豚袋でございます。また少し間が空いてしまいました。

豚インフルエンザのおかげで、商売があがったりです。様々なところに影響がでているようですが、少し過剰な反応過ぎやしないか、というのが正直な思いです。もちろん感染防止に努める事は大切ですが、インフルエンザは毎年のように流行する訳で、感染した場合の対処法をきっちり整備することが最も肝要だと思いますし、何故に今回これだけ報道と政府対応が敏感なのか理解に苦しみます。特に修学旅行をとりやめるだとか海外渡航はおろか国内出張も禁止する会社があるだとかの現象は、ナンセンスすぎていかにも日本人的なにわか危機管理の発露のようで何とも言えない気分になります。(感染された方には申し訳ない言動かもしれません。その節はご容赦下さい。）

さて、そんな世間的な関心は豚インフルに向いている状況ではございますが、私の音楽的モードはなかなか新譜には関心が向かない状況のようです。60年代後半音楽をさらさらっと発掘している一方で、ブログ復活からずっとパンク～ポストパンクあたりの時代に思いが止まったままになっております。その時代は今から丁度30年ほど前になる訳で、懐かしいという感覚の一方で、「こんなんだったっけ？」や「すごい！すごすぎる！」という再発見の喜びを享受するのに、まさに今が自分にとって旬な時期なのかな、という気がしています。そんなわけで、今回はまたパンクの時代にフォーカスをあてたいと＾＾。スティッフ・リトル・フィンガーズを取り上げたいと思います。

スティッフ・リトル・フィンガーズ（以下、ＳＬＦと略）はわりとロンドンパンクムーヴメントの中では知られた存在でしたので、豚もその存在と名前は知っておりました。実際にアルバムを聴いたのは実はもっと後年で、しかもきっかけが日本のロックバンドである「アナーキー」流れだったという、ちょっとトリッキーな経緯で聴くようになりました。アナーキーもリアルタイムではよく聴いていなかったのですが、前に記事にも書いた私にSIONを教えてくれた「Ｙちゃん」というお友達がアナーキーのファンでその影響でアルバムを借りて聴くようになり、その中で気になった「３・３・３」という曲が、実はＳＬＦの曲のカバーだったことから興味を持ったのが最初でした。

最初に聞いた時はちょっと驚きました。歪んだギターの三味線のようなカッティング、そして血管がぶちきれるんじゃないかと心配してしまう「がなり型」ボーカルのジェイク・バーンズの声が何より印象的でした。(がなり型ボーカルって好きなんです。アイアン・メイデンのボーカルのポール・ディアノもそのタイプで好きです。）サウンドは多分にクラッシュ・フォロワーというにふさわしく、骨太で直情的なサウンドを聞かせてくれます。これだけストレートでパワフルな熱いパンクなのにいまいち格下な扱いをされていた事が不思議なくらいに思えました。ギターのうなり方は同年代のパンクスの中でも群を抜く荒々しさでカッコイイと思います。

STIFF LITTLE FINGERS - Wasted life

「引火性物質」と名付けられたこのアルバムは通して聴くと、この時代のパンクのアルバムとしてはなかなかヴァラエティに富んでいるように思えます。全編荒々しく粗々しいムードに支配されつつも、「Barbed Wire Love」のようなドゥーワップのパロディーもあり（このあたりはNOFXやメロコアの連中に絶対影響していると思います。）デヴュー作でありながらパンクバンドとしては後発のため、演奏能力の磨き上げと幅広い音楽性を持たせないとシーンに参入しにくかったのかも知れませんが、結果として飽きさせないつくりになっていると思います。また、このアルバムはラフ・トレード・レーベルの記念すべき第1弾のレコードとして有名で、その事を意識してかせずか「Rough trade 」という曲を捧げております。

ＳＬＦは結成当初、ハイウェイ・スターというハードロックバンド(ベタベタですね・笑）だったそうです。クラッシュの音楽に出会い、その政治姿勢とサウンドに魅せられ、パンクバンドへ転身をしました。いわゆる典型的パンクフォロワーだった訳ですが、彼らが凡百のパンクバンドと違ったのは「主張したい事」が歴然とあったがゆえ、サウンドだけでなく歌詞世界において共感を得たところでしょう。彼らはアイルランドはベルファストの出身で、北アイルランド紛争への強い怒りと、不安と恐怖を常に抱える生活の状況への反発という明確なアティテュードが備わっていた事が大きく影響しています。この曲はそんな彼らのアイルランド人（＝Ulster）としてのアイデンティティと立ち位置を明確にした名曲です。

stiff little fingers-Alternative Ulster '79

硬派で激情型で高速でポップで政治的。明確なキャラクター付けとオリジナル性がありながらも、日本のみならず認知と評価があまり高くないのは残念です。しかしながら永遠のパンク・アンセムとしてこの「Alternative Ulster」と「Suspect Device」の2曲は輝いていると思います。それはピストルズのアナーキー・イン…やクラッシュのホワイト・ライオットのように歌われ語り継がれていってもおかしくないクオリティと力を持っていると断言したいです。

「クラッシュの影響下」という定冠詞のなせる業ではないのですが、ＳＬＦもレゲエに対してのアプローチをしています。この時代はレベル・ミュージックとしてのレゲエは当然レベル・ミュージックとしてのパンクと両立していた時期であり、クラッシュでなくても相互に影響し融合前夜という状況下にあった事は想像に難くありません。豚も尊敬するボブ・マーレーの曲「Johnny Was」をカバーしています。決して器用で美しくはないですが独自のパンキッシュなアレンジが私には心地よく感じられます。稀代のレベル・ミュージックに敬意を表しつつ、この曲で締めたいと思います。それでは、また。

Stiff Little Fingers - Johnny was (1979)

STIFF LITTLE FINGERS / INFLAMMABLE MATERIAL (197