cat piece

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はきだめ

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あまり意味はなかった。

すべての決意が泡沫となるとき、自殺した人形のように、鏡の前で項垂れる自分の姿が映るのだろう。と、昼下がりの壁際で絶望しながら思った。
里香は30手前のフリーターだ。14歳のころから過ごすこの実家の自室の壁にもたれて、今日一日が過ぎていくのを、意志の抜け落ちた躯が眺めていた。
家電量販店、売り場。出勤するたび、上司からは自分を疎んじるような視線を受け、客からは不機嫌そうなまなざしを受ける。非正規雇用で月10万円ほどが慰みのように手元に落ち、手の中にある携帯の画面にはつまらない男たちのつまらない言葉が隔日で配信されてくる。

あまり意味はなかった。

つまらない仕事とつまらない職場、つまらない人間関係。さまざまなものが生きることに飽きを生じさせていた。飽きた。つまらなかった。
平日、シフトの上でお休みの今日、仕事を変えるためにハローワークへ赴くはずだった。ハローワーク。ハローワーク。自転車と電車で50分。車なら40分。
起床、コーヒーを飲み、洗濯、食器洗い、着替え。姿見の前、よれた小花柄のパーカーを羽織ると刹那、里香の中ですべての意味が消えてしまった。
抜け落ちてしまった。意志。感覚。

壁にもたれ座り込むと、祖母が昔、旅行先から買ってきたあまりに頭の大きな女の子の人形と同じ体勢になった。足を投げ出し、明りの消えた目はフローリングの床板に視線を刺したまま動かなかった。

人形でいるのは楽だった。


幼いころ、すべてのものは陽に輝き、取り巻く草木が、慈愛に満ちた父のように里香を包み込んで育ててくれた。4歳の里香は花を摘んだ。父は花をプレゼントしてくれた。(つづく)
アルコール、カフェイン、アルコール。

葛根湯、アシッド、リチウム、愛、愛、愛、



痣だらけの足に煙草の先を押しつけて、君の歯型をなぞっていた。

でたらめな単語が口角から滴り落ちて、つまらない仕事の愚痴が脳内に充満する。単語はうつくしいのに、生きる現象は白々しい。生活はつまらない。仕事はつまらない。愛人はつまらない。生きることはつまらない。



君の歯型だけ、私を所有している。



脱毛する機械を買った。7万円。お給料の7割。つまらない。つまらない。