その日のコンペは5組で回った。

いつも、女性の部では優勝に絡む私だったが、

その日のゴルフは散々だった。


優勝どころか、ハーフを回り終えた時、脱水症状になってしまっていた。

後半のハーフまでの1時間半を、私は休息に費やした。


出来れば途中で止めたかったが、そうもいかず、

ヘトヘトでその日を終えた。

コンペ後の表彰の席でビールを飲み干し、やっと少し生気を取り戻した。


本当は、「しんどいから帰りたい」と言いたかったが、

そんな事は出来る筈も無い。

昨日のことを咎められるのもイヤだったので、極力楽しい振りをした。


携帯はロッカーに入れたままなので、全くメールを打てていなかった。

それも気になってはいたが、何より今朝の私たちを見かけたと言うヨウの不安を思うと、心配で仕方なかった。


クラブハウスでの表彰の後、家の近くでまた皆で飲む。

それがいつものパターンなので、私だけ帰りますとは言えない。

いつも側に誰かがいて、メールは打てない。


帰りの車の中で、友人に、

「やーちゃん、昨日飲み過ぎたんか?えらい、成績悪かったやん。」

と言われた。

飲み過ぎ・・・の言葉に、私は助かったにひひと思っていた。


そうだ!飲み過ぎる事はいつもの事だ。

それを言い訳にすれば良いんだ。と、思った。


「うん。昨日友達と遅くまで飲んでて、

帰ったん記憶あんまり定かでないねん。」


「ゴルフの前やのに、気ぃつけんとあかんで。

それでなくても、貧血やのに・・・。」

と、別の友人が言った。


そうやって周りが言ってくれたお陰で、

旦那さんは言葉を挟めなくなっていた。

これで話は終わるな・・・と、思っていたら、


「そんなに酔ってたか?足取りしっかりしてたで・・・。」

旦那さんが突然言った。


眠っていた筈なのに、どうしてそんな事を?と思っていると、

「ちゃうわちゃうわ。あれ、おかんやったわ^^」と、言い直していた。


何だかとても危ない橋を渡っている様で、怖かった。


不倫をする。と言うのは、こんな事を言うんだな。

旦那さんは、こんなスリルを何年も、何十回も味わって来たんだ・・・・と、変に感心する自分が可笑しかった。


2次会のお店に着いて、やっと私は

その日初めてのメールが出来る環境にいた。

でも、何て打てば良いのか思いが纏まらなかった。

おはようから余りに時間が経ち過ぎていた。


また、ヨウからのメールが届いた。


弥生。もう、メールくれないの?

旦那さんに何か言われたの?

心配で心配で、仕事終わったけど、帰れないでいる。


弥生の家の近くのファミレスに車停めて、メール待ってるんだ。

明日もこっちで仕事だから、このままどこかに車停めて寝るよ。


メール出来る様になったら、送って。              洋