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外は雨が降っている。
天気も不安定な秋の空。うっかり薄着しようものなら寒さに身を震わす季節である。
そんな中、雨も降っているというのに、露出の激しい巫女装束をした女性が神社の縁側で座り込んでいた。外の雨音に背を向けるように柱に背中を預けている。
時折、やはり雨音が気になるのだろうか外を気にするように振り返っている。
「………お邪魔するわよ。」
背中を気にしていたのは直感で何となく誰かの気配を感じたからだ。その気配がまっすぐこちらに向かってきて声をかけてきた。
「雨の中傘も差さないで出歩いたら風邪引くわよ。」
どうやら昔からの知り合いが訪ねてきたらしい。
「引けるものなら引いてみたいわね、風邪。」
場合によっては皮肉ともとれるが、その少女は妖怪になってから寒暖に強くなったそうだ。風邪とも縁遠いのだろう。そもそも彼女は頭上に防水魔法を施しており、濡れる心配もなかったのだ。
「ろくなもんじゃないわよ。だるいし、寒いし。お粥しか食べさせてもらえないし。」
「大変そうね。」
「そりゃあもうね......とりあえず上がってきなさい。なにも出せないけど。」
促すと少女は縁側に腰掛けた。
「あんたから来るなんて珍しいわね。いつも家で引きこもってばかりだったのに。元気にしてる?」
「どこぞの巫女のおかげ様で。」
「大変そうね。」
「他人事だと思って......」
「あの子は仕方ないわよ。性格はあれだけど才能は無駄なくらいあるんだし。紫すら手を焼くほどよ。」
「初めて会ったときは驚いたわよ。まさか貴女に子供なんてね。」
「養子だけどね。魔理沙にはさんざんつっこまれたわよ。『相手は誰だ!』とかね......」
いつのことだったか。娘が来たのが四、五年前のことだったからその辺りだろう。それから数ヶ月間巫女として修行をつけてから見る見るうちに上達し、今や巫女家業は代替わりしたも同然になった。
「……で、貴女はどうだったの?さっきも言ったけど最近貴女のことを全然聞かなくなったから...」
「ご覧の通りよ。静かに質素に暮らしています。」
「で?」
「?」
「もう自分が出張る必要がなくなった。わざわざ大変な思いをして何の稼ぎにもならない仕事をせずにすむから、それで日々を無気力に過ごしている?」
「それでいいじゃない。もう何だかんだではしゃいでいられる歳でもないんだし。」
「みんなが心配してるわよ。口には出さないんだけどね。」
「どうだか。それにしたって、―――」
少し、言うのをためらった。余り自分でもこういうことは言いたくない。
「―――今更どんな顔して表へ出ろっていうのよ......」
妖怪退治なんてもう数年はやっていない。巫女としての仕事はすべて娘に奪われたようなものだ。鈍りきったこの体ではもう誰と戦っても勝てやしないだろう。
そのことを再認識して激しい自己嫌悪に苛まれた。
「もう私は巫女ですらないんだから。」
「………それで、いいじゃない。」
「‥‥‥え?」
「今どうしていようが貴女は貴女なんだから。さっきも言ったでしょ?みんな『貴女』を心配してるって。」
「‥‥‥」
「あの子が好き勝手暴れていようとも私達にとって、貴女も博霊の巫女なんだから。貴女に取って代わるものなんて永遠に出てこない。」
「‥‥‥」
言葉が出てこなかった。彼女の表情を窺いたかったのだが、背中合わせの様な位置関係だったのでそれはかなわなかった。
そういえば彼女はいつも傍らに最低でも一体の人形がついていたのに今は彼女一人だけだった。その理由を訊きたかったが、どことなく後ろめたいものを感じてしまってそれも訊けなかった。
「それじゃ、そろそろお暇するわね。」
「あっ‥‥‥ちょっと待って。」
とっさに呼び止めた。特に理由はなかったが、あるいは名残惜しさを感じたのかもしれない。
私は玄関口に行き、傘をとって戻ってきた。
「貸してあげる。」
彼女は軒下で待っていてくれた。
「………ありがとう。」
「後で返してよ。」
「返すわよ。どこぞの魔法使いじゃないんだから。」
それじゃ、と言うように踵を返して帰って行く。
「‥‥‥そういうあんたも魔法使いでしょうが。」
その背中にそう言ってやったら、彼女はくすりと笑った。
「そういや、そうだったわね。」
そう言って雨の中一人、傘を差して帰って行った。
―――今度、宴会でも呼ばれたら行ってみようかな。
何となく、気分が軽くなった気がする。
雨も直にやむだろう。
結局、今日も誰も来なかった。
ただ妖怪が一人、やってきただけだ。娘がいなかったから仕方なく私が応対した。
少し話をしたら帰って行った。そういえば娘以外と話すのも久し振りな気がする。
あぁでも、やっぱり結局は―――
今日も何事も無い一日だった。
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A.永遠の巫女(蓬莱人形ver)
携帯打ちで目が痛くなりましたoratorioです。
冒頭のイメージのまま最後まで行っちゃいました。落雷なんてなかった...
構想に一日、執筆に丸二日。う~ん自分って本当に集中力がない(笑)
そろそろ
半年間もためてるやつを書き上げたい......(どんだけ時間かけてるんだか)
......ガンバリマス
なにか、ご感想いただけたら泣いて喜びます。よろしくお願いします(_ _)
それでは