介護の仕事

 
  
 

介護の仕事は決して
大変な仕事だけではない
 

 
 
 
 
心豊かにしてくれる
素晴らしい仕事でもある
 

 
 
**   **  **  ** 

 
 
 
今朝の利用者さん Nさん
 
 

認知があり、
自分で着替えすることができない 
 
 

 
息子さんと一緒にいるが
彼は生まれつきの障害があり
 
 
 

身体が思うように動かないので
毎日ヘルパーを入れ
 
 
 
 
Kさんの着替えや
通院などで利用してくれている

 

 
毎朝リハビリパンツと
尿パッド、ズボンを
 
 
 
ベッドの桟を支えに
立ち上がってもらって
はき替えていくんだけど
 
 
 

 
Kさんは
認知が進み
 
 

最近は
どんなに声かけをしても
立ち上がってくれなくなっている

  


今朝も
いろんな声を使い分けて
 
 
 

Kさんを誘導するが
なかなか腰が上がってこない
 
 

 
そのそばで
歯がゆい思いをしながら
見ている息子さん
 
 


 
ヘルパーが
何を言っても
 
 

テコでも動かない
自分の母を
 
  
 

「あかんな、あかんな。。」
 
 

って言いながら見ている
 
 
 
それでも動かないときは

 


不自由な身体を
上手に動かして
 
 
わたしたちを
助けてくれたりする
 


今日も、動かないKさんを見て
わたしに
  
 

「ちょっと、あっちにいってて」
 
 
と言ってKさんを
ベッドの柵のところに連れて行き
 

自らもベッドを支えに
頑張って立ち上がり
 
 

母を何とかして立たそうと
声を張り上げる



「かーちゃん!かーちゃん!」
 
  
 

掛け声もより強く、強く!
 



「おい!おい!かーちゃん!おい!」
  
 

 
 
外から聞いたら
ケンカしているのか?
 
 

と思えるくらいの大声だ
 
 
 
でも
わたしには
愛の叫びにしか聞こえない
 
 
 
 
たくさんの愛が
ぶわっ!ぶわっとこみ上げる
 
 
 
 
 
息子さんは
お母さんを愛してやまないのだ
 
 
 
大切な、大切なお母さん♡

 
 
 
 
そして彼は
わたしたちヘルパーにも
すまないという思いが
たくさん、たくさんある
 
 
  
 

 
それらの思いが
声に伝わって
たまらなく、たまらなく泣けてくる
 
 
 
 
 
今日は
息子さんのチカラでも
動かなかったKさん
 
 
 
 
わたしは
彼の気持ちを伝えたくて
Kさんに大きな声を
張り上げてこう言った
 
 
 
 
「これ!誰のために息子さんは
こんなに一生懸命しとると思っとるん。
大好きなお母さんのためやんか。
はい!立って!パンツ替えてさっぱりしよっ。」
 
 
 
その声が、心が届いたのか
利用者さんは、障子の桟をつたいながら
スッと立ち上がってくれた
 
 
 
 
そして、着替えている間
一度も座ってしまうことなく
しっかりと立ってくれていた
 
 
 
 
その姿を見ながら
 
 
 
「ありがとう。ありがとう。
ほんまに、ごめんな。ありがとう。」




と息子さんが言ってくれている
 
 
 
 
わたしは


「なんにもやで。
ほんまに、なんにも。

息子さんが一生懸命なのがわかるで
わたしは、あなたが納得するやり方で
お母さんを着替えさせてあげたいだけなんやで」
 
 
 
そういうと
息子さんが、また

「ありがとう、ごめんな。」


と手を合わせて言ってくれた
 
 
  

 
わたしは
息子さんの言葉を
笑顔でありがたく受け取り



 

Kさんに
 
 
「よく頑張ったねー、すんなり
着替えさせてくれたもんで、楽やったよー
ほんまにありがとう。」
 
 
 
とハグしながら言った
 
 
 

 
「ありがとねー。ありがとありがと。」
 
 
 

とKさんがニッコリ微笑んで
わたしに言ってくれたのを聞いた時
 
  
 

 
溢れていた涙が
ポロポロ頬を伝って流れてきた
 
 
 

息子さんも

「あかん、泣けてきた、泣けてきた」




と言って
一緒に笑いながらおいおい泣いた

 
 

「朝から二人で泣いたったなー」
 
 
 
「頑張っとるもんなー」
 
 
 
って言いながら
ハンカチで涙をふきふき、泣いた



 
 
介護人として、
利用者さんの家に行く時は
 
  
 

 
その家族の思いを
120%汲めるように心がける

 
 
  

 
利用者さんのことを
誰よりもわかっているのは
ご家族の方たちだから
 
 
 
 
いつも一緒にいて
小さな変化をも見逃さずに
  
  


 
何が一番いいのかを
常に考えている
 
  

 
ご家族の方たちが
いてくれている限り
 
 
  
 

わたしの今までの知識なんぞ
持っていかなくてもいい
 
  
 

 
わたしはただ
今まで培ってきた介護のスキルを
臨機応変に使うだけで
 
  
 
 

 
その人に一番いいやり方は
ご家族の方から聞けばいい
 
 
 
  
 
 

わたしは介護の専門だからとか
 
 
わたしは看護師だからとか
 
  
 

 
 
と言って知識を
はべらかす必要など全くない
 
 
 
 
 
 
ただその利用者さんに
寄り添っている人の声に
耳を傾けるだけでいい



 
 


ご家族の中に愛がある限り
 
 
 
 
その思いは必ず伝わる
 
 
 
 
 
 
その思いをいつまでも
信じていられる

人間で
わたしはいたいと思っている
 
 
 
 

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