最近ブログのメッセージで、よく聞かれることがある。
どんなヘルパーが良い?
どんな看護師さんだと安心できる?
家族はどう接したらいい?
もちろん、人によって答えは違うと思う。
でも、長い間介護を受ける立場になって感じるのは、
本当に信頼できる人には、共通する特徴がある
ということ。
今回は、ALS当事者の視点から感じていることを書いてみようと思う。
ALSになると、身体を自由に動かすことが難しくなる。
私も今は一日のほとんどをベッドの上で過ごしている。
動けていた頃は、
仕事
家事
趣味
外出
など、自分でやることがたくさんあった。
でも今は違う。
自分で動く代わりに、人と関わる時間が増えた。
すると自然と、
『この人は本当に信頼できる人なのか』
ということが見えてくるようになる。
①信頼できる人は『話を聞く』のが上手い
まず感じるのは、
信頼できる人ほど、話を聞くのが上手い
ということ。
これは単純に会話が上手という意味ではない。
例えば私の場合、透明文字盤という意思伝達の方法を使っている。
透明な板に書かれた文字を視線で選び、相手に読み取ってもらう方法。
一文字ずつ伝えるため、普通の会話よりも時間がかかる。
だからこそ、その人の姿勢がよく見える。
勝手に間違って解釈してしまう人
最後まで聞いてるようで、実は理解していない・しようとしない人
自分の話ばかりする人
でも信頼できる人は違う。
話しやすい雰囲気を作ってくれて、
相手を理解しようとしたり、共通点を探してくれたりする。
②信頼できる人は『気づく』のが早い
ALSでは、
痰が詰まる
姿勢が苦しい
身体の一部が痛い
といったことが日常的にある。
しかし、自分で体を動かして直すことはできない。
だからこそ、
『気づいてもらえるかどうか』
がとても重要になる。
信頼できる人は、常に観察している。
表情
呼吸の変化
視線の動き
普段との違い
そして、
『大丈夫?』
だけで終わらず、
『心配事?』『喉が辛いの?』『どこが苦しいの?』
と具体的に聞いてくれることが多い。
本当に相手を見ている人ほど、小さな変化に気づく。
③信頼できる人は『触れ方』が優しい
介護の仕事では、
体位変換
着替え
オムツ交換
など、身体に触れる機会がたくさんある。
不思議なもので、
同じことをしていても人によって全然違う。
外から見ていると分からないかもしれない。
でも、介助される側には分かる。
信頼できる人は、
必要以上に力を入れないし、動作も丁寧。
関節の動きなど、体の動かし方をよく分かっている。
そして何より、
『人の身体を扱っている』
という意識が伝わってくる。
優しい手には、安心感がある。
④信頼できる人は『分からない』を認める
意外かもしれないが、
私が信頼できると思う人は、
『分からない』を素直に認める。
むしろ、
『分からないから教えて』
と言う。
ALSの苦しさは、ALSになった人にしか分からない。
だから、
『気持ちが分かる』
と言われるより、
『分からないから教えて』
と言われた方が、安心する。
謙虚さは、相手への敬意でもあると思う。
⑤信頼できる人は、当たり前を当たり前と思わない
健康な時は、
寝返り
水を飲む
鼻をかく
姿勢を変える
そんなことを意識しない。
でもALSになると、それができなくなる。
信頼できる人は、
そのことを理解しようとし、
その事実を決して忘れない。
例えば、
『クッションの位置は大丈夫?』
と聞いてくれたり、
『本当にこれで大丈夫?』
と何度も確認してくれたりする。
こうした小さな気遣いの積み重ねが、安心感につながる。
⑥信頼できる人は、学び続けている
信頼できる人は、
『もう分かった』
と思わない。
常に学ぼうという姿勢がある。
介護技術
医療知識
コミュニケーション
そして、人の気持ち
学びを知識で終わらせず、実際の行動に移している人ほど信頼できる。
知識と行動が一体な『知行合一』を常に意識している。
⑦信頼できる人は、意識せずとも自然に気遣いや配慮が出来る
信頼できる人は、気遣いをアピールしない。
常に相手の気持ちや体の状態を、
相手の視点に立って、自分事のように考える。
こうしたら相手は楽だろうな
これをここに置いたら見やすいだろうな
疲れているだろうからこれをやっておいてあげよう
スムーズに終わるように手伝ってあげよう
など、相手の立場で考えることが身についている。
やってあげているのではなく、
相手が少しでも過ごしやすくなることを考えている。
だからその配慮は押しつけにならず、自然に伝わる。
⑧信頼できる人は、『生知安行』を体現している
『生知安行』という言葉がある。
生まれながらに物事の道理を理解していて、
努力しなくても自然と正しい行いができる
そんな意味を持つ言葉。
もちろん、誰もが最初から完璧なわけではない。
でも、本当に信頼できる人を見ていると、
一見、厳しそうに見えても、
思いやりや優しさが無理なく行動として表れている。
言葉で語る前に行動する。
見返りを求めない。
誰かが見ているからではなく、
当たり前のように弱い人を大切にする。
そんな姿に人としての深さを感じる。
⑨信頼できる人は、相手の可能性を信じている
信頼できる人は、寝たきりの人の『できないこと』を見ない。
『今できること』
『これからできるかもしれないこと』
を見ている。
ALSになると失うものは確かにある。
でも、それが人生の全てではない。
信頼できる人は、
病気の向こう側にいるその人自身を見ている。
だから、一緒に前を向く力を与えてくれる。
人は、信じてもらえることで強くなれる。
⑩信頼できる人は、相手を『一人の人間』として見ている
結局これに尽きる。
ALSの人…利用者…患者…
ではなく、
その前に一人の人間。
人生があり、
価値観があり、
習慣があり、
好きなものがあり、
大切にしてきたものがある。
そして、自分の考えもある。
それを理解しようとする人は信頼できる。
病気だけを見ない。
障害だけを見ない。
その人自身を見ている。
だから信頼できる。
私が出会った信頼できる人は、
特別な資格を持っていたわけでも、
特別な技術があったわけでもない。
もちろん、
喀痰吸引
体位変換
などの技術はとても大切。
でも、それ以上に大切なのは、
相手を知ろうとする姿勢
相手の気持ちを理解し想像する姿勢
気づこうとする姿勢
そうした人としての在り方なのだと思う。
ALSになると、多くの人の支えが必要になる。
だからこそ、当事者はよく見ている。
技術だけではない。
言葉遣いも、
態度も、
思いやりも、
すべて伝わっている。
その中で私が感じるのは、
『この人なら安心して任せられる』
と思わせてくれるのも大事だけど、
本当に信頼できる人とは、
特別なことをする人ではない。
完璧な人でもない。
ただ、
『この人は自分を同じ一人の人間として見てくれている』
そう感じられる人、なのだと思う。
もしこの記事を読んでいるのが、当事者の家族や支援者、医療・介護職の人なら、一つだけ覚えておいて。
ALS当事者は、思っている以上によく見ているということを。
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