3 白雪姫
何故だかわからない。
だが、5年前のあの日、確かに言葉を失った。
あのマッチ売りを美しいと思った。
生きているものが持ち得ない、あの完璧な抜け殻に惹かれた。
睫毛に積もった雪も、動かず青くなった唇も、彼女の全てが美しかった。
だから、彼女を忘れないかぎり、婚約は無理な話だ。
それなのに…
「となりの国へは行ったか?」
父の一声で婚約者を探しに行くことになった。
「いやぁ、なんか?雪国だし?閉鎖的だし?近寄りずらかったんすわ」(行きたくねぇ)
なんて、言えるわけないだろ。王子なんて、いつ何時も外面は良くしとくものさ。
「いえ、」
「そうか、それならば丁度いい。何しろ、世界一美しいと言われた姫がいるところだからな」
こいつ、俺にその姫落とさせて何する気?どうせ、やましいことしか頭にないんだろ。
俺はそんなこと、微塵も考えていないぞ。ただ、ちらっとよぎっただけだ。
ん?俺にその世界一美しい姫を落として来いっての?
いや、無理無理。俺が世界一イケメンじゃなきゃ、姫に釣り合わねぇだろ。
親父はそういうとこ、傲慢&むりくりでやだね。
でも、行っちゃう俺も俺だよね!
「姫?なんのことでしょう。それより…」
おーい、親父ー、王妃にはぐらかされたぞー
「明日、舞踏会が開かれますの。よかったら一緒に踊りましょう?」
でも、綺麗な女性だな。死んでいればもっと…おっと、失敬。
「私に熟女好きという性癖はありませんので、よかったらお姫様のほうを…」
なーんてな。言わねぇよ。バーカ。
しかし、なんではぐらかしたんだ?
娘が憎いのか?世界一美人だから?
なんか、どろどろだな。怖いよ。男でよかった。
帰り道の途中、いい年したおっさん共のものと推測されるすすり泣きをきいた。
それは小さなかわいい家からきこえた。
本心から救ってやりたいと思った。集団で親父狩りにでもあったのだろう。
_コンコン
「すみません…」
入った瞬間、目を奪われた。
日に焼けていない黒い髪。雪のように白い肌。
おっさんの制止も聞かず、家に入り込む。
なんということだ…
世界一美しい姫が、世界一美しい姿で眠っていた。
「なんと美しい…」
そこからは覚えていない。
小人があんぐり口を開け、俺はゆっくり顔を上げる。
何度見ても美しい。初恋のマッチ売りよりも綺麗で、愛おしい。
だが、次の瞬間、彼女の瞼がピクンと動いた。
「ふぁぁ…」
ゆっくり目を開ける。深い海の色。
生きていても、こんなに美しい女性がいるなんて。
「…Guten Morgen(おはよう)、白雪」
小人がどよめく。そんななか、白雪は俯いた。
「…許さない」
「白雪姫?」
小人のひとりが呼んだが、顔を上げずに白雪は喚いた。
「許さない!許さない!許さない!」
「白雪…」
俺は彼女の手を握る。大丈夫。
誰かが君の復讐を許さなくても、俺は許すから。
「復讐したいでしょ?」
苦しかったんだろ?辛かったんだろ?
君が死んでも、あいつは平気な顔で舞踏会を開いていたんだぜ?
あいつは報われて当然だ。だから__
「手を貸すよ」
白雪は笑顔で抱きついた。
「ありがとう!じゃあ、鉄の靴を用意しておいて?」
「あぁ、楽しかった!」
「それはよかった」
「ありがとう…でも、なんでここまでしてくれるの?」
「君が世界一美しいからさ」
「ふぅん、でも、あの女も哀れよね。おとうさまが私ばっか見るから…」
「お父様じゃなくても、男ならそうなるとおもうぜ」
「そうなの?」
俺は苦笑した。純粋だな、君は。
「…ね!」
「ん?」
「ずっと一緒だよ!!」
The end……
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かさの気の向くまま書いていたらbadendになりました。
この場合、happyendってなんだろう。
一、赤ずきんさんがんばらない(trueend)
二、王子が一途にマッチ売りの少女好き(白雪を止めてくれ!)
三、白雪が復讐しない(「私の、お母さんなの…」)
四、狼の失踪(駄目だ、分岐する)
いや、難しいなあ。