セカンド・ラブ 29-3

 -dreams come true-



キョーコは、クオンの温もりを背中に感じながら、ぼんやりと目の前に広がる夜景を楽しんでいた。


「ねえ、クオン----さっきの話だけど----」


「うん?何のこと?」


「さっき、レオンと話してたあれ-----

もしかして、もう私の新しい映画を----見たとかする?」


前にまわされた手をぎゅっと握り、恥ずかしそうに俯いている。


「うん----実は、もう見せてもらった。LAでプレス向けの試写会があって、その時に頼み込んで潜り込ませてもらったんだ。」


「///////」


真っ赤になって、何も言えないキョーコの髪を何度も撫でながら、頭の上に自分の顎をのせる。


「本当のことを言うと、あんまりあれはクオン・ヒズリとしては、嬉しくなかった・・・

自分の恋人の素肌が、俺以外の不特定多数の男達にみられるなんて、やっぱり面白くない。

だけど、同じ役者としては、すごく良かった。よく頑張ったね、キョーコ。」


「本当に!」


振り返り、クオンの顔を見つめると、苦笑いした彼がキョーコの頬に触れてきた。


「とても、よかったよ。特に、ショーの後、楽屋で暴れるシーンは圧巻だった。

まさかキョーコがあれほどまで感情を表に出して、ヒステリックになれるとは思ってなかったので、驚いたよ。君は、昔から、自分を抑えつけていたからね。」


「ふふふ・・・ありがとう、クオン。

あれはその前からずっと、監督にしごかれてたから、自分の演技というより、監督に仕向けられた所もあるの。それに、あそこまではっきり自分を曝け出せたのは、やっぱり・・・パパと兄さんのおかげかしら。

あの二人は、家族の愛情を知らなかった私にたくさんの愛情を与えてくれた。

そして私のこれからの事も心配してくれて、自分を表に出して、自己主張する事を教えてくれたの。

そのために、二人とも随分私を甘やかしてくれたわ。」


「そうなんだ・・・多分キョーコには、それが一番必要な事だったんだろうね。」


「そうかもしれない・・・でも今、そのおかげで苦労しているけどね。」


ぽすっとクオンの胸に頭を預けて、抱きついた。


「それは、贅沢な悩みだねww

でも、これからは気を付けておいてほしい。スクリーンの中では、俺も我慢するけど、それ以外の所でキョーコの素肌を他の男が見るのは、我慢できないからね。」


「クオンったらww 独占欲強すぎ!」


「そんな我儘な俺は嫌い?」


キョーコは、首を振り、潤んだ瞳で彼の胸の中で顔をあげクオンと視線を絡ませた。


「大好きですよ・・・そんな子供っぽい貴方も。」


クオンはキョーコをぎゅっと抱きしめて、彼女の頭に何度もキスの雨を降らせ、

ぽつっと呟いた。


「ああ~早く、この仕事が終わらないかな---

キョーコが欲しい。キョーコのすべてを自分のものにして、キョーコの体の隅々にまで俺を刻み付けたい。」


「///クオン・・・何だか言い方が、破廉恥です//」


「いいんだよw破廉恥でも、何でも!俺はキョーコを早く抱きたいんだ。」


「////-------・・・これ・・・・・

ばれたら、兄さん---なんて言うんだろう?許してくれるかな?」


「兄さん?チャック・ウィルソンのこと?」


「うん・・・兄さんは、私が・・・あのお・・・ロストバージンした時には・・・赤飯で祝ってやるとか言って、からかうくせに、私に近づく男の人をバサバサ切り倒して、お前に似合う男は俺が見つけてやる!とか、馬鹿な事を言ってるの・・・

無茶苦茶でしょう?パパより厳しいんだから-----」


「それは、強敵だな!なら彼のお眼鏡にかなうよう、せいぜい頑張るよ。他の男を寄せ付けないのは、俺にとっても大助かりだ。相変らず君は、無防備だからね。」


キョーコは廻されていた久遠の腕を、歯形がつかないように軽く噛んだ。


「えっ!?」


「そんなことないもん!少しは、気づけるようになったもん!ちゃんと男の人のお誘いの断り方だって覚えたんだから!」


むくれて見上げる彼女がやけに素直で可愛くて、本当にこの子はアメリカで大事にされてきたんだとクオンはしみじみ実感した。


まさか噛まれるとは思っていなかったけど---

彼女になら歯形がつくまで、強く噛んで彼女の印を刻み付けて欲しいと思うのは、俺も相当いかれているのだろうか?


「この撮影が終わったら、休みをとって、どこか旅行にでも行こうか?」


「うわあ~、本当ですか?嬉しい!

でも・・・クオンは、忙しい人なのに、そんなに何日もお休みなんてとれないでしょう?無理してくれなくてもいいですよ。私は、クオンの側にいるだけで、十分幸せですから。」


「心配しなくても大丈夫だよ。

今回は、この映画の撮影のためにスケジュールも余裕を見て抑えてるから、多分クランクアップ後に多少のオフは取れそうなんだ。

だから、早めに社さんから、その辺連絡してもらうよ。キョーコも水沢さんに一度、調整を頼んでみて。」


「はい!!ふふふっ・・・楽しみです。」


「俺もだよ・・・どこに行こうか?やっぱり、キョーコはお城がいい?

それとも南の島かどこかでゆっくりした方がいいかな?」


「ボルドーの古城にも一度行ってみたいけど・・・人がたくさんいる場所は----

ちょっとまだ抵抗があります・・・」


「なら、南の島がいいかな?

プライベートビーチでプライバシーも守られる場所がいいね。」


「満点の星空の下で、海辺のお散歩---

う~~ん 考えただけでも、ロマンチックですww」


両手を組んで、またメルヘンの世界へと旅立っていったお姫様の唇にキスを落として、もう一度強く抱きしめた。


「またしばらく会えない日が続くから、次会える時までの分、今もう少しだけ・・・

キョーコをチャージさせてね。」


「うん・・・私も・・・・・クオンを充電させて下さい。」



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



次の日の記者会見は、京子のあまりにの変貌ぶりに記者はもちろんスタッフまでもが目を見張り、感嘆の嵐となった。

未緒でデビューし、ナツで皆を魅了した京子が5年の月日を経て、どう変貌したかと、皆は好奇の目で彼女を注目していた。

しかしこの記者会見で彼女を見た人達は皆、羨望の眼差しで見るようになり、彼女の清楚な色気とキュートな笑顔にたちまち魅了されていった。

NY帰りの洗練された着こなしは、若い女性の手本となり、若きファッションリーダーとして、その後、女優やタレントとしてはもちろんモデルとしても活躍の場を広げていくのだった。


3rd おわり




今迄「セカンド・ラブ」を応援して下さった皆様、ありがとうございます。

これで3rd『日本編』は、終わりです。


次回からは、4th『恋人編』として、連載を続けるつもりです。

ただ申し訳ございませんが、またしばらくお休みします。


今書きかけの連載2本が終わり次第、再開するつもりなので、今しばらくお待ちください。


でも、もしかするとその前に、番外編をまた書くかもしれませんので

そちらの方もお楽しみにチョキ








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