January 2008

戦争―WAR DNA/Q.サカマキ
¥3,150
Amazon.co.jp
(↑該当の本がアマゾンになかったので、同じ著者の本を貼ってみました)


古本屋で買った。最近新聞でこの人の別の本が紹介されていて、名前を覚えていたので。ピューリツァー賞を受賞した人らしい。

中東アジアにはあまり興味はなくて、単に「治安が悪い」「イスラム社会」「石油マネーがある」「戦争が多い」くらいのイメージしかなかった。でも職場にレバノンに行ったことがある人がいたり、友人がイスラエル人と仕事をしているという話を聞いたり、最近わりと中東世界の話を聞くことがあったので、多少興味がふくらんでいた。世界史を全然知らないので恥ずかしいという思いもあり、写真も入っていたし、ショッキングなタイトルにも惹かれて読んでみようと思った。

結果、読んでよかった。自分の無知を知って、ほんとに恥ずかしい思い。

イスラエルという国がどういう経緯でできたか、イスラエル国民とはどういうバックグラウンドを持っている人たちなのか、パレスチナとはどんな土地なのか、パレスチナ人とは何者をいうのか、イスラエル周辺のアラブ諸国との関係、欧米の大国との関係、石油の利権、ホロコーストの禍根、イスラム教とユダヤ教、それぞれの国の英雄、難民の生活、国連の役割・・・。

自爆テロのニュースもだいぶ聞きなれてしまって、その意味を軽んじてしまっていた。自分の死を持って破壊攻撃をするってどういうことだろうということを改めて考える機会になった。自爆テロは旧日本軍の神風特攻隊などとはまったく意味が違う。誰に強制されるでもなく、同胞の中では賛美されているのかもしれないが、でも個人の意思で行っていることだし、攻撃のためだけでなく、抗議行動という意味もかなり強い。そして若い女の子でも自爆テロを考えることがあるということ。なんて世界だろう。体に銃痕があっても誰も驚かない。残酷な拷問を経験したことのある人も数多い。それはイスラエル人もパレスチナ人も同じ。一度争いがおこったら人間はどこまでも残虐になれる。

まさにスパイラルに陥っている。ユダヤ人とパレスチナ人はなぜ憎み合うのか。歴史の禍根、大国の思惑、宗教の違い、土地そのものに関する思い入れ・・・。日本人のように、国土を追われたこともなく、異宗教の軋轢を経験したこともなく、まわりを海という防護壁で囲まれた歴史の浅い民族にはなかなか理解しがたいものがあるのかもしれない。人々がなぜパレスチナの土地にこだわるのか。

紛争の解決策は何も浮かばないけど、まずは知ること。そしてほっとけないという気持ちを持つこと。それを忘れないこと。それ以外にぴもーに何ができるんだろう。この著者は危険を冒して写真を撮りながら、何とか現状を変えるための活動を行っている。それでも無力感を感じてる。誰も解決策を見出せないでいる。でも目をそむけないこと。それだけが解決のための初めの、そしてずっと忘れてはならない一歩。