前回のビデオ交換からの続きです。

2010年に購入したMac Pro Early2009。最近のMacはMacBook Proにしろ、Mac miniにしろ、iMacにしろ、Macは基本的にスペックを決めて購入。購入してしまうとハードの性能は上げることができないパソコンです。メモリ増やしたり、Wi-Fiカードを交換したり等はできますけどね。

唯一拡張ができるMacがMac Proシリーズなワケです。
その形状からゴミ箱と呼ばれているMac Pro(2013)も内部交換が可能です。

買った当初は久々に高いMacを買ったので壊れるのが怖いからあまり手を加えてませんでしたが、年々手を加えるようになりました。
自分のMac歴はMacintosh LC575から始まりました。あの頃はエントリークラスのMacでもCPUアップグレードカードがリリースされて交換できたりしました。しかも秋葉原でチップ買ってきて電子工作してオーバークロックさせたりしてました。若気の至りで失敗したときのことをあまり考えてませんでしたね。その後のMacも結構改造してましたよにひひ
Mac Proまで来るともはやそういった改造の必要が無いくらいまで性能が上がっていたので、だいぶさみしい感じもしてました。

Mac ProはCPUを基板(ドーターボード)に直付けしているわけじゃないので、CPUのソケットタイプが合えばたいていは使えます。しかし当初CPU交換は考えていませんでした。
なぜならばMac Pro 2009の8core 2.26GHzは他Mac Proとは違った特殊な取り付け方がされているんです。後述しますが最初CPU交換を考えたとき、まだ高価だったのと改造リスクが高くて手が出せませんでした。

それをふとした拍子に思い出しCPUの値段を探ってみたらだいぶ下がってました。
これは?!目と、一気にテンション上がりましたね。手が出せるところまで下がってきました。


まずCPU選定

Mac Proが使っているCPUはIntel Xeonシリーズ。これはワークステーションなどに向けた高めの性能と高安定性を求めたCPUです。一時のCPUパワーを求めるならばCore i7の方が速かったりします。

自分のMac ProのCPUはXeon E5520。2009年にリリースされたNehalem-EP世代のCPUです。普通の使い方をしていれば2016年の今も充分に使えるCPUです。

取り出したXeon E5520 2個


このCPUのソケットはLGA1366。このソケットで最大限までCPUのグレードを上げようとすると、翌年にリリースされたWestmere-EP世代のX56xxシリーズがめいっぱい。これはもう少し買うのを待てば買うことができたMac Pro 2010で使われているCPUシリーズです得意げ

ということで候補に挙がったのがX5670とX5690。
CPU 比較表
modelClock (GHz)L2 Cache (KB)L3 Cache (MB)QPI (GT/s)コア/スレッド数対応メモリ(MHz)TDP (W)Socket
X56903.466 x 256122 x 6.46/121333130LGA1366
X56702.936 x 256122 x 6.46/12133395LGA1366
E55202.264 x 25682 x 5.864/8106680LGA1366

E5520に比べてクロック数が上がっているだけでなく、1CPUあたりコアが4コアから6コアへ増加。つまりCPU 2個で12コアまで増えます。Photoshopなどシングルコア向きのアプリケーションではあまりマルチ(多)コアは効果無いですが、動画エンコードなどでは性能を発揮します。Final Cut Pro Xで動画エンコードするとき8コアが全部使い切るところまで使用されますからね。

ハッキリって一番下のグレードのCPUですからどれに上げても何かしら効果は得られるはず!

男は黙って最高スペック?

いやいやいや、ちと値段が高いな…にひひ

それもあるんですけど気になったのは消費電力です。というのも自分のMac Proは2010年から使っていて今年で6年目を迎えています。何が問題?

そろそろ電源が逝ってしまいそうな時期に入ってきているわけです。電源の電解コンデンサという電子部品があるんですが、発売当時はアジア系の安物コンデンサが多く使われており、それが使われていたりするとだいたい5年くらいで壊れてしまうようです。自分の電源がそれかどうかはわかりません。
それにやっぱりスマホの電池のように劣化もあるので、電源容量がどこまで減っているのかわかりません。Mac Proは1,300WとWin機に比べたら大きい電源を搭載しています。※Winの一般機は300-500Wです。

ビデオカード、ハードディスク4台など載せててさらにCPUの消費電力を加えると?
もう5才の老体です。あまり無理していじめるのもかわいそうということで、1CPUあたり15W増で済むのX5670に決定しました。
Xeon X5670


交換するその前にFirmwareの書き換え

実はCPUだけ変えても認識はしないんですよね…。
Mac Pro 2009の機種IDは「4.1」です。X56xxシリーズを搭載するMac Pro 2010は「5.1」。

普通のやり方では機種IDを5.1へ変更することはできません。
しかし世の中には精鋭がいらっしゃいます。5.1へファームウェアをアップデートできるようにするツールが作られています。「Mac Pro 2009-2010 Firmware Tool.app」。例えばここでゲットできます。これでウィザード通りに進めば容易にアップデートしてくれます。英語なんでよく読んでくださいね。
※El Capitan(MacOS X 10.11.x)はSIPをオフにする必要あり。

自分の場合はここで引っかかりました。「エラー5570」でアップデート失敗します。
調べるとハードの初期構成を変えていると発生するとかしないとか?できるだけ初期構成に戻しましたが、それでもうまくいかず。
回避方法があったので紹介。
  1. AppleのサイトからMac Pro(2010)用のEFI ファームウェア・アップデートをダウンロードする。
  2. ダウンロードしたイメージファイルを展開/マウントする。
  3. 「MacProEFIUpdate.pkg」をデスクトップなどにコピー。
  4. そして、Mac Pro 2009-2010 Firmware Toolを実行。

これでアップデート手続き“前”段階が完了です。

次にMacの電源を落とし電源ボタンを「プー♩」というビープ音が聞こえるまで長押し。これでファームウェアの書き換え完了です。この間に絶対に電源を落としたり変なことをしてはいけません。ファームウェア書き換え失敗すると起動しなくなります。
CPU交換前にやっておかないと新CPUでは起動できませんのでご注意。


いよいよ交換作業へ

先ほど、自分のMacで使われているCPUは特殊な取り付け方がされていると書きました。最近のCPUは上の写真のように銀色のカバー(ヒートスプレッダ)が付いているモデルが主流です。自分のMac Pro“以外”は「このまま」カバーが付いたままソケットにさすだけで使えるんです。

自分のMac Proはこのカバー(ヒートスプレッダ)がない取り付け方がされています。なんでよ…しょぼん
つまりこのヒートスプレッダを取り除かないとなりません。これを「殻割り」と呼ぶようです。

CPU 殻割り」でググってみるサーチ

良く引っかかるのがCore i7の殻割りでした。これも似たようなモノなんですが、これは中はゴム?シリコン?みたいなもので接着されてるのとグリスです。

Xeon X5670の厄介なところは、周りをゴムみたいな物で接着されているのは同じなのですが、「ダイ」と呼ばれる表面に出ている長方形の部分。そこがソルダリング(半田付け)されているんですよむっ
無理矢理こじ開ければ、ダイを剥ぎ取ることになります。

ではどうやって剥がすか?基本は当然、中のハンダを熱で溶かすしかありません。

ここで方法は二つあります。
一つはアイロンを使った方法と、もう一つは万力とヒートガンを使った方法

前者はアイロンを直接CPUに当ててハンダを溶かす方法。
後者は万力によってベースとなる基板とヒートスプレッダを挟み込み、ヒートガンで熱を加えながら万力で圧力を加えて剥がす方法。

参考になる動画があったのでどうぞ。

<アイロンでのやり方>
ヒートスプレッダと基板の間に薄い金属板を挟み込みます。そしてアイロンを載せてしばらく待つ。
すると自然にハンダが溶けCPUが下に落ちるワケです。


<万力とヒートガン>


自分は最終的にアイロン当てで剥がしましたアイロン

自分は最初後者の万力でやろうと思いました。その為にわざわざ安物ヒートガンを購入しトライしたのですが、なかなか剥がれない。もちろん電子部品は熱に弱いですから長時間の加熱は厳禁です。余計なハンダまで溶かしてしまう可能性もありますからね。それを諦めてアイロン当てに変更しました。終わってからの感想ですが、こっちの方が容易だと思います。

ただ自分的に厄介だったのがハンダを剥がすことより、周りのゴムシール?を剥がすことでした。
ここはカッターや薄い硬いものを差し込んで削っていくわけですが、テレホンカードでやった方が安全という経験談が多かったです。カッターだと失敗率が高い。

何を失敗するかというと、CPUの上面には積層セラミックコンデンサという電子部品が載ってます。それを壊しちゃうんですよ。だからカッターでやる場合には慎重に慎重に、さらに慎重に進めていかないと行けません。最初カードでやったんですけど、全然削れなくて諦めてカッターで根気よくやりました。2個目は慣れたから良かったですけど、1個目はね1つだけやっちゃったかなぁ…という感じになってしまいましたが…。


これが殻割りをしたCPUです。どっかのCMじゃないですが「パッカーァンクラッカー
殻割りXeon x5670


ね、黒い枠のすぐ内側にコンデンサがありますよね。

この写真は綺麗に掃除した後です。実際はその後もっと綺麗に磨きました。
中央のダイの上にはハンダが付いてました。

ヒートスプレッダの裏側です。こっちにはハンダが残ってます。
ヒートスプレッダ裏側

ダイには傷を付けられませんから、ハンダはそれでも柔らかい方なので自分はカッターで地道に削っていきました。ダイに熱を加えるのは正直本当に怖かったので、熱を加えてハンダ吸い取りとかやれる自信が無かったのもあります。

脳みそであるCPUの手術ですから久々の緊張感ですよグッド!
2つ殻割り完了させていよいよ取り付けです。


Mac Proは内部交換は容易です。引き出すだけです。
ヒートシンクを3mmアーレンキー(10cm以上長いもの推奨)で外します。

ヒートシンクを外した状態の写真です。CPUはE5520の状態です。
Mac Pro 2009 ドーターボード

あぁぁお恥ずかしべーっだ!

よく見ると、
CPU周りは埃だらけ

CPU周りは埃が溜まってましたえっ

定期的に掃除機で吸い出したりはしていたんですけどね。ヒートシンクを外してまではやってなかったので…。いやぁよくショートとかしなかったとヒヤヒヤですよガーン 5年分の埃です。綺麗に取ってやりましたよーーチョキ

それにしても5年も経過しているのにCPUグリスが全然渇いてガビガビになってなかったのには驚きましたね。未だ粘着力保ってたし、良いCPUグリスだったのかな?

そう、この写真でわかるようにこのCPUの上に直にヒートシンクが乗っかっています。
自分のMac以外はここがCPUをヒートスプレッダを付けたままパコッと載せて、フタを被せてあげるだけで付けられるんですよ。専用の取り付け部品が設置されています。変な労力使わない…羨ましい。

X5670ってダイの色が違うだけでE5520とほぼ同じデザインなんですね。
黒いゴムシールは本当は綺麗に剥がした方が良かったのかな?
この上にプラスチックのカバーを載せるんですけど、このシールのせいで微妙に高くなると思われます。けど剥がそうとしてみましたがなかなか取れませんでした。少しきつめにヒートシンクを押さえつければ良いかなぁ?と自分は剥がすのを断念しました。

CPUグリスも液体金属?ターミネーターにでてくるアレ?と思ってしまたリキプロ(LIQUID Pro)を使うかどうか迷ったのですが、ぱっと見使い方が面倒そうなのでやめました。次に塗り直すときに試そうかな?今回はリキプロの半額程度のナノダイアモンドCPUグリス(Ainex JP-DX1)なるものを使ってみました。

その後慎重にヒートシンクを取り付けMac Proに収納して交換作業完了。


あとは起動を祈るのみ!祈り








起動しない…


電源ボタンを押しても一瞬ファンが回るだけですぐに電源が落ちてしまうショック!

もしかして静電気等で壊した?CPUの殻割りで失敗した?

恐る恐る前のCPUに戻してみる。無事起動ふぅ CPU壊しちゃったかぁ…。



上の方で書きましたが、交換するときはテンションが上がっててスッカリ忘れていました。

「プー」とビープ音が鳴るまで電源ボタンを長押しし続けることを

その時自分はPRAMやSMCをリセットすれば良いと思い込んでいました。
改めて電源ボタン長押しで起動「プー」というビープ音が聞こえてファームウェア書き換え処理が始まる。数分かかりました。そしてMacの起動を確認し再度電源を落とす。
再びCPUを交換しMacに装着し、今度こそ!と電源を入れてみる。



パァーン音譜クラッカー無事起動しました~~。


速さは起動から感じました。激的にとまでは行きませんが、たんたんたんと今までよりサクッとした感触を感じましたラブラブ!

Macについてを見ると、見事CPUが認識されています。
Macシステム情報

記念にベンチマークを測ってみる。CINEBENCH R15での結果。
CINEBENCH結果
1と6番が新旧の比較です。ほぼ2倍の結果を出していますチョキ

GeekBench 3での結果もE5520と比べてほぼ2倍出せているので倍速改良成功ですクラッカー

CPUが高速化したので気になるのは熱です。
もし取り付けが失敗してたりするとMacが熱暴走を起こしたりします。
CPU温度

これを見るとCPU温度が1個目Aが34度、2個目Bが27度と問題ないレベルです。
今が冬だというのもありますけどね。

GeekBench3にはストレステストというCPUにあえて負担をかけるテストモードがあるのですが、それを2時間ほどやってみたところ、CPU Aが最大78度、CPU Bが69度にまで上がりました。そしてエラーも無し!ニコニコ
終わらせるとすぐに下がり始めいつもの温度に落ち着きます。問題はなさそうですね。
殻割りの時にCPUのコンデンサに傷つけたかと心配しましたがひとまずホッとしていますにひひ
ただ気になるのはAとBではいつも約9度くらいの温度差がキープされてるんですよね。この差は何だろう?



一応CPU交換には別な交換方法もあります。

今回は自分は殻割りしてCPUを取り付けましたが、殻割りせずそのままヒートスプレッダを残したまま取り付ける方法もあります。

ヒートスプレッダがある分約2.5mmくらいCPUの高さが変わります。そうするとヒートシンクを取り付けるときにいろいろと難が出てきます。ヒートシンクにはファンが内蔵されていますがその電源コネクタに加工加えるのと、ヒートシンクを取り付けるときの締め付けトルクも重要になってきます。締め付けすぎてもダメ、弱すぎてもダメ。絶妙な締め付けをしないといけません。自分はこういうの苦手なので殻割りしました。






数年ぶりのハード改造で面白かった。あと自分のMac Proでスペックアップできる手とすれば、SSD化とメモリを1333MHzの物に交換するくらいでしょうか?あとは電源の交換も念頭に置いておかないとなりませんね。
我が愛機Mac Pro 2009 12core 2.93GHz。あと何年愛用できるでしょうか?アップグレードMac Pro 2009 更にこれからも頑張ってくれよ~~グッド!