こんばんは、豚袋ライトです。

実家に少々帰っていました。例年に比べて夏らしくない気候で、涼しくてよいのですが季節感が…せっかく四季のある国にいるのでがっつりメリハリのきいた季節感を渇望したいところですね。

で、夏になると何となく脱力系の音楽が聞きたくなります。一方でがっつり暑苦しい肉体派の音も欲しくなる。そうめんや冷やし中華を食べたい一方で、カレーやホットな物を食べたくなるようなものですね（笑）夏とはメリハリの季節なのだなぁとつくづく思ったりします。

今回はそうめん系のアルバムをひとつ、ステレオラブの「エンペラー・トマトケチャップ」をご紹介。

もともとこのアルバムに興味を持ったのはそのタイトルです。知る人ぞ知る「トマトケチャップ皇帝」はかのアングラ演劇の雄、寺山修司の1970年頃の実験的映画。時代がかってアングラの独自の匂いというか、爽やかのかけらもなく不気味というか…まあこんな感じです。↓

トマトケチャップ皇帝

内容は大人たちの虐待や抑圧に反旗を翻した子供達による支配社会を描く、みたいなストーリーがあってないようなもの。何となく気分の悪くなる映画でした（笑）そんなタイトルをアルバムにつけちゃうなんてどんなヤツラなの？というのが聴くきっかけでした。

まぁまず一曲聴いてみましょうか。

Stereolab - Cybele's Reverie

正直映画を知っている人間にとっては、思わず「カックン」とコケてしまいそうなギャップ感が…ちょっと甘めのメロディーを、アンニュイな女性ボーカルがなぞっていく、しかもフランス語？ボサノバ？室内系スノッブ・カフェで流れるオサレな音楽、いわゆるモンド系とでも言うのでしょうか。どこが寺山修司やねん！と突っ込みを入れたくなるようなサウンドです。きっと彼らはインテリで、マイナー＆カルト好きで「シュージ・テラヤマ知ってるぜ」自慢なのでしょう＾＾；

そしてそのタイトル曲がコレ↓

Stereolab- Emperor Tomato Ketchup

しかしよく聴いてみると、不思議な感触の音楽。無機的無感情ともいえるようなボーカルでひたすら繰り返すフレーズ。でもキレイな声。電子音なんだけれども、どう考えても1996年のリアルではなくて60～70年代の電子音、アナログシンセ。デジタルでは出ない、独特の温もりというか躍動感と幸福感があるような気がする。そこにどたばたリズムと妙にポップなギターが絡むあたりは1996年のリアルで、何とも言えない。

心の琴線に触れる類のものでなく、感情の安定を狙ったような浮遊感。そして確信犯的。アルバム全部通して聴いてみても、ヴァラエティに富んでいるようで印象はワン・テイスト。なんとも言えないけれど心地よいアルバムだったのでした。ジャケットもわけわからんけどポップでアートで躍動感があっていいですね。マイナー＆カルトで一種シニカルでありながら、普遍的にポップであることは立派に商売人だなぁなんて。

ボーカルのメアリーが事故にあって亡くなったようで、あの無機的に美しい声を聴けなくなったのは残念です。

例によって私がこのアルバムで一番好きな曲で締めたいと思います。それでは、また。

Stereolab - Motoroller Scalatron

STEREOLAB / EMPEROR TOMATO KETCHUP (1996)