*Forever and ever* りかさんのブログ開設半年を祝う
りかさんとピコのコラボリレー


【コラボ名】 PIKA*Chu

【リレータイトル】 秘めやかな想い


PIKA*Chuコラボリレー第2章最終話です!


まだお話を読んでいない方は、こちらの案内↓よりどうぞ。
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秘めやかな想い*miss you* 6



「蓮の事が好きなのか?」


いきなりきた直球に、キョーコはただ驚いて固まってしまった。

自分では蓮への想いをずっと隠してきたつもりだったのに、まだ知り合って間もない矢沢さんにまで蓮への恋心を見透かされたキョーコは酷く落ち込んでしまった。

この追い詰められた想いが、演技すらもまともに出来なくなってしまい、『女優失格だ。』と言われた気がしたからだ。


この前だって、皆の前で知らずと泣いてしまったし…


何をやっているんだろう…私…


馬鹿女には2度とならないと自分に誓ったくせに、ショータローの時より愚かになってる気がする。

しっかりしないと!

このままでは、自分を作るどころか、今の自分を保つ事すら怪しくなる。


矢沢の質問に「違います!」と強く否定する為、口を開いたが言葉は出なかった。


キョーコは自分を守る為、今まで周囲の人間に捨てられないように尽くしてきたが、自分を守りたいと言ってくれた人は矢沢が初めてだった。


そんな貴重な人に、嘘は言えなかったからだ。


返事をする代りに、キョーコは黙って頷いた。


矢沢はそんなキョーコを見て、安堵の溜息を洩らした。
ラブミー部であるこの子が、そんな簡単に自分の恋愛感情を認めるとは思っていなかったので、素直に頷いてくれたキョーコが、自分の言葉を信じてくれた証のようで、さっきまでのイラついた感情は消え、愛おしくさえ感じ始めていた。


「アイツに・・・告白とかするつもりはないのか?」


何の気なしに聞いた言葉に、キョーコは瞳を見開き、またみるみるすごい形相となって睨み付けてきた。


「どうして恋からいきなり告白に飛ぶんですか!!そんな戯言、言えるわけないでしょ。私は敦賀さんに純潔を誓った身なんです。好きになってしまったなんて…申し訳なくて…口が裂けても言えません!それに敦賀さんには・・・・他に好きな人がいるんです。」


どんどん萎んでゆく語尾に、キョーコの心を蝕んでいた真の原因がやっとわかってきた。
だがしかし、あいつは今までもその辺は徹底していて、浮いた噂なんて一つもなかった。

人当たりも良く、誰にも分け隔てない優しさで接していたが、それ以上は踏み込ませない。

見ているこっちが不気味に感じるくらい、徹底していた。


誰かを特別扱いしてる姿なんて・・・・


キョーコを担当するまでは見たこともなかった。


なのになぜ、キョーコはそう思っているんだ?


「京子の他にか?そんな噂聞いたことないな・・・まっ、昔からよくモテていたし人当たりもよかったが、必要以上には近寄らせない雰囲気を漂わせていたし、女のあしらいも上手かった。だから全く色恋の噂はなかったぞ。本当に、他に好きな子なんているのか?一体どこで聞いたんだ。」


「それは・・・・・・・・」


また口籠るキョーコに、もう一度聞こうと口を開きかけた時、信号が変わったので、仕方なく前を向き、車を発進させた。

いくつかの信号を通り過ぎた頃、椹主任が言っていたあの言葉をふと思い出した。


「お前ってさぁ…椹主任に愛について聞かれた時に、『破滅と絶望の序曲です』と答えたそうだな。今でもそう思ってるのか?」


話が途切れたと安心していたキョーコは、いきなりの過去の自分の話に変わって、また混乱し始めた。


『破滅と絶望』


確かにそうかもしれない・・・


でも敦賀さんと過ごした日々を、そんな言葉で否定したくはない。


確かに恋は苦しいし、尽くすだけの馬鹿女には戻りたくはないと今でも思っているけど、敦賀さんとの時間は嫌じゃなかった。

始まりはショータローに合わせて意味もなく嫌いと言っていたけど、ショータローに捨てられて復讐の為だけに入った芸能界で敦賀さんと出会い、どんどん気持ちが変わっていった。


初めは『復讐の為』という動機のせいで嫌われていたから、私も必要以上には近寄らなかった。

嫌われてる人を好きになる程、お人好しじゃなかったしね。

でもあの人の演技に対する情熱と真摯な態度を知り、役者として憧れから尊敬へと気持ちは変わり、敦賀さんに会えるといつも心が弾んでいた。


私に演技する楽しさを教えてくれた人

私をいつも正しい方向へと導いてくれる人


ずっと素晴らしい演技者として追っていたつもりだったのに、いつしかその眼に違う色が混じってきた。

それから段々会うのが怖くなり、それでも会えると嬉しくて、ときめく気持ちを免疫がないからだと自分に言い聞かせて、自分の気持ちから目を背けてきた。


よくできましたと褒めてもらえるのが嬉しくて、あの大きな手の温かみを失いたくなくて、自分の気持ちが膨れ上がるのを必死で抑えていたのに・・・結局溢れ出した想いを止められなかった。


今でも決して暴かれたくはないけど、あの想いは『破滅や絶望の序曲』なんかじゃない。

どの思い出も私にとっては、大切な…大切な…宝物。


でも、そんな事・・・・矢沢さんにだって言えない。


「わかりません・・・」


否定することも認めることもできず、また逃げてしまった。

しかし矢沢は、キョーコの返事なんて聞いていなかったかのように、ぽつぽつと言葉を続けていく。


「俺は恋する女の子って好きだな。恋は、女の子をどんどん綺麗にしてくれる魔法だね。だって皆、すっごく可愛くなるだろ。お前は自分が変貌するのは、コスメマジックやプリンセスローザ様のおかげと思っているようだが、それは違う。全部キョーコが内から発するものだ。恋が一段とお前を輝かせてくれたんじゃないのか?」


「な・・何ですかそれは!私が恋に浮かれた馬鹿女だとでも言いたいんですか!」


「馬鹿女って・・・・お前なぁ…はぁ~っ
どうして、そんな話になるんだ・・・・・ひねくれるのもいい加減にしろ!」


「だって…今は自分にとっても大事な時で、恋なんかにうつつを抜かしている時ではありません。」


「そうかなぁ・・・おれは違うと思うよ。
役者ってさぁ…いろんな役を演じるだろう?自分が経験した事がすべてではないし、時にはイマジネーションを働かせて想像し、役作りをしないといけない時もある。だけどなぁ…できれば自分で経験した方がリアリティも出るし、より良い演技ができると俺は思うけど、お前はどう思う?」


「私もその通りだと思います。」


「なら、恋は基本だろう。多少なりとも役柄には関わってくる役作りの定番だ。愛を知らない人間は、この世界じゃダメになる。うちの社長の持論だな。」


「はい・・・・だから私は、失った感情を取り戻すためにラブミー部に入りました。」


「ああ~社長から聞いた。なのになぜその感情から逃げる。お前は取り戻したいんだろ?どうせなら馬鹿がつくぐらい、思いっきり恋してみろよ!
自分の想いから逃げていたら、愛する気持ちは取り戻せないぞ。誰だって傷つくのは怖いし、嫌われたくないのは同じだ。しかしお前は女優だ。嬉しい気持ちも悲しい気持ちも全部、自分の経験になって演技に活かせるんだぞ!こんなチャンスをなぜお前は、誤魔化して逃げようとするんだ。勇気をもって立ち向かってみろ。」


「だから告白して、自爆しろと言うんですか?」


「はぁぁ~~~~、まだフラれるとは決まってないだろ。」


「決まってます!わかってるんです・・・敦賀さんはこんな毒感情をぶつけた私に…きっと失望します…やっと・・・少しだけ認めて貰ったのに…また突き放されるなんて…いやっ・・・・・辛すぎますできない・・・私にはできません・・・・・・・」


「はいっ?・・・・・お前なぁ・・・・どうして、そこまで悲観的になってしまうんだ。普通告白されて、失望したなんて、有り得ないだろ!
それに百歩譲って、お前の言うとおりの反応をしたとしても、絶対にあいつはお前を突き放したりしない。お前が必死で振り絞った勇気を無下にする様なひどい奴なのか?お前が慕っている蓮は、そんな冷たい男じゃないだろ。」


「そ・・・そうですよねぇ…私なんかが告白しても、敦賀さんは優しいから、例え心ではそう思っても、きっと傷つかないようにうまく振ってくれるでしょうね・・・でも・・・こんな馬鹿げた事にお忙しい敦賀さんのお時間をとらせるのは、申し訳ないです。自分の問題ですから、何とか自分で解決してみせます・・・・」


「馬鹿か、お前!一人で解決できる問題じゃないだろ。それに私なんかなんて自分を卑下した言い方はするな!俺はお前の才能に惚れて、これから俺の人生かけて売り出そうとしてやってるのに、本人がそんな自信のない考えでどうするんだ!

しゃんとしろ!もっと自分に自信を持て!」


「すみません・・・・」


「まっ、もしもフラれたら、俺がこの胸で抱きしめて慰めてやるよwww」


「それは遠慮します。何人の女性を慰めてきたかもわからないような不埒な胸に抱きしめられたら、逆に呪われそうです。」


「誰にだよ!俺は遊んでるけど、恨まれたことは一度もないぞ!別れても、みんな仲のいい友人さw
まっ、確かによくこの胸は貸すけどねwww 仕方ない!
なら、フラれた時は、その痛みも忘れるくらい、でっかい仕事をとって来てやるよ。」


「本当ですか!」


「ああ~だから、お前もいつまでも過ぎてしまった過去に縛られていないで、しっかり前を見て歩け。未来を作るのはお前自身なんだ。」


「はい・・・・・・」


矢沢さんの言う事はもっともだと思う。


誤魔化してばかりいないで、事実をしっかり受け止めないといけないんだ・・・

自分の気持ちに踏ん切りをつける為にも、告白して振って貰うのもいいかもしれない。

フラれて凹んでも、また立ち上がればいいだけだから。

敦賀さんはショータローとは違う。

あの時みたいにまた憎しみに駆られることはない。

前を向かないと


でも--------


敦賀さんはさっき、どうしてあんなに辛そうな顔で聞いてきたんだろう。

私が誰に抱かれたいかなんて、敦賀さんには何の関係もないでしょう…

純潔を誓ったのに、あんな浮ついたこと言っちゃったから、怒ったんですか?

でもだからといって、私のようなお子ちゃまに、キスしなくてもいいでしょ?


私なんて、遊びの相手にもならないんだから・・・・


遊びじゃないなら・・・・


・・・・・・本気?


嘘っ!


そんな都合のいい話はない。


期待と不安が入り混じった中
キョーコは、蓮の考えていることを知りたいと思い始めていた。


今までは、捨てられるのが怖くて、相手をまともに見ようともしないで、尽くす事で縋りついていた。

それが愛だと信じていた。


でもそれは間違いで、尽くさなくたって愛してくれる人はいると、

ここに来て私はたくさんの人に教えて貰った。


ねぇ…敦賀さん


貴方が好きなキョーコちゃんってどんな人なんですか?


私じゃあ駄目ですか?


私が貴方に告白したら、貴方はどんな顔をするのだろう…


目を瞑ると、彼の穏やかな笑顔がどんどん曇ってゆき

「ごめんね」と言って、振り向きもしないで去って行く敦賀さんが、

段々私を置いて去って行った母の背中に重なって、胸が締め付けられた。


結局私は、欲しいものは何も手に入らない運命なんだ。


伝えないと前には進めないのかもしれないけど、やっぱり怖い。


このまま逃げ出せたら、どんなに楽だろう・・・


でも・・・


一度知ってしまった温もりが、麻薬のように私の心を侵していく。


唇に…耳に…頬に…首筋に…


抱きしめられた感触が今もしっかりと身体に刻み込まれ、また求めてしまいそうになる。


敦賀さんに触れてほしい


あの人を一瞬でいいから、独り占めしてみたい


誰かの身代わりでもいい

遊びでも構わない


私を愛してくれなくてもいいから


敦賀さんがただ…


欲しい---------


キョーコの悲壮な決意は、二人の間に新たなすれ違いを生んでしまった。



【おわり】


次回3章は、6/24(月) 23時

*Forever and ever* りかさん宅で公開予定です。


まだまだ続きますので、どうぞお楽しみに。



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