私は、それからも暫くリビングにいた。


お酒を飲もうかと思ったが、楽しくない酒は飲まない主義なので、

止めて、ミルクティーを淹れて飲んだ。


ボーっと、TVを眺めていると、メールの着音が鳴った。

旦那さんからだった。


『やーちゃんへ。


さっきはごめんな。


俺としては、本当に良い誕生日にしたくて計画した事です。

でも、やーちゃんがその日は外に出たいのなら、その様にして下さい。


叔母ちゃんへは、俺から日にち変えて貰う様に言います。


お休みなさい。


それから、勝手ですが、叔母ちゃんには

昔の話はしないでおいて欲しいです。』


同じ屋根の下にいて、どうしてメールで伝えてくるのだろう。

ちゃんと、声で伝えれば良いのに。


私は、情けなくて返事を打つ気にもならなかった。


携帯を閉じると、また直ぐに着音が鳴った。


でもそのメールは、従妹のお姉ちゃんからだった。

(岡山の叔母の娘です。)


『弥生へ。


今度の日曜日、お母ちゃんを呼んでくれて有難う。

私も一緒に行きますね。


丁度、東京からマーが帰って来るので、

代わる代わる運転して行くね。

高速降りてからの詳しい経路、FAXしておいてね。


では、日曜日会えるの楽しみにしています。』


(マーとは、従妹の娘です。)


従妹のお姉ちゃんの娘のマーは、

小さい時から旦那さんに懐いている。

もう、逃れようが無いと、私は思った。


私は、そのメールに


『私も楽しみに待ってます。

気をつけて来てね。


地図は、明日お兄ちゃんに書いて貰って、FAXします。』


と、返信をした後、旦那さんに、


今度の日曜日は、叔母ちゃんの方を優先します。


とだけ、メールで伝えた。


本当に眠っているのか、そのメールに返信は無かった。


そしてヨウには、メールではなく、

明日ちゃんと声で報告しようと決めた。


ヨウが言ってくれた通り、私たちに大切なのは記念日では無く、

逢えると言う事実だけなのだから、その日が先に延びた分、

楽しみな時間も増えたと思えば良いんだ。


そう思えば腹も立たないと、自分に言い聞かせ、私は部屋に戻った。


階段の途中で、旦那さんのいびきが聞こえた。


私は、こんな中途半端な状態でも眠れる、

旦那さんの無神経さに腹が立つ反面、もうどうでも良いとも思った。


誕生日の私の1日を束縛出来ても、

私の心は、もう絶対に束縛は出来ないのだから。