【無期転換申込における労働契約の成立】

無期転換申込における労働契約の成立について、まずは労働契約の成立を考えてみましょう。

 

労働契約が成立するための要件は労働契約法第6条に記載されています。

 

「労働契約法第6条」

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

「解説」

(1) 趣旨

当事者の合意により契約が成立することは、契約の一般原則であり、労働契約についても当てはまるものであって、法第6条は、この労働契約の成立についての基本原則である「合意の原則」を確認したものです。

(2) 内容

① 法第6条は、労働契約の成立は労働者及び使用者の合意によることを規定するとともに、「労働者が使用者に使用されて労働」すること及び「使用者がこれに対して賃金を支払う」ことが合意の要素であることを規定したものです。

② 法第6条に「労働者が使用者に使用されて労働し」と規定されているとおり、労働契約は、使用従属関係が認められる労働者と使用者との間において締結される契約を把握する契約類型であり、労働者側からみた場合には、一定の対価(賃金)と一定の労働条件のもとに、自己の労働力の処分を使用者に委ねることを約する契約です。

③ 民法第623条の「雇用」は、労働契約に該当するものです。また、民法第632条の「請負」、同法第643条の「委任」又は非典型契約であっても、契約形式にとらわれず実態として使用従属関係が認められ、当該契約で労務を提供する者が法第2条第1項の「労働者」に該当する場合には、当該契約は労働契約に該当するものです。

④ 法第6条の「賃金」については、第2条の(2)④と同様です。

⑤ 法第6条に「合意することによって成立する」と規定されているとおり、労働契約は、労働契約の締結当事者である労働者及び使用者の合意のみにより成立するものです。したがって、労働契約の成立の要件としては、契約内容について書面を交付することまでは求められないものです。

また、法第6条の労働契約の成立の要件としては、労働条件を詳細に定めていなかった場合であっても、労働契約そのものは成立し得るものです。

(厚生労働省「労働契約法のあらまし」H24.12より抜粋)

 

上記の通り、本来労働契約は労使の「合意」によって成立します。しかし労働契約法第18条では無期転換の申し込みをすると、使用者が申し込みを承諾したものとみなされ無期労働契約がその時点で成立します。(無期に転換されるのは、申込時の有期労働契約が終了する翌日からです。)この場合、無期転換権を申し込ませないことを労働契約更新条件に盛り込むなどはできません。法の趣旨からこのような意思表示は無効と解されます。

 

過去の時代は臨時的に発生する業務に対して有期労働者との間に有期労働契約を締結していました。該当する業務が終了すると雇用も終了することが一般的でした。そのため、一般の無期労働契約者よりも時間単価を高く設定して“臨時的に助っ人に来てもらった”という感覚ではなかったでしょうか?

 

しかし一部の事業主は有期労働契約者を「雇用の調整弁」と考えてしまっている現状があります。そのため、労働者に対する安定した就労機会の提供を主旨として労働契約法18条は制定されたと考えます。これからは従業員の就労環境の安定が企業の安定の要因になることを期待します。

 

以上のことより、有期労働契約者を無期労働契約者に転換した際の就業規則などの整備はお済でしょうか?労働契約書の見直しや無期転換社員就業規則の整備などをぜひお勧めします。