SNSで日々絶賛尽くしのレビューを拝見し、期待が高まるばかりだった舞台「アルトゥロ・ウイの興隆」。

神奈川芸術劇場 2020年01月11日(土)~2020年02月02日(日) 

 

自力でチケットは取れなかったのですが超ラッキーなことに譲っていただくことができまして(ありがとう~照れラブラブ

千秋楽近くに観劇することができました。

完成度も最高に高まったところで観れて本当に感激(観劇で感激w)でした。

 

私的なことを言えば最近めっきり気力が落ち込んでいて 趣味の読書も映画鑑賞もスマ活もあまりできておらず、感受性が鈍っているなーと感じる日々でありまして。

そこへ難しそうな外国劇......直前に体調を崩したこともあり、観れるのありがたいけど大丈夫かな、ちゃんと全部受け止められるかなと心配していたのですが、結果はそんなことも吹き飛ぶほど圧倒されました。

 

観終わって最初の感想は、すごく怖い物語だったなーと。(思っていたら吾郎さんもななにーで同じこと言っていた!)

 

3時間超のお芝居を1回だけの観劇のため理解が追いつかないところもけっこうあったので、史実を調べたりパンフなど読み返しつつ、後からいろいろまた考えています。

的外れなこと書いてしまうかもですが、以下 完全に自己満足で好きに書き散らかしております。

(細かい内容に触れていますので気になる方はご注意)

冒頭はオーサカ=モノレールの中田さんによる「WELCOME to KAAT〜!」のシャウトから。(2/2のななにー冒頭でもつよぽんがやってましたね♪)

"観客が熱狂の渦に巻き込まれるお話"というのだけ頭にあったので、あ、こんなメタ視点から始まるんだと思いました。これもブレヒトの手法なんですね。

 

そもそも今回の劇は登場人物が多い!

個々の名前はカタカナがあふれていてとても覚えられず、ただ大物政治家ドッグズバローは古谷一行さんなのでその存在感だけで認識OK。あと中心人物以外、新興ギャングは赤、冴えないスーツ軍団は既得権にしがみつく八百屋連合、などと色のカタマリでグループを把握(笑)

(注:自分の理解が足りないだけで、役者さんは動きにもそれぞれ特徴があるので、初見でもわかる人にはちゃんとわかるようになっています)

 

草彅剛さん扮する主人公 アルトゥロ・ウイは痛いほどの野心を感じさせる人物。

たくさんの配役が入り乱れる群像劇でもあり、他の役者さん達もたっぷりセリフがありました。

前述した背広組である青果業者のトラストは賄賂を使ってでも金儲けに余念がなく、"カリフラワー・トラスト"なんて可愛い語感にはそぐわない、きな臭い集団。他に収賄で罠にかけられる老政治家バローとその息子、水運会社のオーナーなどなど、一癖ある連中がひしめきあってる。

 

最初はウイが知略をもって仕掛ける、というよりもなんだか巧妙にもぐりこんでいく感じ。

すっごく頭がよくて戦略に長けるタイプでも片っ端からライバルを殺していって問答無用、というタイプでもなく、ゲロッパ!と歌い踊る冒頭からわかるように、小物ギャングながら何だか妙な魅力があって、そのカリスマ性のみでのし上がってきたというような人に思えました。

松尾諭さん扮する弟分のローマが脇でいつも不敵な、笑みとも言えない表情を浮かべているのもいいですよね。カリスマには腹心の舎弟が必要だ。

 

ウイは泣き落としも媚びへつらいも脅しで揺さぶるのも躊躇なく何でもします。上に行きたい、権力を持ちたいという強烈な野心。八百屋トラスト連中がはっきり言って"悪"の側なので、むしろウイがその汚い世界を心意気一つでのし上がっていくさまは小気味よいくらい。

 

なんといってもウイがカッコいいんですよ、マジで!

ダンスなんであんな上手いの。体の動きに目が釘付け。

観客席からステージ奥まで高低差もなんのその、歌い踊りながらの激しい動きラブ

そのときは気づかなかったけど他の方たちのレビューを拝見して、あれで息も切らさないでセリフを言えるのはたしかにすごいなと思いました。

これを1日2公演やってるってすごい(語彙力...)。そりゃあ喉もつぶれますゲホゲホあせる

 

ジェイムズ・ブラウンのあのクネクネとした感じと比べて見ると、なるほど、再現率高し。

草彅さん(もはやつよぽんて気軽に呼べない)が色白なうえに施されたメイクとライトグレー?の帽子の色も相まって、彼だけなんだか発光して見える。ふだんのぽやぽや5歳児はどこへ行った、というくらいの色気とオーラを感じました。

 

ゲロッパ!

 

中盤で小林勝也さん扮する舞台役者に立ち方・歩き方やスピーチの仕方を指南してもらう場面、すごくおもしろかった!

 

ここで引用するのがシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」ってところも憎い演出です。シーザーはなんたって"元祖カリスマ"みたいな人だし。

後で史実を調べてみて、シーザーがブルータスに裏切られるのも後半のローマとのあれこれにかかってるのかなーと思ったり。この物語の中では腹心のローマは最後までウイに忠誠を尽くしたので逆ではありますが。

ハイル・ヒトラー!ってあの手を挙げるポーズ(ナチス式敬礼)も象徴的に描かれます。

 

舞台役者の指南を受けた後、大衆の前で演説しつつ、言われた通りに背中をそらして大きく上げた足をつま先からゆっくりおろして、という大袈裟な動きを再現するウイ。見ていると、なんだか滑稽ながらも裏を知らなかったら素直にカッコいいと思っちゃうかも?! くらいの絶妙な動き方なんですよ。ふつうに見てたらぜったい笑っちゃうんだけど。実際舞台の観客としての自分は笑ってるんだけど、劇の一部である大衆としては存分に魅せられている、という感覚を同時に味わえる場面でした。

 

老政治家ドッグズバローの失脚(ウイが裏工作をしているのは歴然ながら、ほぼ自滅に近い形で退場)からトラスト連中も抑え込み、シカゴの街を掌握していくまでが前半。国会議事堂放火事件もこのあたりですね。

 

後半はグッとダークに。

これは事前のレビューでは見ていなかった部分で(ネタバレ配慮ありがとうございます)こんな展開なの?! とちょっとびっくり。ヒトラーになぞらえた物語なんだから、それはそうかとすごく納得はできるんですけどね。

 

腹心のローマでさえもいろいろあった末に結局は切り捨ててしまった。

これまで曲りなりにも合法的にのし上がってきたはずが、一気に血なまぐさくなっていきます。

 

(参考)寄り道して世界史の勉強までしてしまった

ローマことエルンスト・レームと「長いナイフの夜」事件について

 

そしてローマに代わりジヴォラ(渡部豪太さん、好演!)を付き従えて、新聞社の社主説得(失敗)~襲撃事件から未亡人の転向の流れは怖すぎたガーン

 

正義漢の夫が殺されたことをウイに対して憤っていた夫人(那須佐代子さん)が、黒の喪服を無理やりはぎ取られ(下に着ていたのは正義の青?紫?これも鮮やかな対比でしたね)赤い服を着せられて、後にウイの手を取る場面は鳥肌立ちました。

最終的に彼女はにっこり笑顔まで見せていたけれど、内心はどう思っていたんだろう?

洗脳状態だったのかしら。

 

ジヴォラが花屋という伏線もここでこうきたか!という演出でした。

お花のパネルが葬儀の献花に代わる場面がすごく印象的です。花ひとつとっても見方次第でこんなに変わってしまう。魅力あるカリスマも裏の顔を見れば実は......という対比でもあるように思えて。

途中で野菜が腐っていくような描写もいろいろ見逃してしまったのでもう一回見たい......

 

この襲撃でウイは無辜の市民でさえも平気で手にかけるギャングだということが自分の中ではっきりわかって、あ、このひとやっぱり悪い人だ!ってそこでようやく実感して背筋がスッと冷えました。そんなことは確かに最初からわかっていたはずだし、ローマ暗殺のときにもすでにその芽はあったのにね。ノリノリのファンクミュージックにいつのまにか私も乗せられていました。死体の山を視覚的に認識するまで、悪事を悪事と理解していなかった自分が怖い。

 

それまで(清濁併せ呑むワルってやっぱり魅力あるよねーラブ)なんて思って、ウイがのし上がっていく様を応援すらしていたのに。

 

終盤にきてイカンイカン!ってようやく目を覚まさせられて、でももうその時点で手遅れ(((゚Д゚)))

聴衆に手を上げさせる場面、(大衆側の)八百屋のみんな抗議がんばれ!と思っていたけど結局私はさっさと手を挙げましたよ......!根性ないので転ぶのが早いあせる

だってコロサレタクナイヨーガーンあせる

機関銃の銃声が怖かったです。

 

人は暴力の前には無力だなって痛感。ここの場面、完全に観客は大衆側と一体化してましたね。

新聞社主未亡人のスピーチも、この人が言うなら....ってまんまと利用されてるし。

隣町を併合するにあたって、まずその町の有力者から説得させるという手法は上手い。

実際のオーストリア併合はどうだったんだろ。

現実にあるならきっとウイ=権力者の思惑通りにハマってしまうなあ、と自覚してしまいました。私チョロいな......

 

(参考)オーストリア併合

 

頂点を極めたウイは凄みを増して、もはや言葉を発さない。

手下が好きなように語って、自分は静かにそこにいるだけで、本心を見せなくなってる。

ほんとはローマの亡霊におびえてたりっていう描写もあったので、そこは人間的な部分もある人だと思うんだけど。

でも衣装はより煌びやかになって、カリスマ性はますます高まって、大衆はさらに熱狂していく。

 

ヒトラーって冷酷な独裁者として評されがちですが、実際のところは小心なところもあったり、自己演出にひたすら長けた人だった、というのは高校の世界史の授業でも習った気がします。ああこういうことなんだ、とまんまと巻き込まれつつ思っていました。

 

ラスト、シカゴとシセロの町を掌握したウイが、次々とこの先に征服するべき町の名前を叫んでいく。

最後はついに東海岸までたどりつき、ニューヨーク!!!!!の大絶叫。

 

スルスルと降りてくる脚注のスクリーン(全編にわたって随所に対比された史実の字幕解説がありました)には、ナチスドイツが占領した国々が次々と......物語はここで終わっても、ウイは宣言どおりニューヨークまで掌握するってことですよね。

そこへ背景の星条旗がハーケンクロイツに変わる不気味さ。

(私は見落としていましたがさらにそれが日の丸になっていたとかびっくり

 

ウイは虚空を見つめます。

望んでいた頂点に立って何を思う?

笑顔はありませんでしたね。

その表情に浮かぶのは狂気でしょうか......

 

カーテンコールでは全出演者の方々に惜しみない拍手が。
30人超の大所帯で、列の真ん中に立つ草彅さんはいかにも座長!という感じで頼もしく見えて素敵でした。

 

拍手と大歓声の中、またもやスルスルスル......とスクリーンが。

「"熱狂する大衆のみが操縦可能である" 

               ──アドルフ・ヒトラー」

 

ガーンガーンガーンガーンガーン

 

今の時代がちょうどSNSの普及で容易に真偽不明な情報に飲み込まれやすくなってる状況で、世論が一方にドーッと振れがちなのはみんな感じていることで、80年近く経ってからまた揺り戻しが来ているのが怖い。

最後にオーサカ=モノレールの中田さんが再びメタ視点で語りかけたように、要は自分の頭で考えろってことなんだと思います。

感受性が鈍ってるとか言ってる場合じゃない!ガツンと頭を殴られたような感覚でした。

 

何が怖いってこの作品を作者ブレヒトが書いたのが1941年ってこと。歴史は後になってわかることがたくさんあるはずなのに、戦争の渦中に ここまで実際の事件になぞらえて本質に迫るのはすごいことですね。

そもそもブレヒトさんはオーストリア併合の5年も前にすでに逃げ出して亡命しているのですね。(奥さんはユダヤ人)

なんという慧眼でしょう。

彼は「巻き込まれなかった大衆」の一人だった。

たぶん演出の白井晃さんも。

それはすごく稀有なことで、でもみんながそうやって自分の意識を確かに保つしか、独裁を防ぐ術はないのだろうな......

 

(参考)ブレヒトさんについてはお恥ずかしいことに名前以外まったくの無知だったのですが、パンフによるとこの観客の受け止め方について”異化効果”という舞台の技法としてきちんと確立された方なのですね。下記のリンクは別のブレヒト作品について書かれたものですが、なんだか受け取るものが同じっぽいと興味深く読みました。

ブレヒトと異化効果

Wikipedia: ベルトルト・ブレヒト

 

それはそれとして、ファンクミュージック(評判通りオーサカ=モノレールさん素晴らしかった!)を使った演出はとても尖っていてかつ洗練されていて、赤く染まった舞台も大変美しく(客席の座席シートがすべて赤いのも相まって)2階席の後方から見ていても、いやむしろそれだからこそ、すごくすごく楽しめました。

 

JBについてもほぼノー知識なので、音楽についてはただただカッコよくて楽しかった、という感想のみですみません。この劇においては音楽もとても重要な要素だと思うので、記述が少なくて申し訳ないです。曲名・歌詞や劇との対比について調べるのは力尽きましたが、これがわかればさらに何重にも楽しめるお芝居になってるんだろうなあ。改めて傑作。

終始出ている3人のダンサーさんが美しく妖艶でセクシー。

その動きが無言の狂言回しになっているのもすごい。

 

「No.9」でも感じたように白井晃さんの演出はすごく立体的で、どこもかしこも動いているからいくつあっても目が足りないし、2階席で観ていると場面の転換までが緻密に演出されている様がよく見えて、満足感が高かったです。

 

何度も観たくなる作品作りをされている演出家さんなので(私の中では「ガラスの仮面」の黒岩先生と同化している)今度は役者さんに関わらず白井演出作品を他にも観てみたいな。KAATも席は見やすいし椅子の座り心地はいいし、(長谷川祥久氏による)設計も美しくて、改めて好きな劇場だと思いました。

 

あーおもしろかった!

吾郎さんと慎吾ちゃんが2/2放送のabemaTVのななにーで語っていた劇評が私の言いたいことをすべて代弁して言語化してくれていて「あー!それです!!!!!」と同意しかなかったです照れ

 

Abema TV 『7.2 #新しい別の窓』 (有料で視聴可能)

◇ #23 本編:チャプター1 舞台 千秋楽終わりの草彅と合流!バス車内トーク

 

※2020/2/8まで無料視聴できます

 

パンフの編集とデザインも良き

でも役者さんたちには個々の役についてもっと語ってほしかったな

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それではここまで長々とお読みくださり、ありがとうございました!

 

2/5追記

ブログアップしてから読んだレビューや関連記事もたくさんあって、どれもすばらしいので自分用メモ

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