豚袋でございます。

いやー、ホントに仕事ヤバイです。消費の冷え込みというのはここまでひどいのか、と嘆きたくなるほどの売れなさ加減です。バブル崩壊の時でもここまで酷くなかった。会社が潰れてしまいそう、マジでそんな感じです。こういう時在庫というリスクを負う業界はキツイですよね。まぁアパレルなんて所詮は水物ですので、そんなこと覚悟の上で仕事しなくてはと言い聞かせる昨今です＾＾；楽天家でないと務まりません。

さてさて、もういい加減ネタにもならなくなってきた「モノクロジャケこだわり」記事ですが、今一度お付き合いくださいませ。今回はヴェルベット・アンダーグラウンドのセカンド、「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」を取り上げたいと思います。ヴェルヴェッツをまじめに聴くようになったのは実はとっても遅くて、2000年を過ぎてから温故知新しました。従ってリアルからあるいはアナログ時代からきちんと聴いていらっしゃる諸先輩の方々の手前、お恥ずかしいのですが、稚拙な記事とご笑読いただけたらと思います。

で、ヴェルヴェッツは存在は勿論知っていて、伝説と数々のフォロワーやリスペクターを産出していることはロック好きであれば常識でありました。ファーストのバナナジャケのやつはアナログで聴きました。が、当時はその良さがまったくわからずすぐ手放し、2000年になるまで聴く機会を失ったわけですが、やっぱりあのバナナジャケットはもう一度聴かなくてはいかんだろう、という事で歴史書を手にとる感覚でファーストを聴いたのでした。

とても素晴らしいアルバムだと思いました。あのバンドのルーツはここにあったんだ的な聴き方の一方で、当時の時代背景がなければ生まれ得なかった「浮遊感」「前衛性」「サイケ、カラフル」に満ち溢れ、ルー・リードの独自の(正確にはディランの影響は大きいと思いますが）歌いまわしと不協和音的なジョン・ケイルのサウンドが作り出す不思議な世界に感嘆しました。歴史的名盤の名に違わぬマスター・ピースでありましょう。アンディ・ウォーホル絡み、バンド名、そして前衛性と歌姫ニコの起用による話題性、どれをとっても美味しい「ポップ・アート」であったのだと思います。

しかしながら当時のアメリカのマーケットにとっては早すぎるアートだったのでしょう。想像に難くありません。セールスの不振はもとより、アンディのプロデュースに対する不信から早くもバンドがアンディ、ニコと袂を分かったのは必然だったのでしょう。ウォーホルから離れて、リードとケイルは本来的にやりたかった、より衝動的な自らの音楽的カタルシスをむさぼるかのようにアルバムを作り上げました。しかもたったの4日で。それがこのセカンドアルバム、「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」です。このアルバムも豚にとってはすばらしく思えました。特に最近このところ良く聞いていて、今の気分的にはファーストよりもいいかも知れないと思っているところです。

The Velvet Underground - White Light/White Heat

一曲目のこの曲こそ、ファーストの流れを引き継ぐＲ＆Ｂ、ホンキートンキー的なナンバーでポップな導入ですが、この曲から後の曲は一言でいってハチャメチャな「なんでもあり」的カオス状況になっていきます。抑圧されることなく伸び伸びと、なおかつリードとケイルのお互いの個性と衝動のぶつかり合いとも言うべき、微妙に張り詰めたテンションが感じられる展開となっていきます。

The Velvet Underground - The Gift

まず、歌を解体する実験が行われました。バックのサウンドやメロディに歌を乗せていくという当たり前だった慣わしを壊しました。まじめくさった口調のケイルによる物語の朗読とノイジーなギターサウンドの掛け合わせは当時としてはかなりの前衛的な試みだったに違いありません。次のLady Godiva's Operationではリードの得意なやや叙情的旋律の歌に、歪んだギターと唐突な合いの手のようなケイルの掛け声がケンカをしかけます。続いてのHere She Comes Nowという曲で更に叙情性を強め、リフレインによる印象を強く残します。（この曲はニルヴァーナやギャラクシー500、R.E.M.、キャバレー・ボルテール等、そうそうたる人たちのお気に入りで、カヴァーされまくっているようです。）

そして何といっても圧巻なのはラスト17分にも及ぶ大作「Sister Ray」！とにかくドンドコ淡々とリズムを刻むモーリン・タッカーのドラム進行のなか、ノイジーなギターと投げやりに歌われるリードの声が延々と即興でバトルを繰り返すその様は、まさにド迫力の激しいエゴのぶつかり合いの様相を呈しています。まさに凄絶で圧巻！

the velvet underground - sister ray

ヴェルヴェッツを語る時、バナナジャケットのファーストは絶対はずせないマストアイテムです。しかしながらその前衛性と緊張感の高さ、そしてウォーホルによって纏められた抑圧に対する解放感において、このセカンドも相当な音楽性をもって讃えられてもいいアルバムであると思います。また、ジャケットは一見真っ黒のようですが、実はよくみるとドクロの刺青が隠されていて、これもなかなかのセンスだと思います。総合的にもこのアルバムがたいそう気に入ってしまいました。甲乙つけがたい名盤です。

このアルバムを最後にケイルは脱退、リードとのバトルに終止符がうたれました。
今回は最後に、シスター・レイの私の大好きなカバーを聞いて締めたいと思います。それでは、また。

JOY DIVISION - SISTER RAY (VELVET UNDERGROUND COVER)

VELVET UNDERGROUND / WHITE LIGHT/WHITE HEAT (196