まず細かい事が書いてあるものよりも、薄めで分かり易そうなものとして、河本宏氏の”もっとよくわかる!免疫学”を読んでみた。
生物学の教科書は事実だけを述べたものが多いが、この本では、なぜその仕組みでうまくいくのかや、なぜそれが必要なのかなどが分かり易く書かれている。生物の仕組みは、進化の過程でたまたまある方法が選ばれていて必然性はないだろうが、ある方法が免疫という一つのシステムを成立させる上で、どのような役割を担っているかが良く理解できる。
特に免疫系の根本の一つである自己と他を見分ける機構は、とても精緻に組上げられていて感動的ですらある。従来から自己と他を見分けるのはどうやっているんだろうと思っていたが、”そうなんだ!”と腑に落ちた。自己の分子の情報が保存されているのではなくて、常に体内にあるものが自己であるということだ。識別の仕組みが幾重にもなっていることや、過剰な反応を避けるための仕組が組み込まれていることには、”うまくできてるな”と思わずうなってしまう。
一方で免疫系は込み入っており、専門用語が次から次へ出てくるので、一度読んだだけでは到底覚えきれるものではない。コラムなどで入門者にとっては意味不明なところもいくつかあった。まあ、これも内容の複雑さゆえ致し方ないのかもしれないが。
本書の特徴として、現在分かっていないことは、分かっていないと書いてあることが、とても理解に役立っている。分かっていないにせよ欠けたピースが明確になっていることは、全体像を掴むうえで重要だと思う。免疫学には、最近になって分かってきたことが多くある一方で、重要事項がまだ不明でもあり、学問として面白みや研究のやりがいがあるのだろうと想像できる。
最後に、著者はイラストや漫画を書くのが趣味なようで、本書中に書かれている解説図はとても楽しめつつ、理解するのに役立っている。著者は理研の研究者でHPに行くと、かなり気合いの入ったストーリー漫画が公開されている。興味のある方は一度見てみては如何か。
もっとよくわかる!免疫学 (実験医学別冊)/河本 宏

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