December 2008

怖い絵/中野京子
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怖い絵2/中野京子
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絵の奥の奥を読み解くと実は結構怖いかも?という名画を集めた解説本。
たぶん、「ダヴィンチ・コード」のヒットで、絵画を別の目で見るテーマが流行ってるのかも。
図書館のお勧め新刊コーナーにあったので手にとってみた。最初に読んだのは「怖い絵2」の方で、おもしろかったから1の方も読もうと思っていたら、偶然兄がそれを持って実家に来ていたのでちょっと運命を感じた(笑)
兄には年に2回くらいしか会わないのに。すごいな。

絵っていうのは人の情念が込められていて、ある意味それを考えただけでも十分怖い。何ヶ月か、時には何年かかけてその絵(単なるキャンバスのときも含め)を触れ、見つめ、その前で悩み、笑い、汗を流し、時には話かけた人がいる、ということを想像すると一瞬気が遠くなる。

絵それぞれの時代背景、作者の境遇、絵を描く動機(名画と呼ばれる古い絵の多くは注文主がいただろう)、そういったものを読み解くのはおもしろい。それがこの本の著者の単なる推論であっても、絵を見つめなおすきっかけとしては十分意味がある。

「怖い絵」というのは、見るからに怖い絵を指すのではもちろんなくて、その意味を考えたときに「怖い」というよりは「はっと」させられる、という意味かな。絵に描き込まれているものが深い愛情であっても、それは深ければ深いほど「怖い」という感情も呼び起こす。

なかには、著者の考え方が?というものもある。大げさすぎでしょ、というところもないではない。
でも本物の絵を見に行きたくなること間違いなし。
この本があえて絵をきれいに印刷していないのも、美術館で本物を見ろ、ということなのかな。
ポジティブにとらえれば。。。

以下、気になった絵。

ムンク 「思春期」 1894年
存在の不安。変化への恐怖。それをこんなにも視覚的に表現できるムンクが怖い。楽しくも美しくもない絵だけれど、手に入れたくなる絵だなぁ。

ベックリン 「死の島」 1880年
キューブラー・ロスの唱えた死の5段階、「否認」、「怒り」、「取引」、「抑鬱」、「受容」の内、「抑鬱」から「受容」に至る最終段階を表している、らしい。そうなのかよくわからないけど。。。シンプルで色彩にも乏しい絵なのに、なぜか忘れられない絵。