ko様のリクエストから書き始めた、ACT203の続き妄想でございます。
こちらより本誌ネタバレが含まれておりますので、コミック派、ネタバレNGの方はお引き返し下さい。
ピコの希望的観測により書いた勝手なお話ですが、どうぞお楽しみ下さい。
恋する気持ち 4 ~ACT203続き妄想~
「21時55分か・・・・そろそろ彼女は、こちらに来てる頃かな…」
テレビ局の地下駐車場に到着した蓮は、空いてるスペースを見つけ、ハンドルを切りながら、さっきかかってきたキョーコからの電話を思い出していた。
さっきの電話は、マジで一瞬焦った…
やっと送っていく事を了承させたのに、やっぱり遠慮しますとか言って、断られるのかと思ってしまった。
全く俺は、彼女の些細な行動にも一喜一憂して、何やってんだ…
自分の情けなさに呆れつつ、どこかで彼女に振り回される自分を冷静に観察しているもう一人の自分もいて、どんな感情も演技の糧にしようとしている自分の貪欲さには、笑ってしまう。
『ダーク・ムーン』で嘉月の気持ちを掴むために、この気持ちを解放し育ててみようと思ったあの日から、どんどん大きくなってきた気持ちに、彼女はたくさんの感情と安らぎを与えてくれた。
ラブミー部員の彼女に、それ以上の感情を求める事は無謀だとわかっていても、つい期待してしまう愚かな自分。
このプレゼントも、少しでも彼女の心に響いてくれたらと邪な願いを込め、
彼女が断れないような理由を頭に巡らせていく。
サイドブレーキを引き、車を止めると、上着の内ポケットから携帯を取り出し、リダイヤルボタンを押した。
最近の俺の携帯の発信ボタンは、社さんと最上さんの名前ばかり。
並ぶ彼女の名前を見るだけでも、顔が緩みそうになる。
早く君の元気な声を聞かせて
お昼間みたいな暗い表情ではなく
セツとは違う、最上さんらしい、愛くるしい笑顔を見せてほしい
しかし、コール音が何度鳴っても、彼女はなかなか出てこなかった。
どうしたんだろう…
移動中で気づかないんだろうか?
そう言えば、昔、まだ携帯に慣れていなかった頃は、出るのが遅かったな…
ふふふっ…
蓮は、以前テレビ局で見かけた時の、キョーコのおかしな様子を思い出し、ふと笑みが零れ出た。
そしてやっと繋がったキョーコからの歯切れの悪い返事に、さっきまでの温かい気持ちは吹っ飛び、何かあったのかと訝しみ、受話器の向こうの物音に聞き耳を立ててみる。
電話を切ろうとする彼女の声に、違う声が混じった。
「お前、帰るんじゃなかったのか?」
奴だ・・・・どうして、奴がそこにいるんだ?
また、あのバレンタインデーのように、あいつに捕まっているのか?
様子を窺うように、もう一度彼女の名前を呼べば、何もないと必死で謝る彼女。
確かにおかしい。
これは、ここで待つより、今すぐ彼女の元に駆け付けた方がいいのだろうか?
迷っていると、彼女のおかしな悲鳴と共に、また誰かが来たようだ。
もう考える余裕もなく、車のキーを抜き、携帯を耳に当てたまま、外へと歩き出す。
多分、ここからそんなに遠くない所に、最上さんはいる筈だ。
電話で、彼女がいる場所を聞いても、何も答えず黙り込むばかり。
後ろからは、二人の男の話し声が騒がしく聞こえてくる。
また、あの日の再来か…
今度こそ、彼女が何かされる前に、奴らから引き離さないと。
蓮は、彼女を気遣う事すらできずに、冷たく言い放った。
『すぐに行くから』
彼女がその後何か言ってたが、気に掛ける余裕もなく携帯を切って、先を急いだ。
思ったより近くまで来ていた彼女はすぐに見つかり、予想通り、奴等ともめていた。
背後から彼女の側まで近寄ると、あんなに恐れていたストーカー野郎の方に手を伸ばしているではないか。
イラつく感情を抑えきれないまま、声をかけると、彼女は引き攣った顔のまま不破の方へと後づさっていった。
しまった・・・・
決して彼女を怖がらせるつもりはなかったのに…
焦るあまり、イラつく気持ちを抑えきれないまま、彼女にそのままの感情をぶつけてしまった。
蓮は咄嗟に荒れる感情を抑え込み、極力普通の素振りで、視線にも気を配り
キョーコの方に笑いかけた。
「最上さん、すぐ近くにいたんだね。会えてよかったよ。」
「は…はい~~」
凄い顔で固まってるな…
また不破と会ってたって、責められるとか思ってるのかな。
まっ、俺には前科があるし、奴の声を聞いて、ここまで駆けつけて来たんだから、彼女が恐れるのも仕方ないか…
どうする?
このまま、話を続けるか?それとも話題を変えようか?
「お昼に会った時より、荷物が増えてるね。その大きな紙袋…もしかして誰かから、お返しを貰ったの?」
「えっ?」
いきなり予想とは違う事を聞かれて、キョーコはビックリしたが、当初感じた蓮の怒りの波動も感じられなくなっていたし、怒ってないのなら、逃げる必要もない。
ショータローの傍からゆっくりと離れ、蓮の方へと近寄って行った。
蓮もキョーコの方へと歩いていく。
そして、袋の中身を見せ、嬉しそうにお返しを貰った時の事を、蓮に話し始めた。
「へぇ~たくさんお返しを貰えたんだ。よかったね。」
蓮が本当に嬉しそうに言ってくれたので、キョーコも頬を染め、目尻を下げて照れた笑いを浮かべて頷いた。
「こんなの初めてだったし、大したものを渡してないのに、こんなに頂いて、ちょっと申し訳ない気もしてるんです…」
「そっか…まぁいちいち気にしていたら、この世界ではやっていけないし、ありがたく頂いたらどうだい。但し、明らかに度のすぎるお返しを貰ったら、俺に相談するんだよ。」
ポンポンと頭を叩くと、キョーコも嬉しそうに蓮を見上げた。
「はい!ありがとうございます。」
和やかな雰囲気を醸し出し、甘ったるい空気を作り出している二人に、さっきまでは食い殺されそうな殺気に怯えて、固まっていた尚とレイノも段々力が抜けてゆき、馬鹿らしくなってきた。
「じゃあ…さっき貰おうとしてたのは、彼からのお返しって訳?」
コクンと頷くキョーコを確認してから振り返ると、それはもうとびっきり綺麗な似非紳士の笑顔を浮かべて、レイノの方へと蓮は近づいていった。
「弱みを握って無理やり作らせたチョコに、わざわざお返しを持ってきてくれるなんて、君も酔狂な人だね。彼女に何かあっては困るので、代りに俺が、これを貰っておくよ。」
顔は笑っているが、冷たく鋭利な眼差しで有無を言わせない態度に、レイノはおとなしく袋を差し出した。
受け取る際に触れた手から、一瞬電流が走り、彼の記憶の断片がレイノの脳裏に再現される。
しかしそれは、禍々しいものではなく、暖かくも甘い仄かな恋心だった。
二人で互いに膝を突き合わせ、ペンダントを持ったキョーコの両手を握りしめ優しく微笑む蓮の顔、真っ黒な髪に死神のような風合いで縋る様にピンクの髪の女を抱きしめる男の姿、ピンクの髪の女に馬乗りされ額にキスをされている姿、風貌は違っていたが、どれも目の前にいる人物、敦賀蓮だった。
こいつらはいつの間に・・・・そんな仲になっていたんだ。
それに身の毛もよだつほど恐ろしかった殺気も、
以前感じた時より、少し薄らいでいる気がする。
そういえば、今日のキョーコからは、近くに不破がいてると言うのにいつもの怨霊が出てきていない。
最近、なかなかキョーコを見つけることができなくなってきた訳は、こいうことだったのか…
「つまらん・・・お前、すっかりその辺の女共と同じになったんだな。妖しくも荘厳な負のオーラが全く感じられない。ふぅ~~~~っ・・・・・帰る。」
レイノは、つまらなさそうな表情を浮かべて、さっき来た道をさっさと戻って行った。
「一体…なんだったのよ・・・・この前と言い、今回と言い、人の事を散々コケにして、結局何がしたかったのかしら…」
「この前?最上さん、俺が聞いている以外にも何かされたの?」
心配そうに顔を覗き込んでくる蓮に、キョーコは手を横に振って、大したことではないと説明をしていた。
「おいキョーコ、さっきから、何イチャ…いや魂すすってんだぁ!」
「はぁ?何それっ、意味わかんない!訳分らない事で、因縁つけないでくれる。」
振り返り尚を睨み付けると、さっきまでは抑え込んでいた怨キョ達が、キョーコと同じ怒りの形相で、背後からひゅ~と3体、顔を現わしてきた。
「最上さん、遅くなるから今日はもう帰ろう。昨日もだいぶ遅くなっちゃったし、毎日遅いと家の人が心配するだろ。」
蓮の言葉に、顔を出していた怨キョ達はすっといなくなり、キョーコも表情を元の笑顔に戻して、蓮の方へと向き直った。
「はい、そうですね。こんな訳のわからない奴なんて放っといて、早く帰りましょう。」
蓮はキョーコの右腕を持つとくるりと身体を反転させ、自分の方に抱き寄せると腰に手を添え、にこやかに尚の方に視線を向ける。
「君もそろそろ移動したらどうだい。その袋を誰かに渡す為に、ここへ来たんだろう。君は彼女からチョコも貰ってないし、これ以上彼女には用がない筈だ。俺達も急いでるので、これで失礼するよ。」
なんなんだ…こいつ…
まるで俺だけ、部外者みたいな言い方しやがって…
それに、軽井沢の時と同じカップル抱きなんかしやがって、
暗に俺との違いを見せつけてるつもりか。
尚は、蓮の態度にムカッとして何か言い返そうと思ったが、この前自分にキョーコが断言したことを思い出し、腰を抱かれているキョーコの方に視線を移した。
しかし、以前とは明らかに違うキョーコの様子に愕然となった。
あいつを見つめるキョーコの顔を、俺は知っている。
ずっと俺の為にだけ向けられていた表情・・・・と同じ
う…そ・・・・だろ…
どうして恋する乙女のような表情で、頬を染めて、アイツの顔を嬉しそうに見ているんだ!
お前は、俺に言ったじゃねぇか
『敦賀さんだけは、有り得ない』って…
あれから、数日しかたってないぞ。
こんな短い期間に、お前ら二人に一体…何があったって言うんだ。
尚は動揺する気持ちを抑えきれないまま、絞り出すように呟いた。
「・・・・落とし前…お前、出来なかった時に言った台詞…覚えてるよな…」
「それが、何だっていうのよ!」
「今のお前の顔、自分でわかってないのか!お前、完全に負けてるぞ。
ちゃんと約束は果たして貰うからな!!」
「不破君、彼女が君と何を約束したのかは知らないが、君はわかってないようだね。彼女は女優だ。自分を隠し、本音を悟らせないのが一流の役者だ。女優の演技に騙される、君の方が愚かなんだよ。」
呆然と立ちつくしている尚を残して、蓮はキョーコを連れて悠然と駐車場の方へと姿を消していった。
ラストの連のセリフ!
これを言わせたかったんですヾ(@^▽^@)ノ
本誌でキョーコちゃんが尚に約束させられていたけど、今の本誌の素敵展開を考えると、そんなに大した約束でもなく、蓮にさらりと否定され終わってしまう気がしたもので…
ピコの勝手な妄想を文章にしてみました(〃∇〃)
次回からの展開は、ko様のリクエスト展開で頑張ってみます!(←元が表現力のない奴なので、大したお話は書けません。期待はしないで下さいm(_ _ )m)
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