第48回目はコレ!
Garota de Ipanema / Stan Getz & João Gilberto
VIDEO From album 『GETZ / GILBERT 』
まだ、この曲(演奏)を紹介していなかった!
…っていう言葉は、このブログでは何度も使ってきましたが、この曲(演奏)は特別です。
今でも、このアルバムは、毎日…とは言わないですが、週に一度は聴き(店で流し)ますし、僕の音楽人生の中でも、ものすごく重要な位置を占めてます。
多分、この演奏、このブログ自体の当初のコンセプトの『僕だけが知る』的な要素が薄いがために、紹介しなかったんだと思います。
でも、これまで47回も続けてる中で、だんだん『僕だけが知る』…というコンセプト自体が、それほど重要では無くなり、タイトル通り純粋に『僕の好きな』…という視点でセレクトする感じに変化してきたので、この曲(演奏)の登場となったのでしょうね。(←自己分析ってやつです)
さて、このアルバム。
何がすごいか…って言ったって、この1枚でボサノバとジャズが見事に融合させてみせた…という事か。
このアルバムよりも一足先に、ブラジルでボサノバという音楽スタイルが完成した訳なのですが、このアルバム以前のボサノバは、例えばこのアルバムの主役の一人、ジョアン・ジルベルトの1st~3rdアルバムを聴く限りは、ブラジルの歌謡曲の新しいスタイル…くらいの感じで、その後に、これだけジャズと密接になる…という事は想像つかない演奏なのです。
また、ボサノバには欠かせない作曲家、アントニオ・カルロス・ジョビンのアルバムも、どちらかというとイージー・リスニング的な感じで、ジャズ的要素は薄い…というか皆無なのです。
しかし、このボサノバ、意外とアメリカでウケたので、アメリカの名門ジャズ・レーベルのVerveが、Verveの契約アーティストで、当時の大人気ジャズ・テナー・サックス奏者、スタン・ゲッツがジョアン&ジョビンのボサノバを作り上げたアーティスト・コンビと組ませて録音したのですが、このときに、最高の『Chemical reaction(化学反応)』が起きたわけです。
今回紹介している『Garota de Ipanema(イパネマの娘)』も、出だしから2コーラスは、演奏自体は、それまでのブラジルの通常のボサノバという感じなのですが、もうまず、録音が、アメリカのエンジニアが行っているので、『ジャジー』な雰囲気が、充満する訳です。
それまでのブラジルでの録音の、歌謡曲っぽさは、微塵もありません。ハード・ボイルドな『ジャズの音』なんです。この事は、ジャズのアルバムにおいて、『録音』という作業が、いかに重要か…を実証している様です。
そして、2コーラスのボーカルのあと、このアルバムの唯一のアメリカ人、スタン・ゲッツのアドリブになる訳ですが、この瞬間、ボサノバとジャズは、完全な融合を果たしたわけです。
例えばビートルズの曲などをジャズ・ミュージシャンが演奏しても、どこか“よそよそしさ”を感じるのですが、ボサノバは、今ではもう、「ジャズの一部」となっています。
それは、この瞬間があったからなのです。
もしもVerveがここまで見越していたとしたら、このアルバムのプロデューサー、クリード・テイラーは、もう天才としか言いようがないですね。
あと、このアルバムのすごさは、まだまだあります。
収録されている曲は、今日ではボサノバ・スタンダードばかりなのだが、当時、ボサノバのスタンダードはまだ確立されておらず、このアルバムに収録された事により、ボサノバのスタンダードになりえた…と言っても過言ではないでしょうね。
そう考えると、このアルバム1枚で、その後のジャズにおけるボサノバを決定づけられたのでしょうね。
なお、ブラジルでは、ボサノバ自体がそもそもそんなに流行らなかった…という話をブラジル人から聴いたことがあります。リオの一部のクラブで観光用に歌われているくらい…だそうです。
おもしろいですね。
こういう曲(演奏)にたまに出会えるから、ジャズのCDを買うのをやめられなかったんですね。
それでは皆様、よい1日を!
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