March 2008

インドでわしも考えた (集英社文庫)/椎名 誠
¥600
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古本屋で100円で購入。昨年、インドに旅行に行ったこともあったし、椎名誠という名前は聞くけど著書を読んだ事がなかったので読んでみることにした。

椎名氏はインドに行くに当たって何の下調べもなしに行って、そこで見たものや聞いたものを実に率直に書いている。ガイドブックには必ず載っているだろう「リキシャー(インドでは大変お世話になるバイクタクシー)」の語源についても知らないようだから、下調べなしというのはほんとのことだろう。
インドは「何度も行きたい!」という人と「二度と行きたくない!」という人の差が激しいというのを聞いていたから、なんだかよくわからんが特殊な文化を持った国のようだ、という警戒心があり、ぴもーの場合は行く前にガイドブックは一冊読破していた。
でも行ってみて、多少の知識で「そうかそうか」などと納得できるような生半可な文化ではないという気はした。
より安全に旅行するために多少の知識は必要だとは思うが、それは単なるノウハウでしかなく、見るもの聞くものすべてが、本から想像しえたものよりもアグレッシブで強烈な世界だった。
自分の思い出と照らしながら、「そうそう!」と共感したり、「そんなシーンには出くわさなかったなぁ」などと思い出しながら楽しく読めた。

まずは椎名氏の独特の文章にちょっとびっくりした。
インドについて書いてあるからではないのだろうけど、この人、インドに合ってそうだなーと感じた。
たとえば、一つ前の記事に書いた堀江氏などはインドには間違いなく合ってないという気がする。。。

「むははははと猛烈に笑っているような太陽の凶暴な暑さ」などの表現がすごい。
ぴもーがインドに行ったときは冬で、しかも北の方しか行かなかったので、半袖では寒い気候だった。
でも夏のインドはきっとこういう感じだろうというのはよくわかる。
白く柔らかく温かくてもっちりしているナンを「色っぽい」と表現しているのにも感心。そういわれればまさに(笑)

それに、「インド人は毎日カレーを食べているのだろうか?」という誰もが持つ疑問に見事に答えてる。
そう、インド人は確かに誰もがカレーを食べてる。でも日本でのカレーよりももっといろんな名前と種類があって、ナンと食べたり、別のパンのようなものにつけたり、実に多彩なバリエーションがある。
「日本での味噌汁と同じようなもん」という椎名氏のたとえが正しいかも。
でも味噌汁よりももっと主張があって、栄養価もたっぷりあるしなー。。。やはり日本人の感覚では捉えきれない。

「騒然としたニンゲンエネルギーに満ちている」という表現もまったくその通りだと思う。
インドの街はたくさんの人、車、牛で埋め尽くされている。
想像を絶する騒音、クラクション、人の声・・・。そんなものにクラクラしない日本人はいないだろう。
路上で生活するたくさんの貧困層の人たちは、実にエネルギッシュで、人間とはこんなに強いんだなぁということを知らせてくれる。
乞食たちも恵みを要求する表情こそ哀れだが、一度ものやお金をもらうと実にうれしそうに離れていく。
観光客を見ればすぐに寄って来ていろいろまとわりついてくる人たちもパワフルでよくわからない迫力に負けそうになる。
インドに行くと、現代日本人とはなんて軟弱な人種だろうと思う。

ガンジス川をゆるやかな大奔流と述べているのも、なるほどという感じがする。
何千万という遺体や骨を飲み込んできた川
インド人の99.9%が死ぬときに記念品を遺さないらしい。
確かにこんな川に流されるならそんなつまらないものはいらないと思える。

ヒンドゥの神というのは実に多様で、体が青やピンクの変な顔の変な格好をした人だったり、像や亀や得たいの知れない生物のようなものだったりする。
そういったものを熱心に拝むことは到底理解できないが、信じるものがあるのはすてきなことだ。
ヒンドゥの神々を信じ、本を読んで何やら唱えているような人たちはほんとは乞食かもしれないけど、聖人のように見える、と。そうかも。うんうん。

次にインドに行くなら夏の南部の方に行こう。凶暴な暑さを体験してみたい。
そしてガンジス川を舟から見よう。カレーをたくさん食べたい。変な神様たちにももっと会いたい。
あのニンゲンエネルギーにもまた圧倒されたいなぁ。