風月所長から渡された2度目のバトン
ちょうど物語の折り返し付近でしょうか?
これからは、どこで終わるかわからないこのお話ですが、
ピコの後にも、素敵なスキビマスター様が揃っていますので、まだまだメロキュンを堪能できると思いますww
ということで、今回は、少しメロキュンはお休みして、この後のマスター様が繰り広げてくださる素敵なお話が一層メロキュンになることを願って、色んなフラグが立ててもらえるように種まき活動に勤しむことにしました。
今後の展開に期待です
では、どうぞお楽しみ下さい♪
いつも俺の腕の中に 13
どのくらい自分の世界に入り込んでいたのだろうか?
ふと気づくと、目の前にいた筈の椹さんはいなくなっていて、代わりにドラマの詳細と仮の台本が握らされていた。
この部屋で、一人ぼおーっとしているのも邪魔になるので、ラブミー部部室に戻り、先ほど握らされた仮の台本を開いた。
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『いつも俺の腕の中に』 富士TV OO月OO日(月) 21:00より放映開始
一級建築士:鳴海孝志役 主演 敦賀蓮
インテリアコーディネーター:二宮加絵役 主演 京子
加絵(京子)は、16歳の春、ずっと大好きだった幼馴染に手酷い振られ方をして、雨の中、何も考えられなくて、ただ街をふらふらと歩いてた時に一軒の小さなカフェに出会った。
赤い屋根に白い壁の可愛らしい外観で、吸い寄せられるように加絵は入り口の扉を開いていた。
傘もささずにびしょ濡れになって一人店内に入った加絵に、奥に座って新聞を読んでいた白髪交じりのマスターは、「いらっしゃいませ。」と声をかけると、タオルを渡して、奥の席に案内してくれた。
タオルで身体を拭いてから、案内された席に座り、辺りを見回すと、
室内は、ベージュを貴重とした落ち着いた色合いでコーディネートされていて、どっしりとした木のテーブルに、座り心地のいい椅子が、「まるで一人じゃないよ」と語りかけてくれるように優しく包み込んでくれた。
マスターは何も聞かず、ただ注文のコーヒーを丁寧に淹れてくれ、
コーヒーのいい香りが店中に満ちていき、加絵はこのどこかノスタルジアを感じさせる現世とはかけ離れた異空間で、先ほどの悲しみも薄らぎ、穏やかなひと時を過ごすうちに、どんどん傷ついた心が癒されていくのを感じていくのだった。
加絵は、いつか自分もこんな風に人の心を癒してくれる空間を作りたいと思い、インテリアの道へ進む事を決めた。
あれから5年、専門学校を卒業した加絵は、念願のインテリアコーディネーターの資格を得て、小さな建築設計事務所に就職した。
そこは、加絵がこの仕事につくきっかけとなったカフェを手がけた会社で、社員数は少ないが、丁寧な仕事とセンスの良さには業界でも定評があった。
加絵は、こんな少ない人数の会社なら、すぐに自分も現場でバリバリ働けると友人に電話で息巻いていたのを、偶然通りかかった鳴海(蓮)に聞かれ、仕事を舐めるなと叱られる。
それからも事あるごとに嫌味を言われ、雑用ばかりでまともな仕事をさせようとしない鳴海に、加絵の怒りは爆発寸前だった。
今日も散々下働きをさせられた仕事帰り、同期の梨花(千織)と亮(光)とで飲みに行った加絵は、日頃の鬱憤を晴らすように大荒れだった。
「何!あの冷血漢!確かに顔はいいし、仕事もできる・・・でも、性格は超陰険の自己中心で二重人格!あの人は、女を馬鹿にしてるのよ!女はすぐ泣くから、使えないとか思っているくせに、人前では手伝ってもらって助かるよ・・・なんて似非紳士笑顔で笑って、影で舌打ちしているのを私は知っているわ!大体、女は皆、泣いて誤魔化すなんて偏見よ!私は泣かないし、体力と根性で、どんな仕事でもやり遂げて見せる!男にだって負けない自信があるのよ!!なのに、あの男は・・・社内の雑用ばかりで、現場にも出してくれない・・・私も早く現場で仕事をして経験を積みたいのよお~~」
「まあまあ、加絵ちゃん、落ち着いて。鳴海さんは、加絵ちゃんが言うほど悪い人には、思えない・・・確かに、仕事に対しては、ストイックな所はあるけど、後輩の面倒見はいいし、一生懸命取り組んでいる奴はちゃんと見てくれていて、評価もしてくれるいい先輩だと、俺は思うけどね。」
「それは、亮が男だからでしょう!私とは、扱いが違うわ。」
「確かに、そうかもね。鳴海さんは、誰にでも優しくて紳士的だけど、加絵だけには異常に厳しいものね。あんた、一体どんな嫌われることを、あの人にしたのよ?」
「それは・・・」
「まあ、あんたの言ってる事もわかるけどね。近寄ってくるあなた以外の女性には、いい顔してニコニコ聞いているけど、絶対に女性の誘いには乗ってこない・・・
何だか恋愛自体を馬鹿にしている感じがするわ。」
「そこよお~、あの人は、絶対!恋愛している人達を小馬鹿にしているわ!愚かな行為としか見てないと思う!きっと!でも世間では、恋愛も仕事も上手く両立している優秀な人達はたくさんいるわ。心が豊かじゃないと、人の心を動かす空間なんて作れないと私は思うの!ねえ梨花、あなたもそう思うでしょう?」
「思うけど・・・まあそこは、人それぞれだし、一概には言えないと思うけど・・・
それよりあんた、時間大丈夫なの?もう結構遅いよ。健ちゃんに怒られるんじゃないの?」
「ああ~もういいの。あいつとは別れたから。」
「ええ~~いつ?」
「一週間前。彼が、俺と仕事とどっちをとるんだ?なんて馬鹿なこと聞くから、『仕事よ!さようなら!』と言って出てきちゃったわ。彼女の仕事にも理解を示さない度量の狭い男なんて、こっちから願い下げよ!」
「あんたねえ・・・ちょっと早すぎない?ちょっと前まで、『彼、ヤキモチ焼きで困っちゃう~』とか言って、惚気ていたくせに・・・
それに今年に入って、もう5人目でしょう?
ペース早過ぎない?
もうちょっと、相手をちゃんと見定めてから、付き合ったほうがいいんじゃないの?私達の売り時なんて、すぐに過ぎちゃうんだから・・・」
「う~~ん、でも・・・一度寝てみないと相手の本性なんてわからないし、時間をかけて付き合うより、そっちの方が手っ取り早いんだもんww」
「あんたねえ・・・・はあっ~」
「またすぐにいい男見つけるわよww 何なら亮、私と一度、寝てみる?」
「え~~っ////」
「冗談よ。亮は友達だから、寝たりしないわww」
加絵は、けらけら笑ってグラスに残っていた焼酎の水割りを飲み干し、お代りを注文した。
その時、亮が寂しそうに加絵を見つめているのには気づいていなかったのだが・・・
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何これ?この加絵という役・・・なんて破廉恥なの!寝たほうが手っ取り早いって、ありえないわ!
まずは、相手の性格を知る方が先決でしょう!
こんなのポジティブシンキングでもなんでもないわ!
ただの無鉄砲よ!
もっと自分の身体を大事にしないと!
「こんな破廉恥な役!私にはできない・・・理解できないわ!!」
「何ができないの?やってもみないで、君は理解できないから『できない』なんて、プロにあるまじき台詞を恥ずかしげもなく口にするの?」
「へっ?敦賀さん!いつから、そこにいらっしてたんですか?」
キョーコは、ドラマの台本に夢中になるあまり、蓮がノックするのも、部屋に入って声をかけられたのにも気づかずに必死で台本を読んでいた。
蓮は仕方なくキョーコの向かいに座って、じっとキョーコの独り言を聞いていたのだった。
「もう10分ぐらいたつかな?ノックしたけど、返事がなかったのでドアを開いて中の様子を見てみたら、最上さんが熱心に台本を読んでいて、声をかけても気づく様子もなかったので、読み終わるのを座って、待っていたんだけどね。邪魔だったかな?」
「いえ!滅相もない。無視をしてしまい、申し訳ございませんでした。」
椅子から立ち上がり、綺麗なお辞儀で謝るキョーコを、呑気に笑顔で片肘をついて見ていた蓮は、キョーコの読んでいた台本を手に取って、パラパラとページをめくった。
「これって、今度一緒に共演するドラマの台本だよね?初主演おめでとう。
久しぶりの共演で嬉しいよ。よろしくね、最上さん。」
「ありがとうございます。こちらの方こそよろしくお願いします。」
再び深く頭を下げるキョーコに、蓮はさっきの話の続きに戻した。
「で、さっきの話の続きだけど、本当にこの役をできないと言って、放り出すつもりだったの?」
キョーコは、蓮の質問に慌てて首をブンブンと振り、焦って弁解を始めた。
「違うんです!あれは、他に人がいないと思っていたから、つい出てしまった弱音で、役は絶対に降りません!
せっかく敦賀さんとまた共演できるチャンスを、自分から捨てるなんてとんでもないです!
石にかじりついてでもやり遂げて見せます!」
「そうなんだあ~
まあ、一人の時には、弱音をつい吐いちゃうこともあるからね。わかるよ。
でも、ここは仕事場で、知らないうちに誰に聞かれているかもわからないんだから、これからはむやみやたらに、弱音は吐かないこと。
どこでどんな風に足を引張られるかもわからないんだから・・・この世界は。」
「はい!貴重なアドバイス、しかと心に留めおきます。」
背筋を伸ばして、敬礼をするキョーコの傍によって、敬礼している右手を下ろして指を絡め、そっと耳元で囁いた。
「今から練習してみる?加絵は、積極的な女の子なんだろう?
この位の触れ合いは何ともない・・・そうだよね?」
「はい///」
頬を染めて小さく頷くキョーコを、蓮は引き寄せて腰を抱き、夜の帝王を憑かせると妖しく声をかけた。
「受け止めるだけでは駄目だよ。自分からも触れていかないと・・・
加絵なら、きっとそうすると思うからね。」
「そうですね・・・でもどうしたらいいか、私にはわかりません。」
「ならば、俺が最上さんが役を掴めるまで、時間の許す限り、練習相手になるよ。
俺がこうやって君に触れたら、君も同じようにして俺に触れるんだ。
そうすれば、加絵役の練習にもなるし、慣れる事もできるから、役の気持ちも掴めるんじゃない?」
「そんな・・・お忙しい敦賀さんにそんな事までお付き合いさせるのは、心苦しいです!このくらい、私一人でなんとかしてみせます!」
「一人で?誰を相手に練習をするつもりなの?」
一気に蓮の周囲の温度が下がり、大魔王が降臨していく。
キョーコは、怖くなって、蓮から離れようと身体を逸らして、一歩後ろに下がるが・・・
腰をがっちりホールドされていて、それ以上は逃げられなかった。
「君はわかっているのかな?誰彼構わず、そんな事をしていたら、勘違い男を増やして、君自身が大変な目に合うことを。」
「私なんかに、そんな勘違いをする人なんていませんから、大丈夫です。」
ギロッと睨む連に、キョーコは俯いて小さくなってしまった。
「君はまだそんな事を言っているのか!
あのショー以来、君の評価はどんどん上がっている。
もちろん女性としても美しく光り輝き始め、周りを魅了しているんだ。
そんな君から、親しげにアプローチされたら、勘違いしない男の方がおかしいだろう。
もっと自分を認めて、大事にしないと、取り返しのつかない事になってからでは遅いんだからね。
でも、俺ならそんな心配もないし、今度のドラマの相手でもあるから、一緒にいる時間も長い。
それに、ヒール兄弟ではお世話になった最上さんだから、今度は俺がお礼も兼ねて相手をしたいと思ったんだけど、無用なお節介だったかな?」
「とんでもないです!そんなあ~大先輩で崇拝しています敦賀さんに相手してもらえるなんて、最上キョーコ、光栄の至りに存じます!是非お付き合いしてください!お願いします!」
「そう・・・よかった。わかってくれたんだね。君が、勘違い男に付きまとわれて、何かあったら俺は、先輩として悔やんでも取り返しがつかないからね。」
「そんな大げさですよww」
はにかむ様に微笑むキョーコを見て、蓮は思っていた。
(もしも本当にそんな事になったら、俺は相手の男を2度と日の目を見れないように地獄の果てまで追い詰めてやるがね・・・)
「じゃあ、今からスタートだよ。」
そう言うと腰を抱いたまま、片方の手でキョーコの顎に手をかけて自分の方に顔を向けると、手の甲でそっと頬を撫でて、唇を寄せた。
チュッというリップ音と共に唇を離し、頬を染めて恥らっているキョーコに声をかけた。
「さあ、やってみて。」
キョーコは、少し戸惑った素振りを見せたが、すぐに切り替えて艶やかに微笑むと蓮の頬に手を伸ばして、感触を確かめるようにそっと撫でて、唇を近づけた。
キョーコの柔らかな唇の感触は想像以上に蓮の理性を揺さぶり、自分で言い出した提案だったが、もうすでに後悔し始めていた。
頬が染まるのを手で覆い隠し、キョーコを拘束していた左手も腰から離して、ぼそっと呟いた。
「座ろうか。」
「はい。」
隣同士の椅子に腰かけた二人は、さっき読みかけていた台本とドラマの詳細を開いて、再び読み始めた。
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『いつも俺の腕の中に』 プロット
熱意と根性だけで、今まで、目標に突き進んできた新人加絵(京子)は、過去に、大失恋をした際、偶然入ったカフェに傷を癒され、自分もいつかこの店のように、人の心を動かせるような空間造りをしたいとインテリアコーディネターへの道を志す。
専門学校を卒業して、資格も無事に取れて、念願だった自分の道を決めるきっかけとなったカフェを設計した建築設計事務所に就職も決まり、意気揚々と仕事に勤しんでいた。
周りの人たちも優しく同期の梨花や亮ともすぐに打ち解けて仲良くなったが、一つだけ憂鬱の種があった。
社長からの信頼も厚く、この事務所のほとんどの設計を担当している一級建築士 鳴海(敦賀蓮)に、なぜか加絵だけ、目の敵にされ、顔を会わせる度に嫌味を言われ、雑用ばかりを押し付けられる毎日を送っていたからだ。
そんなある日、村井(貴島)が、以前から懇意にしている外資系ホテルのコンペに参加出来るチャンスを掴んできた。
その物件は、郊外にガーデニングパーティもできる広い一軒家のレストランを、設計から全てを丸投げされるとあって、加絵の事務所でも社を上げて取り組む一大プロジェクトとなる。
このコンペのチーフには設計も担当をする鳴海が決まり、彼のアシスタントには加絵が抜擢され、またもや鳴海にへとへとになるまでこき使われるのだが・・・
最初は、冷たい態度の鳴海に愚痴ばかりこぼしていた加絵だったが、やがて彼の仕事に対する姿勢や彼の才能に憧れと尊敬の念を抱くようになり、いつしか彼に追いついて、彼と肩を並べて仕事をするのが加絵の夢へと変わっていく。
また鳴海も、当初は偶然聞いた加絵の仕事に対する姿勢が気に入らず敵視するが、彼女の一生懸命さに触れる度に認めていくようになり、いつしか女性としても惹かれていく。
そして、加絵は、ひょんな事から、この世界へ入るきっかけになった店が鳴海の設計である事を知り、尊敬が愛へと変わっていくのだった。
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設計事務所社長: 山口 徹役 (???)
鳴海の同僚で営業主任: 村井慎吾役 (貴島秀人)
加絵の同期で事務: 佐藤梨花役 (天宮千織)
加絵の同期で営業: 神崎 亮役 (石橋光)
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京子さんへ
この話は、いがみ合う二人が、お互いを知ることにより心が近づき、偶然が重なり合って惹かれあう大人のラブストーリーです。
ドラマの後半には、敦賀くんとの『キスシーン』もあるので、京子くんは初めてでしょうが、心の準備だけお願いします。
緒方啓文
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この話の主人公2人の関係って・・・・
まるで昔の俺たち2人みたいじゃないか?
「どこかで聞いた事がある様なお話だね。」
台本をテーブルにおいて、蓮はキョーコに声をかけたのだったが・・・
「・・・・・・・・・・・・・」
「最上さん?」
キスシーン!!
最後の監督の手書きのメッセージに真っ赤になって、返事もせず固まっていたキョーコを、蓮が不審げに覗き込んできた。
これは・・・
そういえば、社さんがさっき嬉しそうに話してくれていたような気がする・・・
あの時は、最上さんとの久しぶりの再会が嬉しくて、ほとんど受け流していたのだが・・・
「最上さん、大丈夫?やはり歩く純情さんの君には、この類の演技はまだ無理なのかな?
この前みたいに、『結構です!』と言って、逃げることはできないんだよ。わかってる?」
「はい・・・お芝居ですものね・・・敦賀さんに教わった役者の心の法則で頑張って、乗り切って見せます。」
キョーコの言葉に蓮はチクリと心が痛むのを感じた。
自分が教えた『心の法則』を、自分には使って欲しくなかったのだ。
不条理な願いとはわかっていたけど、抑え切れなくなっている彼女の想いを押し隠すようにして、彼女の顔に近づき、そっと唇に触れた。
一瞬驚いて目を見開いたキョーコだったが、蓮の口付けを許すように目を閉じて、彼の熱を感じていた。
やがて、すぐに離れていく温もりが寂しくて、思わず『もう一度』と漏らすと、蓮は破顔して、今度は優しく唇を合わしてきた。
「練習ですね・・・」
敦賀さんの顔が離れていった後に、小さく呟いた台詞が自分の胸を酷く締め付けたのは、もう少し気づかなかった事にしていよう・・・
ケロ様へつづく
こんな感じでよろしいでしょうか?
メロキュンを横において、今回は皆さまの妄想を育てる種を色々蒔いたつもりなんですが・・・
少しは役立ったかな?駄目?
公開が遅れたくせに、これか!とガッカリした読者様ごめんなさい!
後は、ケロちゃんのお話で口直ししてください。
ピコの駄目っプリは、ケロちゃんの暴走?でカバーよろしくお願いしま~す。
ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ
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お礼文もちょっとだけ書き下ろしていますww