「蒼穹の昴」 浅田次郎 | ちっぴのブログ☆CHIPILOG

ちっぴのブログ☆CHIPILOG

美しい大人を目指す私の日々

ちっぴのブログ☆CHIPILOG


 「蒼穹の昴」 浅田次郎


2月だ。お決まりのセリフではあるが、早い!!

時の経つのは早いね~。



浅田次郎氏の「蒼穹の昴」を読み始めたのは、昨年11月下旬。文庫本にして全4冊を読み終えたのが、今年1月半ば。なんともまぁ、長い旅であった。そして、読み終えてから2週間経って、ようやく感想を書いてみる気になった。どんなに感銘を受けた本でも、何かに書き留めなくては、感想も感動も必ず風化してしまうから、今年は難しく考え込まずに、一行でも二行でも、読んだ本の感想を書くことを目標とした。


長い話が好きな人もいるとは思うが、文庫で4冊となると、私にとってはかなりのボリューム。まず本を読み始めるまでに、どっこいしょ。感想を書くまでに、どっこいしょ。非常に腰が重くなる。…いかん、いかんあせる


さて、蒼穹の昴。

中国、清朝を舞台に、極貧の少年が西太后に仕えるエリート宦官になっていくサクセスストーリー。単にサクセスストーリーと片付けるのも気が引けるが、読み終えて2週間たった今、中国の歴史も小説のディテールももはや抜け落ち、要約すれば、サクセスストーリー、この一語である。


日々、通勤の満員電車の中で押しつぶされそうになりながら、この本を読んだが、このラッシュさえ有難く思えてきたものだ。隣りでは中年男性が舌打ちし、逆隣りでは初老のサラリーマンがため息をつく。前方のお姉ちゃんは、ちょっと触れたくらいで、がっつり後ろの男性をにらみつけている。


みなさん、すみませーんパー

私たち、案外みんな幸せよぉ!清朝の中国なんて、ひどいのよ!!宮廷では、ちょっと料理人の料理がまずいというだけで、ちょっと役者の演劇が下手くそだったいうだけで、棒叩きの刑、人を人とも思わずに殴り殺す。宮廷の外では、道端で野垂れ死んでいる人がごろごろいる。


私は、今この時代に日本に生まれてきたことに、心底感謝した。「人権の尊重」が成り立っている。私も、満員電車くらいでカリカリイライラするのは、やめようビックリマーク


そして、この満員電車が嫌ならば、満員電車に乗らない生活を自力で手に入れなければならないし、そういうチャンスも決してないわけではないはずだ。…こんなこと、電車の中で力説したら、おそらくオジサマたちには「オレには、守るべきものがあるんだよパンチ!この若造に何が分かる爆弾」とか言って怒られそうであるが、「蒼穹の昴」から私が感じとった率直な感想である。あきらめたら、終わり。不景気だけどさ…


小説のなかで、占星術の預言者には、糞拾いの主人公は路上で飢えて息絶える運命が見えた。しかし預言者は少年に、その相をそのまま伝えることは出来なかった。彼があまりに、ひたむきでかわいかったから。そこで、「おまえは、大成する」と偽りのお告げを告げた。少年は、嘘か誠か分からぬお告げを信じ、並大抵でない努力をし、結果、運命は変わったのだ。彼は生きて、西太后の側近にまで登りつめた。


これを小説の中の話として片付けず、「運命は自分で変えられる」というメッセージを受け止めたいと思う。前を向いていきたい。


激動の時代、シリアスで重いシーンもたくさんあった。歴史ももっと勉強しなくてはならないと思った。しかし、浅田次郎氏のいいところは、おちゃめで笑えるシーンを盛り込んでくるところである。「蒼穹の昴」よりも「プリズンホテル」を先に読んだ私にとっては、「あ、プリズンホテルが顔を出した」という箇所がたびたびあった。時折、息抜きできるそういうシーンがとても良かったし、笑いはやっぱり大切だと思われる。