ぴーちゃんの縁側日記
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午後の祝福・・・



お正月2日から、ケガをしてしまった。

視力が悪いのに、足元をよく確認しなかったのが原因で、黒御影石の玄関ポーチの階段を踏み外したのだ。

踏み外したというのは、あと付けの言い訳で、正確に言うと、段が見えずに宙を飛んだのだった。

左手はバッグ、右手は評判の和菓子店のお土産袋では、悲惨な結果は推して知るべしだ。

両手が塞がった状態で、どこでどう身をかばったのか思い出せないくらい、空中浮遊の時間は短かった。


義姉の悲鳴と、玄関先での消毒、鏡をおそるおそる覗くと、血だらけの顔。

地面が近づいた時、一瞬脳裏に浮かんだのは、海老蔵事件。

鼻折れたかな?歯大丈夫かな?
それより、口の中が、ジャリジャリするな。


お騒がせしたお詫びをして、早々に帰宅したが、痛みはひどくなるばかり。

どうやら、骨折は免れたみたいだが、鼻の頭と唇、唇の上が、相当擦過傷になってる感じ。

とりあえず、薬を塗り乾かさないようにラップを貼った。
最近は、傷の部分を乾燥させない方が、キレイに皮膚が再生するのだとか。

どこかで聞いた情報を信じて、おとなしく過ごす。


1月4日。病院でみてもらおうと、来院。
外科は3時からとのことで待ち時間を潰すために、売店へ。

文庫本を一冊と、チョコレートドリンクを買い、六階のデイルームに来てみた。


なんという贅沢!丁度、食事と3時のお茶の時間の合間だったせいで、この場所と景色を独り占めできることになったのだ。


病院の周りには、ここより高い建物は、マンション以外にはなくて、学校もショップセンターも、上から見下ろせる。

冬空の向こうに、県境の山々、北に視線をやると海が見えた。

デイルームの窓は、角がアールになっていて、本当に眺めがいい。


以前、入院してる時には気付かなかった贅沢が、ここにはあった。


誰にも邪魔されない、静かな時間。
雲間から差し込む、光の束。


病院へ来た目的も、うっかり忘れてしまいそうな、午後の祝福の時・・・


さぁ、外来に戻らなくては・・・。

野沢尚・・・


初めて彼の作品に出会ったのは、テレビだった。
多分、フジテレビのドラマの脚本だったと思う。

その後、小説を手懸けて名だたる文学賞を手にしたことも、記憶の片隅には残っていた。

ただ、本は読んでいなかったのだ。あの日までは・・・。


ある日、離れて暮らす父親が入院したと、伯母から電話が入った。
正確に言うと、「入院させた」らしい。
体調不良で、夜も眠れず、食事も食べられない状態で何日も過ごし、診察を受けた病院で、即検査入院に。
実は、心筋梗塞で危ない状態だった。

その後、救急車で大病院に搬送されて、三ヶ所の心臓バイパス術や、僧ぼう弁形成術など、難しい手術を受けた父。

深夜までの大手術で、なんとかICUに帰還した時には、無数のチューブに繋がれて、機械で辛うじて生かされている状態だった。

その日から、私は1日の大半を病院で過ごすことになった。
母が亡くなり、兄弟もいない私には、面会時間以外は家族控え室で過ごすのが、当たり前の日常に・・・。
家族控え室には、手術中の患者さんの家族以外にも、様々な事情を抱えた家族のドラマがあった。

ICUには、術後の重篤な患者以外に、緊急搬送された患者が、救命救急から移されてくる。

家族が集められ、ICUに入る姿も何度も見た。
名前を呼ぶ声、慟哭・・・
父も含めて、毎日いのちの闘いが繰り広げられている現場が、すぐ傍にあったのだ。


目を閉じても眠るわけはなく、ある時売店で文庫本を手に取った。

それが、野沢尚だった。

「肝臓が、かなりのダメージを受けています」

担当医が難しい顔で私に告げた朝・・・。


「数値は、回復していくんじゃないんですか?」


「はい、勿論私たちも色々試してはいますが・・・」


「このままだと、どうなるんですか?」


「数値が上がらないとなると、かなり厳しいです」


父は、術中に一度心停止したそうで、心臓だけではなく、他の臓器にもかなりのダメージを負っていた。


父より後に手術を受けた方が、次々に一般病棟に移られるのを、幻のように眺めていた秋の日・・・。


野沢尚の本は、日常から逃れる唯一の手段だった。

父が合併症を併発した頃、『深紅』を読んでいた。
吉川英治文学新人賞を獲った作品で、普段なら絶対に選ばなかった内容だ。

一家四人惨殺の、唯一生き残った娘と、犯人の娘が同い年。

映像にすれば、とても正視できないような、残虐なシーンを、脳裏に浮かび上がらせて、私は活字を追っていた。

活字は、自分で内容にフィルターをかけられるから、私は気に入っている。

エロもグロも、私の脳が判断して、耐えられる映像になった後、記憶される。

見方を変えれば、心臓手術だって、かなりのグロである。

胸の大きな傷痕は生々しく、加えてふくらはぎにも、バイパスの為の血管を取った傷が長々と残されていたから。

毎日、一冊ずつ本を読み、日常を離れて控え室で過ごして、どのくらい経っただろう。
医師団の適切な処置と、父の生命力が、奇跡的な回復をみせてくれた。


野沢尚は、残念ながら自ら命を断ってしまったが、父のいのちは細々ながら、今も繋がっている。

彼の新作には会えないが、時折読み返しては、あのギリギリの日々を思い出す。

如月‥


約一年ぶりのエントリーです。
書き方も忘れました(笑)

風邪をこじらせて、仕事にも追われて、大変な年度末も、なんとか終了!

如月も、あとわずかです。

今日の昼間は、運転席側の窓を開けて走っている人が目立ちました。

私も、風を入れながらのドライブでした。

菜の花、梅、来月は桃や桜‥。
お花を眺めながらのドライブも、田舎暮らしの特権です。

また、少しずつ書きたいことを書いていきたいな。

とりあえず、明日も頑張ろう。うん。


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