お昼時間も終わり、『おやつの時間』に差し掛かろうとした昼下がり、彼は営業所にやって来た。

『カンペイ』ちゃんである。
と、言ってもあの『間 寛平』では勿論ない。
うちの会社のヘッド=『社長』である。(シバかれるで・・・)

以前、先輩に「なあ、マッコイ!うちの社長って陰で”かんぺいちゃん”って呼ばれてるんやで!」って教えてもらった事があった。
声はダンディーやねんけどなあ・・・。 いかんせん、残念ではありますが”顔”がそっくりなんですわ・・・。
その事を知ってしまって以来、どんなにまともな話をしてはっても、頭の中でうちの社長が、「かい~の~」とか「アヘアヘアヘ~」とかしている姿を想像して、いや妄想してしまって吹き出しそうになる。
よって、あの日以来、私は社長の顔をガン見する事が出来ない。(お前、クビや!)

今日も必要以上のデカイ声で「元気にしとるか~!」といきなり営業所に入ってきた。
正直、迷惑や・・・。今から携帯の麻雀ゲームしようと思ってたのに。。。(仕事中やろ!!)
目的は分かってるんやぞ!!暇つぶしやろ!!!当たってるやろ!!!

『かんぺいちゃん』は、ツカツカっと僕の後ろに来ると、今しがた入れたばかりのコーヒーを指さして、僕の真向かいにすわる女子社員にこう言った。
「XXちゃん、コーヒー入れてくれへんか!こんな泥みたいな濃い~のいらんで!」とぬかしやがった
『かい~の分際で、何が濃い~の入れるなやあ!!』と心の中で叫びながら、愛想笑いを浮かべた。
女子社員がコーヒーを入れに行っている間、うちの営業所のゴマすり”ブーちゃん”が、社長の座る椅子をそそくさと持ってきて、うちの上司の席の左隣=僕の右隣りにポンと置いて「どうぞ」とゴマすりやがった  
『アホかボケ!!よりによって、俺の方に置くなよ!!笑ろてまうやろ!!』と思いつつも、仕方なく仕事で忙しいフリを演じて、苦痛に耐えるしかなかった・・・。

暫くして、女子社員がコーヒーを持ってきて、”かんぺいちゃん”はうちの上司と雑談。
仕事の話、ゴルフの話などに続き、話題はいつしか最近流行りの『インフルエンザ』の話に。

「最近、インフルエンザで休むヤツ多いなあ、オイ。インフルエンザにかかったら無条件で一週間  休めるからな~。そういや、うちの総務部、ちゃんと診断書もらって確認しとんかいな!?電話しとこ!!」     
半分独り言みたいな事言いながら、「かんぺいちゃん」はその場で総務部に電話。
申し訳ありませんが、本社に帰ってから言ってもらえません?

「何、確認してない!?お前、そんなんやったらホンマにインフルエンザなんかどうなんか分からんやないか!!しっかりせい!!」と言って電話を切る。
アンタ、どんなけ社員の事信用してないんや。。。 当たり前なんやけど。。
「ホンマに自由な会社やで、なあ、マッコイ(もちろん本名で)!!」と急に振られた!!
『えへぇ~、俺~!?』
急に振られたアドリブに弱い男「『マッコイ』は、思わず社長の顔を見て、「ホンマですよね~」と返してしまった。
しまった、しまった、島倉千代子。。。。。 カンペイちゃんの顔は笑っていたが、目は笑っていなかったように見えた・・・。細い目が、少しだけ、ほんの少しだけ見開かれていた。
それは、「お前、それはワシの管理不行き届きやって言いたいんか!?エー、おい!!」と言っているかのように見えた・・・。

僕はこわばった笑顔が崩れぬまま、パソコンの画面に顔を戻した・・・・。
『俺、きっと干されるなぁ~、ハハハ・・・・』

”かんぺいちゃん”は、暫く上司と雑談をして、『ほな、ワシ帰るわ!!』と言って営業所を出ていった。その後ろ姿は、どう見ても”あへあへあへ~”にしか見えなかった。

ああ、サラリーマンって辛いなあ・・・。ああ、サラリーマンって、危険がいっぱい。。