March 2009



去年行った屋久島でお世話になったガイドさんが、ライアル・ワトソンが好きだと言っていた。また今年も屋久島に行こうと思っているので読んでみることに。
図書館でライアル・ワトソンを検索したらこの本しかなかったから、これが代表作かと思っていたら、アマゾンで売っているのは別の本ばかりだ。というわけで今回はアマゾンからの画像なし。
何でこの本だけあったんだろう。しかも植物学のカテゴリーにあったけど、内容は植物学とは違うぞ!!図書館もよくわからん。

この著者はクレイジーなほどに博学。一日にどれだけの本を読んでいるんだろう。そして読むだけでなく、世界をまたにかけて行動もしてるみたいだからすごい。

たぶんこの本のキーワードはオーガニック・ブリッジ(有機的なつながり)」、「感情の指紋
著者は科学者でありながら、科学で説明できない(少なくとも今はできていない)ものが存在する可能性を否定していない。一応科学者らしく、出典付きの事例を挙げて紹介しているが、本人もそれでは説得力に欠けるのは承知しながら書いている。
何の論理も説明も加えないで、あくまでも想像の域、著者の感覚であることをベースにしてはいるが、超自然的なものの存在を信じている。・・・でもそれを超自然的と書くのはおかしいかもしれない。むしろそれが「自然」なのかも?

たとえば、落としたはずの時計が何十年後かに返っくる事例、電話回線の混乱でつながるはずのない人につながる事例、ストラディバリウスはバイオリンを作ると必ず夫妻の寝室に1ヶ月置いてから完成させたという事例、不幸を呼ぶ指輪、グアダルーペの聖母、サラエボ事件でフェルディナンド大公が乗っていた車のその後、使用者が必死なときほど故障するコピー機などなど。。。

物に生命を吹き込み、無機物をあたかも生きているかのように扱う習慣があまりに広く普及し、しみこんでいるために、ほとんど人間行動の基本的なパターンになってしまった、とユングは指摘しているらしい。。。これは本当に的を得ている。「機械のくせに・・」「恋人からもらったからこれは特別な品」などと思った瞬間に、人は物に生命を与えていることになる。そう思えば、物が何か主体的に影響力を持ち始めてもおかしくないし、その責任は人間にあるとも考えられる。

★以下、考えてしまった文章の適当な抜粋。

人類は究極の進化をとげ、機会に適応してほとんどそれに寄生するようになり、自身の生物的進化をほとんど停止してしまった「機械いじりの好きな心やさしきゴキブリ」だ。
うーむ。痛烈なジョークだけど、実際、人間の身体能力は退化の一途を辿っている気がする。

人間はみな電話の奴隷になってしまった。通りすがりに公衆電話が鳴れば、誰に当てた電話かもわからないのに出てしまう人がいる。なぜか?「電話が鳴ったから」。それで十分な理由になってしまっている。「返答機械になったのは、留守電ではなく人間の方だ」との著者の表現はまさに。
確かに、もし公衆電話が鳴ったらぴもーも思わず出ちゃうよ。。。

文化的ニーズよりも、人間の「新しい物好き」こそが無機物進化の推進役であり、それは有機的進化における遺伝的欠陥が果たしてきたのとほぼ同じ。
この2つの進化は実は相互作用があるのでは。。。

人間をおとしめるような洞察を科学は繰り返しもたらしてきた。ガリレオは人間を宇宙の中心から外し、ダーウィンは動物と一線を画していた地位から人間を追いやり、フロイトは人間の理性が幻想にすぎないことをあきらかにした。にもかかわらず人間は探求の手をゆるめない。・・言い換えれば、科学は人類が自己を知る人類なりの方法。その洞察にいかに苦痛がともなおうとそれを追求するのは、人間があくまで存在に意義を見出したいから。
これからも人間は苦しみの発見をしていくんだろうね。。。

★この本を読んで行ってみたくなったところ
ロンドンのフォート資料館
オックスフォードのピット・リヴァース博物館
グアダルーペ大聖堂


なんだか科学というものは坂道を転がるタイヤみたいなもんだなーと思った。一度動き出したら二度と止まらない。途中で軌道修正しようとしても大きな流れにのせられて誰にも止められない。行き着く場所が不幸な世界だとわかっていても。

それから、改めて、有機物と無機物の違いってなんだろう?と思った。生物と無生物の違いってなんだろう?無生物にも命があるかのような振る舞いを引き起こしているのはすべて人間が原因かもしれないというのもおもしろい発想。もちろん何の証拠もない。でもこういうことを科学者が言うから興味深い。

植物に優しい言葉をかけるとよく成長するとかいったエセ科学が出回っているけど、優しい言葉なんて人それぞれ感じ方も違うし、日本語ではいい意味でも別の言語では同じ音で卑しい言葉ってこともある。こういうことを信じるわけでは全然ない。
けど、「オーガニック・ブリッジ」があったとしたら、何が原因でおこるのか?あったとしたら、それは今後どんな影響を及ぼしていくか?そういうスタンスで現代の人間社会を洞察したおもしろい本だと思う。新しい視点をもらえた。