はやとの風 【JR九州 吉松〜嘉例川】 | 旅するカメラ

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宮崎県の「えびのI.C.」で九州道を降り、そのまま国道268号線を下り鹿児島方面へ走る事約10分程。
案内標識に沿って右折すると鹿児島県のJR吉松駅が見えて来た。
JR九州の観光特急「はやとの風」の始発駅である。

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(なんだか白い軽トラがよく似合うのんびりとした駅である。)


吉松駅からさらに熊本方面へ走る観光特急「いさぶろう・しんぺい号」を乗り継ぐと
肥薩線を心行くまで満喫できるのだが、この日は他の用事があった為に軽く偵察がてらに
はやとの風に乗り込んでみた。


平日だったのでJR吉松駅は人気が無かった。
一応調べて「はやとの風」が毎日運行しているのは知っていたのだが念の為に駅員さんに
「今日ははやとの風は走っていますか?」と尋ねてみた。
「大丈夫ですよ。今11時3分ですが5分に真ん中のホームに入って来ます。
 発車は21分ですのでその間座席を確保されていれば大丈夫ですよ。」と
とても親切に教えていただいた。うーん、やっぱり南九州の方はなんだか温かい。
はやとの風には指定席があるのでそれも尋ねてみたのだが
「今日は平日だから自由席に十分座れますよ。指定席の料金を頂いたら怒られます(笑)」との事。

嘉例川までの切符を買い、はやとの風がホームに入って来るのを待った。

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一人、間違いない電車ヲタクを思われる男性が一人カメラを持ってホームの端でぶつぶつ言いながら
列車を待っているのが気になってしょうがなかった。
ハッ。
端から見れば私も彼と同じように見えてしまうのだろうか・・・?

とか思っていると、列車が入って来るアナウンスが。
雨で霞むホームの先に黒い車体の「はやとの風」が見えた。
うわー、やっぱりこの瞬間はヲタクだろうが、ただの旅人だろうがワクワクするものなのだ。うん。

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鹿児島中央駅からやってきた上りの「はやとの風」は吉松駅が終点となり折り返し鹿児島中央駅へ向かうのだ。
さっきまで誰もいなく少しさみしいホームだったのが一気に観光客で賑わった。
こうなってもらうと写真も撮りやすいのだ。


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うきうきし過ぎながら自由席へ。
車内はちょっとレトロな感じでかわいい。
まるい灯りがなんだかいい感じ。

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こんな展望スペースもあったりして。
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はしゃいで写真を撮っていると人吉からの同じ肥薩線の観光特急「いさぶろう号」がホームに入って来た。
こっちにも乗ってみたい・・・

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はやとの風号もいさぶろう号も同じキハ47系。
JR九州でよーく見かける普通のディーゼル車だよ。
香椎線もこれが走っているから見慣れ過ぎ。
それでもこんな風に観光特急として人気者になってしまうとは・・・。
なんだか嬉しいよ、私。(涙)


そんなこんなでやっと発車。
嘉例川駅までは特急で停車駅4つ分。
30分間の電車の旅である。

ちなみに自由席の客は私一人。
指定席の方は人影が見えるのだが。。。

ちょうど新緑が芽吹き始めた霧島の自然の中を列車は駆け抜けて行く。

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2つ目の停車駅である「大隅横川駅」。
ここの駅舎は味のある木造駅舎。
開業当時のものだそうだ。
戦時中、米軍機からの機銃攻撃を受けたが焼失を免れて現在に至るとの事。
駅舎には入らなかったので実際には見る事は出来なかったけれど、はやとの風の車内アナウンスによる
案内では駅舎には機銃掃射の跡が残っているそうである。
歴史を見て来た駅舎なのだ。重みがある。
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ちょうど大隅横川駅を出た時に、せっかくここまで来たのだからどうしても指定席に乗ってみたいと言う想いが
強くなり、車掌さんから指定席の切符を2駅分だけ購入した。
車掌さんからは「え?自由席はこんなに空いていますよ?」と、かなり変な顔をされたのだがここまで来たら
恥はかき捨てだと開き直り指定席へ。

指定席の車両の方がちょっと明るい感じ。
つくりは自由席とほぼ同じ。
座席のデザインがちょっと違うかな??

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ホット珈琲と名物だと言うメロンパンを車内販売で購入した時にはすでに残り1駅となってしまった。
楽しい時間は本当にあっという間に過ぎ去ってしまうものだ。
通勤で同じ時間を使ってもこんなに早くは感じないのに。不思議だ。


そしてついに私の今回の目的地である「嘉例川駅」に到着。

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明らかにはやとの風に乗っていた乗客よりも多くのギャラリーがホームに。
みんな一斉に写真を撮り始めた。
先頭車両の前では記念の日付入りプレートと一緒に写真を取ってくれるサービスも。

そして5分程停車した後、ついにはやとの風号は鹿児島中央駅に向けて出発して行った。
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(いわゆる「撮鉄」と呼ばれる人達の中のタブーで「列車の後ろ姿を撮る」と言うのがあるらしいが、
 私は撮鉄ではないのでいいのだ。)



嘉例川駅は無人駅である。
駅舎も開業当時から利用している100年以上経っている木造で、
味があると言うか本当に神社みたいな空気が流れる駅舎である。
何と言うか神々しさを感じる。

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無人駅だがボランティアの方が掃除していると言う事でとても小奇麗である。
ホームには花も生けてある。

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昔の駅員室と思われるスペースも今は展示場として公開されている。

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昔使っていた駅の案内板も無造作に置かれていたりして・・・

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この嘉例川駅を訪れたのはこれが2度目。
最初に訪れた時はまだカメラを持っていなかった時だった。

日本で一番古い駅舎だとガイドブックに載っていたから立ち寄ってみたのだったのだが
そこで観光客のおじさまから写真を撮って欲しいと声を掛けられた。
手渡されたのはフィルムの一眼レフのカメラ。
こんな大きなカメラを持つのも初めてだったのに、そのおじさまは
「これが最期の一枚のフィルムですからお願いします。」と言う。

全然カメラの事は分かりませんと断ったのだがシャッターを押せばいいだけだからと言われ
私がご夫婦の写真を写す事に。しかも最期の1枚のフィルム。
フィルムだからもちろんちゃんと写っているかどうかもその場所で確認する事が出来ない。

ドキドキしながらシャッターを押したあの感覚は忘れられない。

それから・・・・しばらくして一眼レフのカメラを買った。
この嘉例川駅は私がカメラを手にするきっかけになった場所であるのだ。



・・・と、少しその時の事を思い出していると何かが変わっている事に気が付いた。

駅にかかっている駅名の板である。
前訪れた時は白地に黒い文字(ゴシック体)で嘉例川と書かれていたのに、
今は木の板で変わっているではないか。

2007年2月撮影
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そう、前訪れた時に古い駅舎に白い味気ない駅名がなんだか不自然だった覚えが。
やっぱりみんな同じ意見だったんだろうな。



折り返し吉松駅へ戻る列車をホームで待つ。
向こう側にももう一つホームだった跡(?)が見える。
昔はこの肥薩線がメインの交通手段だったのだ。
行き交う列車も多かったんだろう。

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今はすっかり観光客が訪れるだけの小さな駅へと変わってしまったけれど
風雨に堪え、戦争に耐えて今まで残って来たこの駅舎と肥薩線そのものを
廃止されずに残って行ける様少しでも出来る事がないか・・・なんて考えてしまうのであった。
そんな何かを考えさせてくれる駅。




帰りの列車は一両のディーゼルワンマン運行車。
列車でも電車でも無い。
何と言ったらいいんだ??


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一両編成の列車の前から乗り込んでしまい整理券を撮り忘れて
運転手さんにあきれられたりしたけれど、それもまたいい思い出という事で(笑)

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往復で1時間半ほどで吉松駅へ戻って来た。
再発行してもらった整理券と乗車賃を吉松駅の駅員さんに渡すと
「あら?もう戻ってきたの?」と駅員さんに笑いながら聞かれた。


そんなちょっとしたふれあいがまたいい思い出になるのである。


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