豚袋でございます。

気がつけばもう11月なんですねぇ…今年もあと2ヶ月ということですか。早いものです。そして気がつけばもう前回記事から10日もたってしまっている…週間ブログを目標にしておるのですが、なかなか思うように行かないものです。さて、プリンス、ザ・タイムとアフロ系が続きましたが、今回はもうひとつのアフロ系とも言うべきレゲエをとりあげようと思います。レゲエといえばやっぱりこの人、ボブ・マーリーが代名詞でしょう。そして彼が大きくその認知を広めたのはやっぱりこのアルバム「ライヴ！」に他ならないでしょう。

豚は特にレゲエに詳しい訳ではありません。もともとレゲエとの接点はパンクス、とりわけクラッシュとのつながりであったり、前に記事にしましたクラプトンつながりであったり、ポリスがメジャーにしたリズムであったりしたわけで、常にロックの音楽表現としてのひとつの要素として親しんでいたに過ぎません。また、サード・ワールドやUB40といったポップに傾斜したレゲエミュージックがその後よく流れた事もあり、その耳触りの良さと南国ムードかもし出すテンポとリズムをBGM的に聞くといういかにも無邪気な聴き方をしていたものです。

その昔渋谷の百軒店街に「ブラック・ホーク」というレゲエしか流さないカフェがあり、上京したての頃友人に連れられて行ったのですが、そこでラスタな雰囲気とラム酒と音楽に興味をもち、ボブ・マーリーからまずは聴こうと思ったのがまともなレゲエとの邂逅であったと思います。表層的にしか聴いていなかったレゲエですが、そのルーツをたどった時に、ボブ・マーリーという記号と彼の産物を知れば知るほどその存在の大きさを感じずにはいられませんでした。彼のアルバムの中で一番わかりやすく心揺さぶられたものが、この「ライヴ！」でありました。ボブ・マーリーの事はWIKIでも何でも、それはそれは沢山の情報が書いてあります。私のつたない文章で表現するにはあまりにも膨大なストーリーになってしまうので割愛させていただくとして、私はこのアルバムの事のみ書こうと思います。

Bob Marley - Lively Up Yourself

1973～75年頃のイギリスの音楽状況の中で、ジャマイカ系移民から一般へレゲエの熱は徐々に高まっていたようです。なによりこのアルバムがジャマイカでなくロンドンで録音されていること、なのにすでに観客と一体化したパフォーマンスを奏でていることがその証であると思います。レゲエはもともと「レベル・ミュージック(抵抗の音楽）」としての側面が強く、時に怒り時に嘆き、その怒りのエネルギーをリズムと旋律に乗せて昇華し共鳴してゆく音楽でもあります。ボブの歌は時に叫びアジるように、そして祈りにも似た様相を呈したり、まさに土着的で宗教的神秘的なパフォーマンスはきっと新鮮さと驚きをもって迎え入れられたに違いありません。

また、当然エリック・クラプトンの功績も大きいでしょう。彼が「アイ・ショット・ザ・シェリフ」をカバーしてヒットしたことは当然そのルーツたるボブ・マーリーにスポットを当てることとなり、起こりつつあったレゲエ熱の高まりと合わせて認知を不動のものとしたのだと思います。その曲もいいのですが、このアルバムのハイライトは何といっても名演「ノー・ウーマン・ノー・クライ」でしょう。

Bob Marley- No Woman No Cry with lyrics

泣かないで / 思い出したんだ / 僕達がよくトレンチタウンの政府施設(炊事場)で / 偽善者を観察してたことを /そいつらは僕らが会ったいいやつ達に混ざってた / ここですばらしい仲間を持ちすばらしい仲間を失った / この偉大なる未来を迎えても過去を忘れちゃいけない / だから涙を拭いて（中略）自分がいなくなっている間でも / すべては上手くいくはずさ …

トレンチタウンというジャマイカのゲットー。そこでの生活と政治の騒乱のなかで失った悲しみを、優しく時に言いきかせるように、痛みを癒しながら忘れないよう心に刻みながら言葉をつむいでゆくその姿、そしてどこまでも優しいメロディと音色に圧倒的に涙腺が弱くなってしまいます。この曲を聴くだけでもこのアルバムを買う価値があると思います。

その後のボブ・マーリーはレゲエ界のビッグネームとして数々のアルバムを世に送り出し、癌という病におかされながらも音楽活動を続け、1981 年5月11日、36才の若さでこの世を去りました。皆様もご存知の事と思います。そんなボブが誰もが認めるレゲエ界の現人神(ジャー）になった瞬間の記録がこのアルバムである、といったら過言でしょうか。それほどこのアルバムのパフォームは生命力に溢れ、オーディエンスを共振させ心揺さぶるヴァイヴレーション、グルーブ感で満たされています。ロック・レゲエ史上のみならず音楽史上において重要なマスターピースであることは明白だと思います。ちょっと大袈裟な表現になってしまいましたが（笑）

最後にこのアルバムのラストナンバーと、ボブの名言とともに締めたいと思います。それでは、また。

『音楽の良いところは銃とは違って、心をヒットしても痛みを感じることだ』

Bob Marley and The Wailers - Get Up, Stand Up (LIVE!)

BOB MARLEY & THE WAILERS / LIVE! (1975)