていました。

特に進学校に進んだ高校時代は夜遅く帰ってくるので夕飯を食べながら毎日アニメを見ていました、。(サブスクなんて無いので、アニメ専門チャンネルでドラゴンボールと銀魂は毎日1話ずつ録画して全話見ました。他にもたくさん見ました。)

 

読書にハマったのは大学時代からです。

というか、大学受験で漢字をめちゃくちゃ覚えたのでそれで文章を読むのが楽になりました。

読書が嫌いな人は分からない漢字や分からない慣用句が出てきて止まってしまうからではないでしょうか?

(今は電子書籍のおかげで分からない語句はなぞれば辞書が出てきてすぐに教えてくれます。最高!)

 

大学の行き返りや講義中にかなり読みました。

ミステリやビジネス書が好きです。

なんとか近畿大学を卒業できましたが、高校に入るまでは本当に勉強してこなかったので、知らないことを教えてくれる学術書やビジネス書は最高です。

最初にハマったのはビブリア古書堂の事件手帳だったと思います。

人が死ななくてもミステリって呼べるんだ。文豪たちやその本自体にもそんな歴史があったんだ。それを取り巻く登場人物たちの人間の嫌な部分もリアルに味わえるのにキャラクター色もあるので読みやすくおすすめです。

 

最近は去年年明けにiPhoneを変えてからkindleで本を読んでいます。

今は9割電子書籍1割紙の割合です。

(1割というか積読をいまだに消費しきれていないだけですが。)

 

電子書籍は場所も取らないし、セールで半額とかで買えるので慣れれば最高です。

何冊も持ち歩かず、気分で何冊も同時に読めちゃいます。

ビジネス書って年数経つと合わなくなるので(最近で言うとコロナ前後)何年たっても価格が一緒というのは本来おかしいのですが、それを解消してくれましたね。

単行本でも安くなるし、気になっていた本は安いととりあえず買っちゃいます。

 

読みたい本がありすぎるので時間が足りなすぎるのですが、ちょくちょくこちらも更新していくので応援お願いいたします。

 

ほんとにオチはありませんでした。

 

(これからは短編かエッセイか分かりやすいように題名の後ろに入れます。)

あるところに有田と桐霧という二人の青年がいました。

彼らは二人とも大学を卒業し、社会に出て働く立派な社会人になっていました。

有田と桐霧は、小さいころからの知り合いで背格好や生まれた時代環境などは似ているものの、かなり違った性格をしていました。

 有田の方はどちらかというと真面目で、勤勉な性格で、初志貫徹・品行方正という四字熟語が似合いました。彼には兄弟がたくさんいて、決して貧乏な家庭ではなかったものの、分け合い・助け合いの精神で小さい兄弟(妹)たちのために自分を犠牲にしてまで守ってきました。

 一方桐霧は、どちらかというと自由人で欲望のままに行動し、悪く言えばわがままでもありました。四字熟語で言えば天真爛漫・悠々自適といった性格でした。

 

 有田は勉強が出来て、周りから頼りにされていたため一流大学を優秀な成績で修め、彼の第一志望であった一流外資系企業の商社に入社し、バリバリに働いていました。もちろん給料は良く、高級なスーツに身を包みながらもプライベートは慎ましく、割と質素な生活を送っていました。大学の学費を奨学金を借りて通っていたため、その返済にも充てていました。実家が困窮していたわけではないのですが、自分の学費は自分で払い、実家にも仕送りをしていました。

そんな彼のもとに古くからの友人の桐霧から連絡がありました。

次の華金に久しぶりに飲もうとのLINEでした。

今まで金の無心をされた事はないが、最近は借金を作っていると聞くし、あまり気乗りはしなかったが久しぶりに会うし、指定された居酒屋がそんなに遠い距離でもなかったので何とか行くことにした。

 

「いらっしゃいませ~!何名様ですか!?」

威勢のいい掛け声とともにアットホームな雰囲気を感じられる居酒屋だった。

「久しぶり~!遅えよー。もう一人で始めちゃってるぞ。」

「久しぶり!ごめんごめん、長引いちゃって…」

業務が長引き有田は30分遅刻していた。事前に連絡は入れていたものの改めて詫びを入れる。

「何飲む?ビール?」

「そうだな」

そうやってビールを注文し終わった後、桐霧の手元を見てみると見たことない飲み物を飲んでいた。どうやらジンで何かを割った最近流行っている飲み物らしい。

 

ビールが来て乾杯をした後、料理を数品頼みお互いの近況を軽く報告しあった。

ビールも8割が無くなったところで桐霧が訪ねてきた

「そういえば有田は仕事柄海外とか行ったりしないの?」

「あー。研修の時は東南アジアを何か所か行ったけど最近は国内ばっかりだな。そうゆう部署もあるけどオレは国内の方が落ち着くというか」

「そうなんだ、オレは学生の時にシンガポールに行ったけど、向こうの友達ってずっとサーフィンやマリンスポーツしているから羨ましいぜ」

そう言って彼は胸にデカデカとシンガポールのユニバーサルスタジオのロゴが入ったパーカーを着て、下はスウェット姿で手を叩きながら大笑いしていた。

どうやらその友達から送ってもらったパーカーらしいが、平日は高級スーツ、休日はジャーナルスタンダードかビームスの有田には全く興味が湧かない話だった。

 

「そういえば、桐霧は今どんな仕事をしているの?」

「あー、そうそう。今日お前に会いたかったのにも関係してるんだけど、オレ今ブログで収入得てるんだけど、次に行く海外や面白そうなもののネタを探してて、海外に強そうなお前になんか流行ってるものや遊びがないか聞きたかったんだよ。」

実際に収入を聞いてみたが、有田の給料の半分にも満たない額で、たまにアルバイトをしているらしい。海外とのやり取りも多い有田だが、実際の海外の情報を掴みに行っているわけではなく、人づてに聞いた情報を教えてやった。英語は得意だが、そもそもそんなに海外が好きではなく、日本の歴史が大好きなのだ。

 

その日はそれ以外他愛もない話をして2時間ほどたったところで解散した。

 

その後、共通の友人の蜂谷から聞いた話によると、桐霧は借金をしつつ海外を飛び回り、モノや人などをブログで紹介し、それ以外はYouTubeやTwitterにハマって定職についていないらしい。

 

正直、有田は桐霧の事をあの飲み会から軽蔑していた。

借金しながら遊び惚けるなんて有田の感覚からすれば考えられなかった。

少しでも自分の人脈を利用しようとして接触してきた朝霧の軽すぎる行動にプライドが傷つけられ、少し怒りを覚えてさえもいた。

 

そんな中、世界は謎の殺人ウイルスが蔓延したことによって行動自粛、自宅待機を余儀なくされ全てが止ってしまった。

有田も桐霧も海外と密接に関わりビジネスをしていたしていた為、大ダメージを受けた。

有田は海外からの輸入が大幅に縮小されたことにより、会社の利益が大幅減。人員整理によりよくも悪くも実力社会の外資系企業では即戦力の無い若手は切り捨てられた。

有田は職を失ってしまった。ある程度のアビリティは平均的にある有田だが、なにか光るものが見当たらず再就職に苦しんでいる。

 

一方、桐霧も海外のネタや仕事は一切なくなったが、ずっと好きで見ていたYouTubeでコツを見つけ海外の情報や海外の友達とインターネットを介して会話したり、一緒にゲーム実況をやったりして閲覧数を稼いで、金も稼いでいる。一部からはカリスマ的存在になり、プロデュースした海外アクセサリーがヒットし小金持ちになった。

 

有田と桐霧

めでたしめでたし

これは私が勤める葬儀屋の話です。

 

といっても、ホラーじゃないのでご安心ください。

私どもが運営しておりますのは、人間の葬儀ではなくペット供養なのです。

長年連れ添ったワンちゃん、猫ちゃんの最後のお別れの場に選んでいただけるところです。

私が子供の頃に実家で飼っていた愛犬の雑種のチロなんて適当に焼かれたのだと思います。

まだ小さいときだったので、亡くなったとは何となく認識していたものの、その後親がどうしたのかは分かりません。

いま私は都心から少し離れた町で一人暮らしをしています。30代中ごろの女一人生活は寂しいことも多いのでワンちゃんを飼おうか悩んだこともありますが、仕事柄亡骸を見ることが多いのでやめちゃいました。

 

このペット葬儀屋ではワンちゃん、猫ちゃん、ハムスター、爬虫類など人気のペットを火葬して、オリジナルの骨壺に入れたり、思い出の写真をアルバムにしたり、データ化したり、小さなお葬式を上げることも出来るサービスを提供しています。

 

表向きは。

 

私が勤めるこのペット葬儀屋、ちょっと変部分もあるのです。

 

それは…

 

一般的でないペットの葬儀も請け負っている事。

 

とは言え全部OKというわけでもなく

一応、”生き物”の亡骸をお預かりするという明確なルールはある。

(こんなこと言うが、世の中には生まれた時から一緒にいた原型を留めていないボロボロのぬいぐるみとのお別れや、幽霊、子供の時に拾ったねじとの最期を相談しにくる大人が結構いるのだ)

 

「あのーっ」

「はい!いらっしゃいませ!え?」

私は遠慮がちに入ってきたおばあさんが抱える大きなクーラーボックスに目が行った。

 

「あのー、どうされましたか?」

おばあさんがまわりをきょろきょろしながら、安心を確認すると

「この子を焼いて欲しいんだけど」

とすごく小さな声で発した。

「えーっと、はい。確認…させて、頂きますね…。」

人間の子供でも入りそうなクーラーボックスに恐怖を覚えながら、ゆっくり蓋を開けるとそこには

 

マンボウ

 

うーっ、マンボウ!

 

え?マンボウ?

 

よくこのクーラーボックスに入ったな。

というか、おばあさんはどうやってこの重たいクーラーボックスを持ってきたんだ。

いろいろな疑問が浮かんだが、この手のものは入手経路や飼育方法、思い出などを聞き出すのはタブーなのである。もちろん、お客様自信が語り出したり、犬猫の場合でのオプション商品のための思い出の日のヒアリングは重要だ。

ただし、このアブノーマルなペットの場合は知らぬが仏の場合が多い。別に我々は警察でもなければ、環境省でも、外来種ハンターでもない。

おばあさんは大きめの¥50,000の骨壺を購入した。

 

マンボウとのお別れ時、私はマンボウをじっと見ていた。

マンボウといえば一度に大量の卵を産むが、そのほとんどが大人になれず、生存率は0.1%とも聞くが、そのとてつもない生存競争を生き抜いた大人のマンボウが作業台の上にいる。死んでるけど。

目だった外傷はなので老衰での寿命だとは思うが。

 

そのあとマンボウは高温で焼かれた。

 

少しいい匂いがした。

 

 

そうだ、言い忘れたが、うちは変わり種のペットの場合は葬儀代としては取らない。対象が対象なのでどんな犯罪が絡んでいるか分からない。一応、法律上は人間以外の生き物は物として扱われるので適切な処理をすれば荼毘に付すこと自体は問題ない。

しかし、リスクではあるのでその骨を収める骨壺屋として商売をしている。もちろんお客様もそれは承知なので、骨壺のみで考えると法外な料金であってもご購入いただける。

一番困るのが昆虫だ。亡骸が残らない。

なので甲虫類は弱火で焼く。しかし体積も小さいので小さいわりに豪華な骨壺やペンダントケースとして売るのだ。

 

一番イライラしたのはアリを持ち込まれた時だった。何が残るんだ。アリ塚ごと燃やして土を骨壺に詰めてやろうかと思ったが丁寧にお断りした。

 

今日もここでは色んな色んな生き物たちに出会い、すべてが土に還るのだ。

オレがこの家にやってきて2年が経つ。

生まれは金魚の町といわれる田舎だが、それがどこにあるのか分からない。

物心ついた時からまわりは兄弟だらけだった。

右を見ても、左を見ても赤・赤・赤。

どこを泳いでも赤しか目に入ってこなかった。

たまーに全身が真っ黒の奴にも出会うけど、あいつら不要なヒラヒラを大量につけているせいで、泳ぐのがすごく遅ぇ。なのにファサファサいわせながら大げさに泳いでやがる。

あと、黒いのはもれなく全員目が飛び出ててキモイ。

 

ある日オレはスイスイー。暇だなー。と泳いでいたら突然天地がひっくり返って透明の膜の中に他の兄弟たちと一緒に入れられてしまった。その後は微妙な振動を感じつつ。数時間が経った後、夜なのにまぶしいという変な空間の上に放り投げられた。そこではニンゲンにジロジロ見られながら白い壁が迫ってくる。ベッドのようにして寝る兄弟もたくさんいたがオレには気持ち悪すぎたので逃げまくった。後から気づいたんだけど、知り合いが減っていってたなぁ。

 

その後、オレは他の4匹の兄弟たちと今度はもっと狭い透明の膜の中に入れられて、この家にやってきた。最初は楽しくて、岩の影や砂利の中を色々見て回ったなぁ。そういえば、次の日の朝、他の2匹の兄弟がひっくりかえって浮いていたけど何してたんだろうな。

 

オレのご主人のユウタが近寄ってきた。

ユウタが毎日食事を与えてくれるように、ユウタが近くに来たときは水面に近寄って、口を高速で動かかす。

「うおーっ。きんぎょがしゃべってるぅー。」

と言いながらうまい球を放り込んでくれるが、喋るわけねぇだろ。金魚だぞ。

 

オレがこれだけ喋れるようになった理由だが、この家に来て1年たった頃、他の兄弟たちが全員死んでオレ一人になった。やることもなくてただ底の砂利を漁っていたら、言葉が聞こえてきた。いや、元々聞こえていたんだが、注目していなかっただけでオレのこの住処からは丁度テレビが見えた。

朝はユウタの父親がニュースを見ているし、その後はユウタがアニメを見ている。その後は、母親がワイドショーを見ているし、夕方から夜にかけてはその順番が逆になるだけで、ほぼ半日ついている。その他にも、ラジオの声も聞こえるし、パソコンの画面だってここから見える。スマホだって見えるから、母親が不倫していることだって知っている。オレはこの住処から見える情報発信源からすべて学んできた。

 

オレが生まれたのは、奈良県大和郡山市ってところだし、オレが好き好んで食べているのはフィッシュミールと赤虫。どうやらここは日本という国で人口減少によって先が長くないらしい。今までのトップだったアメリカという国も中国という国に抜かれるかもしれない。しかし、社会主義国の中国には事実上の一党独裁であり、格差も拡大している。未来には日本よりも高齢化が進むという不安要素もある。はたまた各国が地球温暖化という時限爆弾を抱えていながら、covid-19というウイルスが世界を覆い死者を多く出しているし外出自粛によって、経済が低迷し、困窮者や自殺者まで増加している。一体どうすればいいのか、人生100年時代と言われるが、100年近く生き続けることが果たして本当に幸せなのか。生き地獄だけは味わいたくない。とわ言え、ここ70年ほどは紛争はあれど、大きな戦争も起こっていない。むやみやたらに命を奪われることもなく、自衛出来るのだ。だからそんなに悲観しなくたっていいじゃないか!オレたちは…

 

うわー。ユウタ―!餌くれーっ!

パクパク。

 

そうだ、オレ、金魚だった。

でも最近頭が重くなって、目が飛び出てきた気がする。

篠田裕也。28歳。

今日は仕事で大きなプロジェクトを成功させたこともあり、1人で小洒落たバーに来ている。

こんな時くらい飲ませてくれ。と自分を気持ちで抱擁しながらキラキラ輝く黄金の液体をノドへと流し込む。

自己肯定感とクリアな苦みが効いたアルコールで頭が飛びそうになる。

今日は気持ちよく眠れそうだ。帰ったらシャワーを浴びて、着替えて、髪も乾かさずに速攻布団にに飛び込もう。と、2時間ほど後の幸せ汁を少しだけ吸って顔の筋肉を緩ませているとカウンターに黒のドレスを着た美しい女性が座っているのが目に飛び込んできた。

よく見るとナッツをあてに名前の分からない綺麗なブルーのカクテルを飲んでいる。

 

今日得た小さな成功体験と酔いも手伝って、脳内の2時間後の予定を変更しようと、すくっと立ち上がった。大きな性交体験を手に入れるために。

 

「お姉さん、お一人ですか?2杯目はビールかワインかどっちにしますか?奢りますよ」

という完璧なダブルバインド戦法で果敢に挑んだ。

 

「…。」

 

返答がない。

 

「どっちが好きですか?それとも甘いのにしますか?」

 

「…。」

 

援護射撃もむなしく完全に無視されている。

 

「僕はビールを飲みますがあなた…」

「ねぇ、この国で一番高い山って知ってる?」

 

え。

予想外の回答に面喰いながらも、何とか隣の席に滑り込みながらビールを二つ注文した。

これは…。ボケるべきなのか?

 

「えーっと。国が抱える借金の山かな…」

 

残念!失敗!

ボケのセンスも失敗だが、ひよった事によって声のトーンが低く、弱弱しい言い方になってしまった。

ボケるなら自信満々で言い切るようにボケなければ!

顔面から火が出たせいで彼女を直視することが出来ない。

 

「ふーん。」

興味の無さそうな回答が返ってきたので、こちらを向いてないものだと思い彼女に視線を戻すとじっーとこちらを見つめているではないか。

眉はきりっとしてるが目は少したれ気味、結ばれた口は分厚くアヒル口になっており、顎がシャープなため女性的な線の細い美しさを感じられる。

しかし、それらを払拭するような開かれた胸元にどうしても目線が行く。

Eはあるであろうか。その殺人的な細見に不釣り合いな巨乳からは見えてはいけないであろう赤のレースが少しだけ顔を覗かせている。ドレスに見えた服は黒のワンピースだった。

 

「私、キタダケが好きなの。」

そう言いながら僕が頼んだビールの片方を手に取り半分ほど一気に飲み込んだ。グラスには赤いルージュがついている。

 

「キタダケ?キノコかなんか?」

「山だよ。ノースの北に山岳の岳で北岳。日本で二番目に高い山。」

「山か、北岳なんか初めて聞いた。天保山しか知らないや。」

大阪出身の裕也は大阪なら誰もが行った事があるであろう、都会のオアシス海遊館がある、日本一低い山と称される天保山の名前を挙げてジャブを打ってみた。確かに派手な外観の海遊館と商業施設、謎の観覧車以外に山なんて見えない。

 

「日本で一番低い山の事を言いたいんだろうけど、残念ながらそれも2番目。一番低い山は仙台にある日和山って山よ。関東大震災の津波で無くなっちゃったんだけど、もう一度計ってみたら元々6メートルが3メートルに削られたのよ。天保山が4.5メートルだから現状では2番目なの。日本で起きた一番大きな地震が日本で一番小さな山を創り出したのだから皮肉よね。」

「そうなんだ!ちなみに天保山には世界で一番大きな魚、ジンベイザメがいるよね。子供の時よく見に行ったなぁー。」

話が彼女ペースになってきたので自分のテリトリーに戻しつつ、幼少期から話を広げていこうと思い話題をシフトさせた。

 

「そうね。ちなみに世界で2番目に大きい魚はウバザメよ。口が大きく、開いたときは自分の体高より…」

 

この女とにかく2番目が好きすぎるのだ。

後で名前を聞いたが、「亜衣」だと言っていた。

亜種などに使われる亜もなんだか二番目っぽいし。

五十音の1番目と2番目だけで完結している。

 

「ビール美味しいね!2番目に売れているキリンビール。久しぶりに飲んだなぁー。君、面白いから2件目行こうよ!」

 

美人がテンション上がって2件目に誘ってきてくれているが、僕は二の足を踏んだ。

どうやら、旦那の匂いがするのだ。

美人でセクシーで知的だが、とんでもない爆弾を抱えている。天は二物を与えないのだ。

欲と二人連れとはいかない。

彼女のセカンドにはなりたくない。

もう二の舞は演じたくないのだ。

 

「明日早いし、もう帰るよ。」

寝る前に少し後悔したが、武士に、いや男に二言は無いのである。

「あぁ、武田さんかね。最近は見とらんのぉ」

若い警官が武田という男を探して河川敷にいるホームレス達に聞き込みをして周っていたが目ぼしい情報は掴めていなかった。

というのも、ここ数日、河川敷の芝生に何か所か半径2メートル台の焼け焦げた跡が円のような形になって残っていたのである。目撃者によればその事件に関わっているのが武田というホームレスらしいのだが、ホームレス仲間を聞きまわっても中々、その武田という男は一人を愛しているらしく、他者と繋がりを持たない男なのであった。

 

橋の下。この川は都会とベットタウンを分ける大きな川なのだ。

その中でも一番大きな橋の下は雨風もよくしのげるので、多くのホームレス達に人気なのだが、オレはあまり人と関わりたくないのでもっと上流にある、一番大きな橋から3つ上流に進んだ赤茶けた金龍橋の下に住んでいる。名前の由来は、どこにも書いていないので不明だが、元々金に塗られていたのか、その面影もなく古びて赤茶色に染まっている。オレはその見た目通り金龍橋を銅龍橋と呼んでいるが、他のホームレスやランニングしているような待ちゆく人とは、なるべく関わらないようにしているのでその呼び名も全く浸透しておらず、自分しか使っていないのだと思う。

元々オレは仕事一筋のバリバリのサラリーマンだった。所謂、高給取りで、この橋からも小さく見えるあの摩天楼の一角を自社ビルに持つ一流企業に勤めていた。

キレイな嫁さんと、二人の子宝にも恵まれて順風満帆の生活をしていた。

そんなオレがなぜこの橋の下に流れ着いたかって?

いや、実際に川の水流に流されてたどり着いたわけではないんだが、ある大きな力を手にしちまった為にいまここにいる。

オレの素敵な寝床にも巣くっているが、(人の寝床に自分の寝床をこしらえるとはどいう気でいるのか全く理解できない。今どきの飼い猫でも飼い主のベットではなく、自分専用の寝床で寝ているだろうに。)あの蜘蛛をモチーフにした20年前ぐらいの赤と青の奇妙なコスチュームを纏った男も言っていたが、大いなる力には大いなる責任がなんちゃらというやつだ。

アレに初めて会ったのは、営業周りの帰りにこの金龍橋を車で渡り会社に戻ろうとしていた時だ、夕焼け空が一部だんだんと紫色に変わり、何か巨大なもやっとした長いものがうねうねと蠢いて下流にある大きな橋へと向かっていった。

不思議な光景だなと便や理と眺めていると、そのもやっとしたものが大きな橋にぶつかっていったように見えた。

前の車が動き出したので、アクセルを踏むと小さな電気が走り、ハンドルを握る手に大きな痛みが走った。ハンドルからは薄く煙が上がっていたので驚いて自分の手のひらを確認したが何とも無い。

「ブッブーッ!」

と後ろのハイヤーからクラクションを鳴らされたので慌てて発進させた。

後で聞いたことだが、あの後大きな玉突き事故がもやっとしたものがぶつかった個所で起きたらしく、車が2台炎上、死者5名。隣を走る電車は朝になるまで動かなかったらしい。

 

そんでもってオレはその頃から体調を崩すことが多くなり会社を休みがちになり、評価はがた落ち。

仕事の質も悪くなり、給料も安くなっていた。オレのステータスと結婚したような嫁さんとの仲も悪くなり、藁にも縋る想いで飛び込んだ占い師には龍に食われて間もなく死ぬと、一応お金をもらうプロなら言わないであろうデタラメな診断までされた。(結局お金は払わされたが。)

話は飛ぶが、オレは龍と戦っている。

ああ、理解してもらわなくて大丈夫だ。

100人が聞いたら100人が鼻で笑うのだろうから。

幸い、まだ占い師の診断にあったように龍に食われて命を落としてはいないが、今まで築きあげてきたものをすべて失ったという意味ではある意味食われて亡くなったのかもしれない。

ちなみに芝生が焼け焦げた跡は龍の体液だ。オレのパンチによって吐き出された血や唾液だ。

毎回オレがこの街を災いから守ってる。

しかし、現実のヒーローなんてこんなもんさ。

どんだけ熱弁したって、人事部担当も、嫁さんも、警察も近くに住むホームレスでさえも龍?みたいな顔をして、認知症が始まった初老のホームレスというラベルを貼るだけ。

ヒーローとは傲慢で、偽善者かもしれない。ノーリターンの偽善者。

ただの使命感で動いてる。

オレか龍か、どちらかが死ぬまで戦い続ける。

これがオレの生業だから。

「あれは、大根だよな。」

降りしきる雨のせいでどんよりした雲の下、傘を差しながら何となく下を見ながら歩いていたら

都会のど真ん中のアスファルトからにゅきっとはみ出して生えている大根が目に飛び込んできた。

その時は何となく「こんなところにも大根って生えるんだな」程度にしか思っていなかったが、まさかあんなことになるなんて。

 

週末になり土曜日朝、珍しくいつもの平日と同じ7時に目が覚めた修平は、とりあえずテレビを点けいつも出勤前に見ている朝の情報番組のチャンネルに合わせた。

いわゆるその”朝の情報番組の土曜日版”がやっていたがそこにはお気に入りのいつもの女子アナではなく、その後輩であろうか、まだ若く、色気もなく、美人度でも平日の女子アナの劣化版とでも言おうか、とにかくそれほどタイプじゃない顔と、その横には見慣れないおじさんと二人三脚で、しかし、平日ほどの緊張感もない感じでお送りされていたので、聞き手側としても流し見スタンスの話半分でスマホを見ながら耳と想像で”見ていた”。

「今週のホットにゅーーーーーすです!」

というこれまたあざとさも劣化版のアナウンサーの掛け声によって始まったコーナーに俺が丁度3日前に気になっていたあの路傍の大根が取り上げられていた。

海外のエロコスプレイヤーの写真を漁っていたスマホから目を離し、そのコーナーに暫しくぎ付けになっていると、どうやらこの1週間でその大根は仰々しく「ど根性大根」というお名前まで頂戴してネット上でも小バズリしていたらしい。

自分の通勤途中の見慣れた景色がテレビに映っているのが少し嬉しくミーハー心を丸出しにしていたが、少し気になる点があった。

それはそのど根性大根の成長スピードだ。

修平が水曜日の朝方に見た大根は地面から白い”根”の部分が少し見えている、だいたい2㎝程見えてその上は緑の茎や葉っぱが伸びている程度だったのに、今テレビに映っている大根は生えている場所は同じであれど白い根の部分が4、5倍。つまり10㎝前後ぐらい見えているように画面には映っている。

大根の成長速度ってそんなに早いのかな?と、都会育ちの当てにもならない頭の辞書を引っ張り出してきても、ベストアンサーには出会えなかった。

この映像が生放送ではないので金曜日の昼間に撮られたと仮定しても自分が見た時から3日程度だ。

いくらなんでも早すぎる気がしたが、その次のコーナーのお天気お姉さんが30代の長身、巨乳のドストライクだったので、修平の中の大根と疑念はその段階ですっかり刈り取られてしまった。

 

月曜日、また雨だった。普段なら忙しい月曜の朝ならば気に掛けることもなかっただろうが、朝の情報番組のお気に入りの平日の女子アナがインフルエンザで休みになり土曜日の劣化版が代打を務めていたので、早々に画面を消し、いつもより早めに家を出て大根を見に行くことにした。

しかし、はじめ場所が分からなかったほど、そこに生えているはずの大根がなかった。

誰かが引っこ抜いてしまったのだろうか?

イギリスのアーティストが壁面に落書きをし、それが有名な者の作品と分かれば壁ごと削り取ってオークションに出してしまうような、そんな有名税をあの大根は払わされてしまったのだろうか?

しばらくその大根があったであろう場所を眺めていると

 

「こんな過酷な環境でにょきにょき生えるなんて、ど根性なんて呼ぶけど、大根の住処を奪ってアスファルトを敷いたのは人間なのにねぇ。」

 

と突然後ろから老婆の声が聞こえてきた。

 

慌てて振り返ると白いワンピースを着てビニール傘を差し、高齢者用の荷車を押しながら少しずつ迫ってくる老婆がいた。

しかし後ろから光が差し込むせいで顔が見えないなと思っていると、突然後光の光の強さが大きくなり、俺はタクシーに激突されて吹き飛ばされてしまった。

 

動かない体を何とか無理やり首だけ動かして確認したが老婆はどこにもいなかった。

一層強くなる雨に包まれ俺は目を閉じてしまった。

 

 

翌日、病院のベットの上で目を覚まし、首が固定されている為そのまま目に飛び込んできたのだが、朝の情報番組の昨日の代打の劣化版の訃報が報じられていた。