15日の遠出デートの後、23日、27日、28日と逢う事が出来た。

私はその3回とも、ヨウに逢うと、旦那さんに告げて出掛けた。


帰りは夜中の2時~3時の間。

私の家の近くには、朝までやっている居酒屋さんや、

24時間営業の喫茶店が多くあったので、

そこで話をしていると、旦那さんには言っていた。


疑っていたのかいなかったのかは、分からない。

ただ旦那さんはその頃、付き合っていた20代の女の子の事で、

頭が一杯だったのだから・・・・。


実際、旦那さんの職場の後輩の子から、

「小田さん、仕事中もしょっちゅう携帯いじってて、

何か変なん違うかな?

いつか事故でもしたら大変だし。

会社にもいつか注意されるから、

奥さんからそれとなく言った方が良いと思う。」と、教えられた。


『注意などして聞く人なら、何度も直ぐばれる様な浮気はしないよ。』

と、私は心で思い、

「有難う。それとなく言っておくね。」

と、裏腹な言葉を口にした。


旦那さんと私。

同じベッドに眠りながら、指先すら当らない様にと、注意して眠りに着く。


どちらかがソファで眠ってばかりいると、同居の義母が不審がるので、

お互い細心の注意を払いながら、お互いの寝息を聞く位置で眠る。


私は背中を向け、ヨウと名付けた抱き枕を抱く。

旦那さんは、いつでも携帯が鳴ったら気が付く様にと、

マナーモードにした携帯をリストバンドに入れて眠る。


今考えても、滑稽な寝姿だったと思う。

(今は完璧に夫婦別室です。)


一番近くにいて、一番遠い人になってしまった旦那さんの背中に、

私は2度と腕を回すことは無かった。


ヨウとも、

『絶対旦那さんに足開いたら駄目だからね。』

『そう言うヨウこそ、奥さんに圧し掛かったりしたら、刺すからね。』

と、本気とも冗談とも付かない言葉を交し合う程、

私たちは、何より2人が一番・・・・になっていた。


私自身は、そんな事をヨウに言われるまでもなく、

ヨウ自身を受け入れた体で、別の人受け入れる事は出来なかった。

(旦那さんは既に私の中では、別の人になっていた。)


何より旦那さんとは、ヨウと知り合うもっと前から

男と女ではなくなっていた。

いつだったか、浮気を無かった事にする為に、

私を抱こうとした事があった。

私の問いに弁明もせずに力づくで・・・・。


その時に私は言った。


「他の女の体液にまみれた物を、私に差し出す事が出来るんやね。

嫌って言ってるのに、無理じいするなら、したらいい。

軽蔑するからね。」


キツイ言葉だと分かっていても、その時の私には

言わずにいられない言葉だった。


そしてその夜を境に、私は決して体を開く事は無くなっていた。

勿論旦那さん以外とそうなる事など、その頃は思ってもいなかったので、

私は、この年でもう女を終えるんだと思った。

S○Xは好きではなかったが、

やはり一抹の寂しさを感じた事を覚えている。


28日、何度もヨウに抱かれた体で家に戻ると、寝室で話し声が聞こえた。

電話での会話だった。

夜中の3時前に?誰と?と思いながら、私はそっとソファに腰を下ろした。


聞くつもりなど無かった。いや、出来れば聞きたくなかった。

でも、気持が高ぶっているのか、旦那さんの声は徐々に大きくなっていった。

『俺もお前の事、凄い好きやで。お休み。また明日な。』

と、電話を切る寸前の言葉が、私の所にまで飛んで来た。


私は、既に帰って来ている事を悟られない様、

バッグを持ち、そっとリビングを出た。

今更、もう一度玄関を開けて、外に出る訳には行かず、

そのままバスルームに行った。


出来る事なら、ヨウの匂いを体に残したまま眠りたかったのに・・・

と思いながら、今夜2度目のシャワーを浴びた。


温め目のシャワーを顔に受けながら、私は、旦那さんの声を反芻した。

俺もお前の事、凄い好きやで・・・か。

そんな言葉を聞いても、心は全く揺れない。

本当に私たちはもう終わっているんだな。と、思っていた。


それでも、私には既に男ではない人なのに、

他の人にはまだまだ男なんだな・・・と思うと、不思議な気分だった。


シャワーを終えリビングに戻ると、ドアの向こうの寝室から、

今度は寝息が忍び込んできていた。

私は、タオルケットを頭から被り、ソファーで眠りに着いた。


そして翌日29日、いつもなら5時には届く

ヨウからのおはようメールが来なかった。