『夏といえば・・・花火』


特に終わりゆく夏の日の最後の花火って、ちょっと切なくないですか?

少し時期は違うと思うのですが、カイン・セツカちゃんでもうすぐ撮影が終わる夏の終わりという設定で妄想しちゃいましたw

これは、某アーティストの曲を聞いて、出来たお話なんです。


そしてこれを書き上げて寝かしている間に読んだ本誌に刺激されて、思わずお話を一部修正しちゃいましたww

う~ん、ネタバレになるからここでは書けませんが、蓮さんとキョーコちゃんの今後が心配で、お話の中だけでも、明るい未来を予測させれるようにと頑張りましたが、難しいですね汗

心意気だけになっちゃいました(^▽^;)


他の素敵スキビマスター様のお話とは比べ物にならないほど、拙いお話ですが、よろしければどうぞお楽しみくださいw




言葉にできない想い



『ヒュ~~~ バーーン バン バン バン バーン・・・』


ふと立ち止まり、音がする方へと振り返った。

しばらく気づかずに前を歩いてたカインだったが、セツカがついてきていない事に気づいて立ち止まる。


「どうした?セツ」


「兄さん、この音・・・どこかで花火大会でもやってるのかしら?」


「ん?ああ~、そういえばさっき、この夏最後の花火大会があるからと言って、急いで帰ってた奴がいたな。」


「ふ~ん・・・花火大会か・・・花火なんて、ここ何年も見てない気がする・・・」


ぽろっと独り言のように呟いて、空を見上げてから、今言った言葉に激しく後悔してしまった。


あっ!いけない、思わず本音を言っちゃったじゃない!

セッちゃんは、兄さんがいたらそれだけでいいんだから、花火なんて関係ないはず・・・

もお~私の馬鹿あ!一体、何ケ月、セッちゃんをやっているのよ!


思わず呟いた自分の失言に心の中で、頭をポカポカしていたキョーコだったが、蓮はそんなキョーコを気にするわけでもなく、どこかを探すように辺りを見回していた。


「セツ、行くぞ。」


いきなりの呼びかけに驚いて固まっていたが、カインの差し出された右手と優しい笑顔に安堵して、小走りで駆け寄り、兄さんの手を握った。すると、ギュッと引っ張られて、そのまま早足で街並みへと消えていく。


「ちょ・・ちょっと待ってよ!兄さん!痛いって。」


体勢を崩しながら、必死でついていくセツカは、唇を尖らせて不服そうにカインに叫んだ。


「ほら、早くしないと終わってしまうぞ。」


立ち止まり、呆れたように振り返ると、セツカはニヤッと笑って、カインの手を離してたくましい右腕に自分の腕を絡め頭をカインの肩にのせた。


「ふふっ・・・これで痛くないわ。ねえ、これから、あたしをどこへ連れて行ってくれるの?」


「いけばわかるさ。」


可愛く甘えてくるセツカに、内心は理性の紐を揺さぶられながらも、悟られないように余裕のふりをして、ポンポンと頭を軽く叩くと、少しだけ歩くスピードを緩めて、また歩き出した。


少し前の最上さんなら、いくらセツカになりきっていても、自分から腕を絡めることも、しな垂れかかることも絶対にしなかった。

この数ケ月間で、彼女もすっかりこの兄弟に馴染んでしまったな・・・


俺も当たり前のようにセツカの温もりに触れている・・・


今となっては、『敦賀蓮』として、少しの間離れているだけでも無性に彼女が恋しくて、彼女に触れたくなってしまう。

かけることの出来ない携帯を握りしめ、目を瞑り彼女の声を、あの白くて柔らかな肌を思い出し、心の中で笑顔の彼女を抱きしめる。


もう彼女なしでは生きられない程、彼女にのめりこんでしまっているのに、本当の俺は何も変わっていない。

もうすぐこの撮影も終わり、またそれぞれの日常へと戻らないといけないのに、

果たして俺は、この先、彼女なしで耐えていけるのだろうか・・・


俺の腕にしがみついて、黙って歩く彼女は、今、何を考えているんだろう。


賑やかな大通りから少し離れたオフィス街の一角に入ると、そこは人もまばらで、静けさに包まれていた。

その中の一角にまだ人が入居していないのか、真っ暗で人気のないビルの前で、

カインは立ち止まった。


「ほら、着いたぞ。」


守衛らしき人に声をかけて、扉を開けてもらうと、そのままエレベーターで一気に、最上階まで上がり、屋上へと上がった。

そこは、花火が綺麗に見える特等席にも関わらず、その場所には他に誰もいなかった。


「うわあ~綺麗!!

こんなに間近で花火を見たのって、私、初めてだわ!すごい迫力ね!

でも・・・兄さんこんな所に勝手に入っちゃって、大丈夫だったの?ここの持ち主の人に怒られない?」


「大丈夫だ。ちゃんと断りは入れているから、安心しろ。そんな心配するより、花火に集中したらどうだ。すぐに終わってしまうぞ。」


「うん!!」


一番綺麗に見える場所に移動して、二人並んで空を見上げていた。


『バーーン パララララ ヒューー ドーン バンバンバン』


夜空に大輪の華を咲かせ、色とりどりの花火が上がっては消えてを繰り返し、

暗がりを彩っていく。

絶え間なく打ち上げられる花火に、二人は暫し言葉もなくして見惚れていた。


「本当に綺麗・・・何か月もかかって作った花火がこの一瞬で華やかに咲いて、散っていくのね・・・何だか切ないな・・・」


黙って見ていたセツカが、ぽつりと漏らすと隣で見上げていたカインも小さく頷いた。


「ああ・・・そうだな・・・

花火って、役者の仕事にも、少し似ている所があると、俺は思う。

何ヶ月も苦労して作り上げたワンシーンも、たった一瞬の映像で終わっていく。人々の心に刻みこむため、その一瞬に俺たちは輝きを放っているのかもしれないな・・・」


「一瞬か・・・そうかもしれない・・・でも私はまだ・・・輝けていないかも・・・」


寂しそうに微笑んで横を向くと、こちらを見つめていたカインと目が合い、彼もまた寂しそうに微笑んでいた。


そしてまた、鳴り止まぬ花火の音につられるように、顔を上にあげて夜空に咲いている大小様々の美しい花火を見つめていた。

息つく間もなく打ち上げられていく花火の迫力に圧倒されて夢中になって見つめていたが、ふとした瞬間に触れあった温もりに、互いに顔も動かさないで、当たり前のように指を絡めて、また夏の夜空を見上げていた。



『一瞬』


きっと今のこの時も一瞬で過ぎていくんだろうな・・・

この数ヶ月、いつも当たり前のように敦賀さんが隣にいて、私に触れていたのに、もうすぐそれも終わってしまう。

私は、この慣れ親しんだ温もりを失っても、元の生活に戻って行けるのだろうか? 


私にだけ優しい兄さんも、演技に真摯に取り組むカインも、闇に囚われて苦しむ敦賀さんも、自分が上手にできた時に褒めてくれる敦賀さんも、すべて愛しくて、私の宝物として、大切に自分の心の中にしまわれている。


互いが元の日常に戻った時、私の心は一体どうなってしまうんだろう・・・


負けたくない・・・


自分の気持ちに負けてしまったら、この愛おしい何よりも大切な宝物まで失ってしまう。


少しだけひんやりした夜風が二人の間を吹き抜けて、髪をすーっと揺らしていった。

それはまるで夏の終わりを告げているようで、ふと隣を見ると、前髪をかきあげて空を見上げている敦賀さんの横顔が、暗闇に映し出されていた。


本当に・・・綺麗な人・・・


カインの扮装をしていても、やはりとても麗しくて、同じ人間とは思えなかった。

鼻筋の通った綺麗な顔立ちに切れ長で涼やかな瞳、妖艶に微笑む口元。


まるで神が作った最高傑作を間近で見ているようだった。

本当は、私なんかが隣に立つことは許されない雲の上の人だけど、今はミッションという理由だけで私を側に置いてくれる・・・なら、せめて今だけでも一緒にいたい。

何度蓋をしても溢れ出してくるこの想いに気づかないふりをして、繋いでいた手をギュッと強く握りしめ、また空に咲き乱れる花火を見上げていた。



いきなり力を入れられた手に、ドキッと鼓動が高鳴り、ゆっくりと頭を横に動かして、彼女を盗み見た。

花火に照らされて映る彼女の艶やかな横顔にしばらく見惚れてしまう。


綺麗になったな・・・本当に・・・


最近の彼女は、会うたびに綺麗になっていく。

昔みたいに、自分に向けられる好意も、真っ向から否定しなくなってきた。

大人になってきたのか?


以前、社さんが言ってた事は本当だった・・・


美しくなった君は、やがて俺の元を離れて、誰か知らない男のものになってしまうのか?


嫌だ!絶対に離したくない!


考える前に身体は反応し、

彼女の手を強く引っ張って引き寄せると、そのまま強く抱きしめた。


『バーーン ヒュルルルル』


一段と大きな花火が夜空を飾り、空に光が差してきた。


「はっ!」


いきなり強く抱きしめられ、敦賀さんの顔が近づいてくる。

何が起こったのかわからないまま、触れられた熱に目をそっと閉じて、貴方から与えられた温もりに甘んじていく。


『パラララララ・・・・』


空を照らしていた美しい花火が散ってゆき、また闇に包まれていく。


ゆっくりと離れていく感触に、目を開けて、敦賀さんの顔を見つめたけど、闇に隠れて、表情が良く見えなかった。

動揺する心を隠せないまま、震えた声で言葉を振り絞る。


「どうして?」


「・・・・・・・・・・」


彼は、黙って妖艶に見つめるだけで、私の問いには答えず、再び唇を近づけてきた。

私も黙って目を瞑り、貴方のキスに溺れていく。

優しく触れ、時には強く吸い、何も言わないまま何度も何度も私の唇に触れてくる。その甘く溶けていくような快感に、身体の力は抜けてゆき、彼の背中に手を廻してしがみついた。


『バーーン バンバンバン ヒューーッ ババババババ パラララララ・・・』



音が鳴り止む間もなく、次々に花火が打ち上げられ、金粉がサラサラと夏の夜空に降り注いでいく。


聞こえてくる人々の歓声にも、突き放すことができず身体を預けたまま、もう何度目になるのかも分からないほどたくさんのキスを交わしていく。歯列をなぞり舌を絡ませながら、どちらかの唾液ともわからな程、無心で求めあい、溢れ出す想いに互いをもっともっとと求めていく激しいキス。


(もう役者の法則は使えない・・・)


と心の中で呟く私がいる。


うそつき! 最初から使うつもりなんてなかったのに・・・


花火のせい---そう私は、花火の熱にうかされて、今だけ貴方を想う気持ちが膨れ上がって、止められなくなったんだ!


だから、花火が終われば、またいつもの私に戻るの・・・

だから、今だけ・・・私を貴方のものにして下さい。


やがてあんなに賑やかだった花火の音は静まり、代わりに雑踏に紛れて飛び交う人々の声が聞こえてくる。


ゆっくり敦賀さんの唇が離れていくのと同時に、自分もそっと身体を離して、濡れた唇に手の甲をあてた。

鉄の味がする・・・

夢中で交わしたキスの途中で切ったのだろうか・・・

熱い・・・未だに火照った身体が恥しくて、顔があげられない。


私は今、どんな顔をしているんだろう?


きっとすごくもの欲しそうな顔をしている筈に違いない。

そんな女の顔を、敦賀さんには見られたくない。


ずっと俯いたまま視線を外していると、頭上からいつも聞いているカインの声が降り注いだ。


「帰るぞ、セツ。」


「うん」


すでに歩き始めていた兄さんに、私も必死で役者根性をかき集め、セツカとして答えて、カインの手を握った。



突然のキスにも責めることなく、俺を受け入れてくれて、今も目の前で、真っ赤になって震えている彼女が愛おしくて、このまま掻き抱きたい劣情を必死で抑え込み、兄としての仮面を被りなおした。


差し出した手にセツカが指を絡めてくるのを待って、そっとその手を口元まで持ち上げて、唇を寄せる。


さっきまでの熱をなかったかのように振舞おうとする彼女がちょっと憎らしくて、ちょっとだけいたずらを仕掛けてみた。


真っ赤に染まる頬に動揺を隠せないながらも、必死でセツであろうとする彼女に

少しの寂しさと安堵する気持ちを抱えながら、これ以上は俺の方が、我慢できないと思い直し、また何もなかったようなふりをして、元来た道へと戻って行く。


さっきの事には、お互いに触れないで、カインとセツカとして何もなかったように振舞っていた。


そう・・・今はそれでいい・・・


さっきのは、花火の美しさに惑わされて、二人が見た『うたかたの夢』だったんだ。


今はまだ・・・


真実を何も告げらないまま、彼女を奪う事なんて出来ない。


まだ早い もう少し彼女の傷が癒えるまで

俺が本当の自分を、クオンを、正面から受け入れることができるまで。


『愛してる』とは、まだ言えないけれど、ずっとこれからも君の隣を歩き続ける。

手離したりしない、絶対に!

例え、また離れ離れの生活になっても、彼女を他の男に渡すなんてそんな真似、絶対にさせない。

他の男に目がいかないように、もっと魅力的になって、俺の事しか考えられないようにしてやる。


そしていつか・・・本当の気持ちを伝えられる日が来たら

俺は一生彼女を手離せなくなるだろう。


だから今は、少しでも君に俺自身を刻んでおきたい。


黙って手を繋いだまま、静かな通りを歩いていたが、

人通りの多い道まで出てくると、さすがにこの気まずい沈黙に耐えられなくなって、さりげなく話を振ってみた。


「セツ、花火はどうだった?しっかり堪能できたか?」


「うん!ありがとう、兄さん。とても綺麗だった。こんな都会に、あんな穴場があるなんて知らなかったわ。思わず来年も見たいって思ったんだものw」


最上さんは、さっきの動揺を完全に立て直し、俺の大切な妹、セツとなっていた。


「そうか・・・でも、残念だが、来年はあそこでは無理だ。今日は、偶然オープン前の準備で、ビルに人がいなかっただけなんだ。」


「な~んだ・・・それなら仕方ないわねw」


「そんな寂しそうな顔をするな。来年も連れて行ってやるから。

そうだな・・・花火がよく見えるホテルの部屋でも借りて、来年は二人でゆっくり見るか?」


「ええ~無理よ!絶対!だって、そんないい部屋、すぐに埋まっちゃうもの。」


「そうか・・・なら今から、来年の分を予約しに行くか。

う~ん、どうせなら10年分くらいまとめて予約しておくか。」


「兄さん、何無茶苦茶言ってるの!そんなの無理に決まってるじゃない!」


「どうしてだ?お前は、俺とこれからずっと花火を一緒に見るのが、嫌だって言うのか?俺から離れていくつもりなのか?」


「どうしてそうなるの?私は、ずっと兄さんと一緒よ!ただ今からホテル10年分の予約が無理だ!って言ってるの。」


にやりと微笑む敦賀さんの表情が、どこか夜の帝王の雰囲気を醸し出していて、思わず手を離して立ち止まり、目を逸らして誤魔化すように他の誰かを見つめていた。
2.、3歩前に進んでから立ち止まると、仄かに怒りの波動を漂わせ、後ろを振り返った。


「他の男になんてよそ見をするな。お前は俺だけを見てればいい。」


「なっ!他の男なんて見てないもん!見る筈がないわ!

だって、兄さんより素敵な人なんて、世界中のどこを探してもいないもん!

私はいつも兄さんだけを見ているの…これからもずっと…」


「そうか…なら、それでいい…

他の男の事なんか考えるな!お前は俺の事だけ考えていればいい。

これからもずっと、俺の後を追ってこい。」


(追って?そこは『ついて来い。』が正解じゃないの?どうしたんだろう、敦賀さん。まだ役に入り切れていないんだろうか?

それともまた私・・・おかしな事言って、敦賀さんを萎えさせちゃったのかしら?)


俯いたままこっそり敦賀さんの顔を覗き見ると、彼は、呆れた顔でも、大魔王でもなく、光を纏った神々しい笑顔でこちらを見つめて手を差し伸ばしていた。


(敦賀さん・・・)


心臓が壊れそうなほど早く高鳴って、顔が真っ赤になっていくのを感じていたけど、セッちゃん魂が離れていきそうになるのを必死で堪えて、差し出されたカインの腕に両腕でしがみつき、肩に顔をうずめて誤魔化した。


いけない・・・まだ、この意味を考えてはいけない。

今はまだ、知りたくない。

でも・・・嬉しい・・・


私はずっと今日の日を忘れないだろう。

この夏の最後の花火とあの人の優しい笑顔を・・・



【完】



今回は、真正面からのメロキュンというよりも、互いが相手を想いあっている甘酸っぱい『切キュン』を目指して書いたつもりが、この結果ガーン


ごめんなさ~い!ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ


そして・・・すでに八月も終わり、九月となりましたw

そろそろ夏も終わりかな?とは思っていましたが、まだまだ暑い!!

ということで、もう少しだけこの企画も続きますww


だってこの研究所の風月所長のあま~~いメロキュンがまだ終わってないからラブラブ


まだまだ素敵メロキュンは堪能できそうですニコニコ


お楽しみに音譜



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