January 2013

天地明察(上) (角川文庫)/角川書店(角川グループパブリッシング)
¥580
Amazon.co.jp

岡田准一主演の映画で名前を知った。原作があるとは知らなかったけど、父や会社の人が原作がおもしろいと言っていた。で、会社の人に借りて読んだ。

時代物なので読みにくいかと思いきや、文章ひとつひとつが短くて簡潔で、すごい読みやすい。さくさく進んだ。それがちょっと単調に感じるところもあったけど、変に技巧的でないのはいいのかも。

数学というものはなんとなく西洋から入ってきたものと思っていたけど、日本は日本で独自に研究していた人たちがいたんだなぁというのを知ってうれしくなった。もちろん、歴史に基づくフィクションなので鵜のみにしてはいけないけど、でも日本人も解析的に考える素地は十分持ってたんだな。

西洋の数学って哲学家や思想家から発展してきた気がするけど、日本の場合は碁家や神道家が数学に近いところにいたのかもしれない。
発展の仕方はちがっても、でもやっぱり同じ答えに行きつくのが数学って素晴らしい。

代数を考え出した人ってエライ。心底そう思う。今は当たり前すぎてそのありがたみを忘れてた。
三平方の定理の証明とか、すごいシンプルだけど証明するのはちょっと難しい気がする。
そういう一つ一つの数学の真理が本当に美しくってキラキラしている。

ネガティブポイントを挙げるとすると、もう少し人間のドロドロしたところとか強くて深い感情表現があってもいいように思った。登場人物みんながさらっとかっこよく書いてあるので、そこが読みやすいんだけど、そこまで共感しないし、そこまで強烈なインパクトもないかなぁと。

あとは主人公の神道の免許皆伝とかは余分かな、と思った。暦と神道は切っても切れない関係とは思うけど、そこに一石を投じた人物なんだから、神道とは距離を置いてもよかったのになぁ。
でも史実としてはきっと神道も影響してたんだろうね。そういう時代だもんね。

あと終わり方もイマイチかなー。無理に死ぬまで引っ張る必要なかったんちゃうかなぁ。

と、記録用に思い起こしてたらなんとなくマイナス評価になってきちゃっけど、でも読んでいておもしろくってすぐに読み切れてしまういい小説でございました。何よりタイトルがよい!

ちなみにこの作者の名前は「うぶかた とう」と読む。すぐ忘れそうだから書いとこ、読めないもんなー。