youtubeと指揮者は異なりますが、この演奏家のコンサートをラフォル・ジュルネで聴くことが出来ました。


●コンサートNO343
 ローザンヌ声楽・器楽アンサンブル、ダニエル・ロイス指揮
 ヘンデル「主は言われた」(デキシット・ドミヌス)他
 
 二曲目のヘンデル「主は言われた」(デキシット・ドミヌス)は初めて聴く曲でした。
 歌詞の聖書引用箇所である詩篇110編は、
 ダビデの時代まだ見ぬイエス・キリストの栄光を予言する書として有名なものです。
 受難のテーマになぜ再臨の歌を選んだのだろうかとふと思いながら、わたしは考えました。
 マタイの受難曲ですらその曲の中に苦難だけでなく将来の栄光の表現を見ることが出来る。
 したがって今日の再臨の歌も単に喜びだけでなく、
 その基礎となった十字架の受難を思う事が出来るはずだと考えました。

 一曲目から躍動感のある瑞々しい命に溢れた素晴らしい演奏でした。
 合唱は少人数でそれぞれのパートがくっきりと明確に区分され、
 鮮明に透明感を持って響き、かつ考えられないくらいの声量が迫ってきました。
 まるで灼熱の中でオレンジの切り口から滴る果汁を飲んだかのような潤いを感じました。
 そしてステージに立つ演奏者の姿のコントラストが強烈に迫り、
 輝きの中にめまいを覚えたほどです。
 しかしその輝きをより際立たせるがごとく、
 喜びの歌声の中に同時に受難の悲哀の影はっきりと感じることが出来ました。

 1曲目から9曲目まで夢のような時間が過ぎました。
 初めてメサイアを聴いた時の様な充実感を味わいました。
 少人数の割には非常に声量豊かな演奏だったという事ではありません。
 その評判に相応しい緻密でしなやかで染み入る演奏だったという事ではないのです。
 わずか35人の合唱と2人の声楽家、そして小編成の器楽アンサンブルが、
 Cホール1500人の聴衆を圧倒し、言葉を失わせ、
 その身を震わさせて、心の鎖を解き放ったのです。
 
 演奏後は声援と拍手と団員の足踏みが繰り返され、
 宗教曲に相応しくない第九に勝る熱狂が場内を包みました。