メモ帳的な怖い話

メモ帳的な怖い話

なんとなく怖い話を載せていきます。チビッても知らん(´・ω・`)

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これはだいぶ前のことなんだけどね。あんま怖くないが……
池袋に住んでいた友達と経験したことなんだ。

池袋という土地は繁華街を離れると、急に田舎じみた様相を見せる。
カラスが鳴いて土塀にとまってるあたり、ここが東京だという事すら忘れさせる。
いいかえれば、ずっと昔から変わらない場所。そういう場所が多いのは理由がある。
工事できないからだ。なぜ?


友人は怖い話が好きだが、幽霊は信じない。そういうヤツだった。
当然のごとく、全国各地とは言わないが、東京周辺の幽霊スポットは全部回っていた。
何度か誘われたが、私は霊感が強いほうなので、(霊能者レベルではない)
そういう行為が楽しいだけのものでは無いと知っていたので、断り続けた。
しかし、いさめるべきだったのかもしれない。
だがあの頃のあいつは、なんかこう……関わりたくない空気を持っていた。すでに憑かれていたのかもしれない。

しかし、大学卒業間際に、そいつに家に「遊びこないか?」と誘われ、無碍にも断れず、酒を購入しブラっと出かけた。

そいつはやや青ざめてて、にやにやと出迎えた。
「おう、来たな」
俺はこいつの家が池袋にあると知っていたが、場所は知らなかった。
だから先を行くそいつの後をとぼとぼ歩いた。
カラスが鳴いた。日は翳り、すぐ沈んだ。

繁華街を離れ路地裏。長い墓地の横の道を歩く。
いいようのない悪寒が俺をつつんでいた。

「ここだ」
私の悪寒は限界に達し震えた。そこは夕闇に浮かぶ廃屋だったのだ。
「ここどこよ?」
「肝だめし!ここ、東京最後の幽霊スポット!」
私はあきれた。友人にかつがれて連れ出されたのだ。
しかし、ここで逃げ返すのも格好悪い。

そこは元々個人病院だったようだ。
窓ガラスは割れ、心ない暴走族の書きなぐった落書きが、白い壁に赤い字で乱雑に書かれている。
『夜露死苦』……恥かしい落書きだ。
中に懐中電灯をつけて入る。友人の顔は嬉々としている。
私に悪寒がたえまなく襲った。なんでこいつ平気なんだ?
友人はいろんな部屋を観て回った。大方の家具はなくなっていた。
暗い部屋に倒れた椅子がぼんやり見える。注射器の破片が妙に不気味だ。
友人が二階に上がる。
「床ぬけるかもしれんから、俺はいかんぞ!」俺はそう言った。友人はそれを聞くと笑った。
笑いながら上がっていった。俺は無償に腹が立ったが、怖さのほうが勝っていた。
友人が笑っている……あのやろう。
私はふと時計を見た。
?七時に入ったはずが、すでに九時を回っている。こんなにいた覚えないけど……
すると上から、話し声が聞こえてきた。
あれ?誰かいたのかな?1人いることに耐えれず、私は二階へ上がった。

二階は左右に病室が続いていた。まっすぐ廊下が伸びている。暗かった。
話し声は暗い廊下の奥から聞こえていた。一瞬ぞっとした。
友人が廊下の奥で背中を向けて立っているのが、暗闇にぼんやり見える。
話し声は続いている。
「ええ……です」「ああ、そうか……」
声は友人だけだ。どうやら、廊下の突き当たりにある鏡に向かって話しているようだ。
驚かそうとしてるんだ……と思いつつも、その異様な光景に俺はいたたまれなくなった。
「……だよね。怖がってんの。ばかみてぇえええ」
どうやら私の悪口を言っているようだった。
俺が引っぱって帰ろうと近づいたら、突然友人が笑い出した。
「あはははっはははははははははは!」
突然の爆笑に俺はどきっとしたが、乱暴に友人の肩をつかみ振り向かせた。
次の瞬間凍りついた。
振りむいた友人は無表情で、白目をむいて、よだれを垂らしていた。
その肩越しに見える鏡。そこには爆笑する友人が私を睨んでいた。
俺は悲鳴をあげた。なぜなら、鏡の中の俺も爆笑していたからだ。

それからよく覚えてないが、友人の手を引っ張って出たようだ。
そいつはそれ以来学校に来なくなって、四年の卒業を間際にして学校を辞めた。消息は不明。
でも、たまに鏡を見ると、後ろの椅子に座ってたりする。

ps死んだのか、生霊なのか……どっちでも厭です。
もしかしたら、これ読んだ人のとこ出るかも。人見知りしないやつだから。
坊主頭(五厘w)だからすぐ分かると思うです。怖くなくてスマソ
ほんのり怖いかどうか分からないですけど、書かせてもらいます。

俺ね、物心ついた時から“薪”がどうしてもダメだったんです。あの木を割った棒きれが。
どうダメだったかと言うと、例えばドラマ(北の国からとか)で薪が出ると、物凄い嫌悪感というか吐きそうになって。

リアルで見ることは殆どないから実害は少ないんだけど、アニメやドラマで薪が出ると気持ち悪くなって、すぐにチャンネルを替える。
この状態がかれこれ20年以上。

でも、何で薪がダメなのか、自分でも理由が分からないんです。気がつけば薪を嫌悪してて。
そういうのって気味悪いでしょ?だから何度も親と兄貴に聞きましたよ。
「俺が薪を嫌悪する理由知らない?俺が小さい時に何かあった?」って。

でまあ、予想通りというか、親も兄貴も「知らない」と。
それでも食い下がると、「しつこい!」ってキレられる。
でもね、雰囲気で分かるんですよ。親も兄貴も絶対何か知ってるって。
俺ももう31だから、ちょっとやそっとの事では動じないし耐える自信もあって、だから機会がある度に聞くんだけど、相変わらず「知らない」の一点張りで、ああ俺はこのまま訳も分からず、薪を嫌悪して生きて行くんだなあって思ってたんです。

その薪を嫌悪してた理由がね、分かってしまいました。3日前のことです。

話は今から一週間前に遡ります。居酒屋で友達と飲んでいたときの事。
たまたまその友達の知り合いがやってきて、一緒には飲まなかったんだけど名刺をもらった。
その人精神科の先生で、人柄も良さそうだったから、「後で聞いて欲しい話があります」ってお願いして、2日後に連絡を取ったんです。
聞いて欲しい話っていうのは、もちろん薪の事。
なるべく細かく説明して、「もう20年以上も続いてるんですが、精神的な理由なんでしょうか?」って。
先生が言うには、「おそらくそうでしょうね」と。
「何とかして思い出す事はできませんか」と訊ねると、「誘導催眠なら出来る可能性がありますけど、覚悟が必要な場合も多いですよ」とのこと。
(催眠についてちょっと補足です。
心理学を専攻した人は催眠“術”とは呼ばず、誘導催眠とかヒプノセラピーと呼ぶらしいです。
科学的に説明できるものなので“術”ではないと)
その先生も(Nさんと呼びます)一通り誘導催眠について学んだそうで、「もしどうしても思い出したいなら、成功云々は置いといて、プライベートでやってみてもいいですよ」と。

そんなわけで3日前、Nさんの仕事が終わった後自宅にお邪魔して、静かな部屋(リビング)で誘導催眠をやってもらいました。
Nさん曰く、「浅い催眠状態の時は自分の話した言葉をちゃんと覚えてるけど、○○(俺)さんの場合は退行催眠に誘導しなければならず、退行催眠→深い催眠状態になるので記憶が飛ぶことがある。
なので、一部始終をテープで録音しますね」と。

そして、俺は誘導催眠を受けて色々話しました。(時間にして3時間!Nさんありがとうございます)
ただ、Nさんの言うとおり、退行催眠が始まってからはほとんど何を話したか覚えてないんですよ。
なので催眠が解けたあと、「理由は分かったんでしょうか?」とNさんに聞いてみました。
Nさん、すごく悲しそうな顔して(というか泣いてました)「ええ……」と。
その顔に不安を覚えながらも、「テープいただいてもいいですか?」って聞くと、「いいですよ。
ただね○○さん、精神科医の立場から言わせてもらうと、これは思い出さなくてもいい部類の話なんだと思います。
僕たちの仕事は患者さんの心の病を取り除くことであって、心の闇を突きつける事ではないですから」と。
「それでも知りたいですか?」との問いに、少し考えた後「はい」と答え、テープをもらいました。

以下、退行催眠が始まってからのやり取りです。
テープ聴きながらなので、ほぼ原文で書けます。

15歳
N「○○くん、あなたは薪が嫌いですか?」
俺「嫌いです」

10歳
N「○○くん、君は薪が嫌いかな?」
俺「嫌いです……」

7歳
N「○○くん、君は薪が嫌いかな?」
俺「嫌いです……」

6歳
N「○○くん、君は薪が嫌いかな?」
俺「嫌いです……」

5歳
N「○○くん、君は薪が嫌いかな?」
俺「きらいじゃないです」

6歳に戻る
N「○○くん、きみは薪が嫌いなんだよね。どうして嫌いになったのかな?」
俺「…………」
N「理由をお兄さんに教えてくれないかな?」
俺「やだ」
N「どうしてかな?」
俺「こわいもの(涙声)」
N「大丈夫だよ。お兄さんが傍にいるから。ね、怖くないよ話してごらん?」

20秒弱の沈黙

俺「あのね……」

6歳の俺が語った事で全て思い出しました。事の顛末を書きます。

俺の実家は栃木の田舎なんです。
家は日本昔話に出てくるような純和風の家で、家もでかけりゃ土地も広い。
俺がまだ幼かったころ、俺は母さんの手伝いをよくしてました。
風呂はガスだったけど、うちのじいちゃんが「ご飯は薪で炊け」ということで、ご飯はいつもかまどで炊いていたんです。

俺が幼稚園から帰ってきて夕方になると、母さんが「○ちゃん、薪おねがいね」と言って駕籠を渡してくる。
俺は駕籠を受け取って、母屋から50mくらい離れた薪小屋に走って、その日のお気に入りを10本くらい選んで駕籠に入れる。
そしてまた母屋まで走って、母さんに「はいっ」って渡す。

母さんが薪をかまどに入れて新聞で火を付けて、薪がぷすぷす燃えてくると、ご飯が炊き上がるまでの間、俺をおんぶして唄を歌いながらゆっくり家を一周してくれた。
俺はそのおんぶが楽しみで、母さんの背中が心地よくて大好きでした。

夕飯になると家族が全員揃う。
俺はそこで「きょうもね、ぼくが薪をえらんで運んだんだよ!」と自慢げに話す。
じいちゃんもばあちゃんも父さんも「○ちゃん偉いね。だからこんなにご飯がおいしいのね」って褒めてくれて。
それが嬉しかった。

6歳のとき、幼稚園から小学校になっても薪を運ぶのは俺の役目で、夕方になると母さんに駕籠を渡されて、薪小屋まで走る。
その日もいつものように駕籠を渡されて、薪小屋まで走った。
薪小屋は4畳くらいの四角い小さな小屋で、戸を開けると左右正面に薪がずらっと積んである。
だから実質の広さは1畳くらいしかない。

その日も当たり前のように戸を開けた。
俺から見て真正面、狭い小屋の中で、近所のお兄さんが首を吊って死んでいた。
狭いから距離なんかほとんどなくて、ほんとうに目の前でぶら下がっていました。
青いパジャマ姿で目を見開いて口からは涎を流して、下には小便らしき水溜り。
ちょうど物心がついた時期に、人の死をこんな形で見てしまった俺は半狂乱になったんでしょう。


51:本当にあった怖い名無し:2005/11/05(土)18:09:53ID:FDe9EqMh0
俺の叫び声に何事かと家族全員が駆けつけてきて、兄さんの死体を発見して大騒ぎになって。
その後は警察やら近所の人やらが来て、田舎での首吊り自殺なもんで、地域では大変な騒ぎでした。
そして俺はと言うと、少しおかしくなってしまってて、ほとんど口を開かなくなり、夜中に突然大声で泣き出したりと、手に負えない子供になってしまった。

そんな孫を不憫に思ったじいちゃんが、俺を母方のおばあちゃんの家に1年間預けた。学校は休学。
(この辺の記憶は全くありません。母から聞いた話です)
その間に薪小屋とかまどを潰した。

そして1年後、実家に戻ってきた俺は、件の事件をすっぱり忘れてた。
実際は忘れてたんじゃなくて、極度のストレスとトラウマによって心が破壊されるのを防ぐために、自分で記憶を封印してしまったんですね。
でも全ては封印出来なくて、薪を見ると理由も分からず凄まじい嫌悪感を抱くようになったと。

これが事の顛末です。

ここからは余談です。

人間の脳って凄いなと思いました。
フラッシュバックっていうのか、思い出した瞬間、鮮やかな映像と記憶が蘇った。
お兄さんが着ていた服、小屋の様子、当時の家族の顔、風景、まるで昨日の事のように。
鮮やかな記憶のまま封印したから、出した時も鮮やかだったんだろうか。

とまあ、今は落ち着いて書けてますけど、思い出した時は軽いパニック状態になりましたよ。涙がボロボロ出た。
思い出して良かったという気持ち、思い出さなければ良かったという気持ち、お兄さんの死を悲しむ気持ち、お兄さんを憎む気持ち、郷愁と懐かしさ、後悔、恐怖、色んな感情が溢れ出して来て、1時間以上も大声で泣いてしまった。
6歳の時の俺と、今の俺の感情がリンクしてしまったのかなあ、なんて。


53:本当にあった怖い名無し:2005/11/05(土)18:11:17ID:FDe9EqMh0
それで、昨日のことなんですが、母にね、全部話しました。
一応前置きとして、ショックだったけど耐えられたこと、気を使ってくれて感謝してること、あと、あのおんぶしてもらってた幼少時代、ほんとうに幸せだったこと、などなど。
母は静かに嗚咽を漏らしてました。「あれはね、誰も悪くないのよ」と。
母が言うには、お兄さんが自殺して俺がおかしくなってしまって、それを知ったお兄さんの両親が、毎日うちに土下座して謝りに来たらしいです。
俺がおばあちゃんの家に引き取られてからも、それはしばらく続いたらしくて。
「だから思い出しても○○さんを恨んじゃだめよ」と母は言った。

それから色々話したんですけどね、割愛します。昨日10年ぶりに母の肩を揉みました。

以上です。
霊の話じゃなくてすんません。
オカルトと言うより心理学や精神世界の話かも知れないんですが、25年間も記憶が飛んでたっていうのが自分的にはオカルトかなあ、なんて。
親父の三周忌も過ぎたんで、親父と山の話を書いてみるよ。ぜんぶ実際にあったことだ。

同居していた親父が精密機械の会社を退職して2年目のことだった。
けっこうな退職金が出て年金もあるし、これからは趣味の旅行三昧でもするのかと思っていた矢先に、高校時代の友人から投資詐欺にあって、退職金の三分の二くらいを失ってしまった。
その友人は指名手配になったものの消息不明。
もともとタイ在住だったんで、もう日本にはいないだろうと警察では推測してるような口ぶりだった。
俺にしてみれば、まあ借金をこさえたわけではなく、元々ある親父の金を失ったのだし、まったくあてにもしてなくて、親父が好きに使ってくれればいいと思っていたんで、それほどショックはなかったんだが、親父の落ち込みようはひどかった。
金額よりも、古くからの友人に裏切られたことのほうがこたえたんだろうと思う。
それからは何も手につかない様子で、家でぼうっとしてることが多くなった。
その親父が急に「山に行く」と言い出したんで嫌な感じがした。
旅行はするものの、それはパックの海外旅行がほとんどで、山登りとかには縁がなかったからね。
俺の女房も「自殺でも考えてるんじゃないか」と言うし、それで親父の予定の日がちょうど休みだったんで、俺もついていくと言ったら、なんか複雑な顔をしたけれども、しばらく考えて「いい」と答えたんで、俺の車で出かけることにした。
親父から聞いた目的地は隣県で、かなり時間がかかるんだが、山へ入るのは4時過ぎじゃないとだめだと言うんで、昼過ぎに出発した。780:本当にあった怖い名無し:2012/11/29(木)23:48:28.47ID:R2WoTcRq0
3時間ほどでその町に着いたが、一言でいえばものすごい田舎。
その町外れまで来て、森の前の小さな神社のわきの空き地に車を停めた。
ちょっと意外に思ったのは、そこには十数台車が駐車されてて、中には高級外車なんかもあったことだ。
それから森に入って小径を歩き始めた。
この間中、親父は押し黙った気まずい雰囲気だったが、それまでも山に行く目的とかは一切話してはくれなかったんで、せめてと思って山の名前を聞いてみた。
すると親父は「・・・松ヶ山」とぽつりと答えた。

小一時間ばかりで、細い山の登り口のようなところに出たが、そこは注連縄のようなものが張ってあるし、『私有林につき入山を禁ず』という木の立看板もあった。
看板の上のところに、鮮やかな赤字で梵字のようなものが書かれていた。
そのときは6月で4時過ぎていたけどまだ明るく、山は森にさえぎられてわからなかったけど、そんなに高いところではないという感じがあった。
登山道には古い木の板が埋められていて、傾斜もきつくはなく、登りやすかった。
60過ぎの親父でもそれほど息は乱れてない。

10分ほど登ってくと、前に人影が見えてきた。
どうやら女性の二人組で、しばらくして追いついたが、高校の制服を着た女の子とその母親らしい女性だった。
母親のほうは洋装の喪服のようなものを着て、ヒールの高い靴で歩きにくそうだった。
親父が何も言わないままその二人を追い越したんで、俺も体を傾けて「お先します」と小声で言って前に出た。
その二人もやはり押し黙ったまま後ろになってついてくる。
それから20分ほど登ると、ヤブを切り払ったようなちょっと広いところに出た。まだ山頂ではない。
そこの大きな木を回ると洞窟の入り口が見えた。やはり御幣のついた注連縄が上から垂れ下がっている。
高さ3~4mくらいのくぼみで奥は相当深いようだ。


781:本当にあった怖い名無し:2012/11/29(木)23:49:07.60ID:R2WoTcRq0
おぼろげながら洞窟の数十m奥に人の姿が見える。数人並んでいるみたいだ。
親父は「ここで待っててくれ」と言って、洞窟の中に入っていった。
俺が近くの朽ち木に腰掛けてタバコを吸ったりしていると、先ほどの母子が追いついてきて中に入っていった。
それから40分ほど待ったが、その間に出てきたのが8人、様々な年代の人たちで女性も2人いた。
どの人も白い布で包んだ箱を大事そうに持っていた。
そして親父が出てきたが、やっぱり白い布の箱のようなものを持っている。
出てくるなり俺の顔を見て、「・・・やっとひとつ済んだ」と言う。
俺が「その箱は何だい」と聞いても、答えてはくれなかった。
もうだいぶ暗くなっていたんで、急いで空き地まで戻って車に乗った。まだ車は数台残っていた。
親父は後部座席に乗って、大事そうに箱を抱えて黙っていた。

家に帰ると、親父はそれから二階の隠居部屋にこもって、食事も部屋まで持ってこさせるようになった。
そのくせ夜はひんぱんに外出する。
しかも、それまでなかったんだが自分の部屋に鍵をかけるようになった。
夜の9時頃に家を出て0時過ぎに戻ってくる。
何をやってるかわからないが、靴や手が泥だらけになっていて、いつも帰ってきては入念に手を洗っていた。

めずらしく親父が夕方出かけたとき、部屋の鍵が開いていたんでちょっとのぞいてみた。
すると机の上がかたづけられていて、そこに仏教風でも神道風でもない祭壇がこさえられている。
あえていえば古代風といった雰囲気で、埴輪のようなものがある。
それに囲まれてあの白包みの箱があり、その前には10cmくらいの細い骨が積み上げられていた。
俺は近寄って、悪いとは思いながらも箱をそうっと取り上げてみると、箱は意外に重く、なんだか生暖かい。
振ってみるが音はしない。粘土のようなものが詰まっている感触がある。
耳をあててみると、かすかにだが「とき、とき、」というような音が聞こえてくる
そのとき下で親父が帰ってきた音がしたので、あわてて部屋を出た。


782:本当にあった怖い名無し:2012/11/29(木)23:51:32.60ID:R2WoTcRq0
その夜、俺は家の中でタバコを吸わないように家族に言われてるんで、外の通りでタバコを吸っていると、耳もとで「お前、あの箱にさわっただろう」と、ぼそっとつぶやく声がして、驚いて振り向くと親父が立っていて、「いいよ、もう済んだから・・・これで全部終わったから」
そう言って、まだ60代なのにひどくよぼよぼした感じで家に戻っていった。

その2日後の新聞に、親父をだました友人が海外で惨殺されたという記事が出た。
詳しい記事ではなかったが、ナイフで刺されたというようなことが書いてあった。
その後警察も家に来たが、犯人はわからず金も戻ってはこなかった。

それから6年後に親父は肺炎で死んだが、いよいよ危ないと医者に言われて病院についていたときに、ふと意識が戻ったように目を開けた。
そのとき俺は「親父、あの松ヶ山って何だったんだ」と、ずっと気になってたことを聞いた。
すると親父は、鼻に酸素の管を入れられた状態で少し笑い、「松ヶ山じゃない、順番が違う・・・古い遺跡・・・後のことは墓場に持ってく」
途切れ途切れにそれだけ答えると、眠ったようになってしまった。
そしてそれから4日して息を引き取った。

話はこれで終わり。
それから気になって自分で調べたこともあるが、ちょっとここでは書けない。


783:本当にあった怖い名無し:2012/11/30(金)00:13:13.95ID:UWGsY7fI0
>>779
>ぜんぶ実際にあったことだ。

せめて松ヶ山の場所と正式名称を教えてくれ
それくらい明かしても問題ないだろ?


784:本当にあった怖い名無し:2012/11/30(金)00:18:47.75ID:Xpb7ircW0
>>783
場所は鳥取。山の名前は投稿でわかるように書いてある
ただし正式名称じゃない
行かないこと
7年前の6月、夜10時ごろ、自宅の電話がなりました。
いつになく、どきっとする音だったのを覚えています。
ミュージシャンの馬場君からでした。

「どうもオカシイ、口では説明できない。夜分申し訳ないが、来てみてほしい」とのこと。
馬場君はバンドの合宿所として、川越に近い、ある一軒家に引っ越したばかりでした。
いつにない彼の深妙な声に、いやーな緊迫感を感じましたが、長い付き合いの彼の頼みなので、行ってみることにしました。

そして、出かけようと玄関にでた瞬間、目の前のドアを誰かがいきなりノック。
開けてみると、友人の茅野君が一升瓶をかかえて立っていました。
馬場君に呼ばれて出かける旨を話すと、
「馬場君とは面識も有るし、単独で行くべきではないと思うので同行する」
と言い出しました。

とりあえず車を出し、その車中で話し合いました。
その日はたまたま暇で、急に私の顔を見たくなったのだそうです。
茅野君はもともと感の鋭い人で、私の顔を見た瞬間、
「何かあったな」
とピンときたといいます。
馬場君はいくつかの因縁を抱えた人で、以前から問題を起こしやすいタイプの人でした。
茅野君は、私を通して、馬場君の波乱万丈ぶりを知っていましたが、今回は今までとは違うように感じる、という点で意見が私と一致しました。


508:おじゃま道草<1>2/2:02/05/2613:58
車で30分ほど走ったとき、茅野君が突然
「うわぁーーっ」
と声をあげました。
話を聞くと、
「一瞬道路の前方に、身長50mはあろうかという真っ赤な仁王さんが、“来るな!”のポーズで立ちはだかった」

と言うのです。
彼はその当時、仏像の知識をほとんど持ち合せておらず、「仁王」と表現しましたが、後日写真集を見せて確認したところ、明王部の中でも不動明王の立像に一番似ていたそうです。

初めての訪問だったので、馬場君に最寄りの駅前まで迎えに出てもらいました。
馬場君を駅で拾い、車中で
「何事か」
と問うと、
「格安で二階家、いい物件だと思ったがどうもオカシイ。とにかく来て、見てから意見を聞かしてくれ」
と言います。

到着すると、そこは目の前を高速道路が走り、雑木林に三方を囲まれた、10戸ほどの分譲住宅の中にある一軒でした。
囲まれていない開いた方の、道路に面した角にたっており、築10年位でした。
車を降りると、まず私はその家に向けてカメラのシャッターをきりました。
梅雨の中休みといった気候で、蒸し暑い夜でした。


509:おじゃま道草<2>1/3:02/05/2613:59

「はまったな」

その場に立った時の素直な感想でした。

その家の外見で気になった点を挙げてみましょう。
・全ての敷地内の雑草が外側へ向かって伸びている。
・敷地内の南西の角に3本の木(高さは2階の軒とほぼ同じ)がある。
・3本の内、南よりの1本は立ち枯れになっている。
・分譲住宅なので、周囲の家屋と同時期の築のはずだが、それだけが傷みが大きい。

隣の住人が網戸ごしにこちらを覗いているのを気にかけながら中へ。

「むさ苦しいところだが、まあはいってくれ」

馬場君のさそいに、玄関へ一歩。

「く、くさい、何だ?」
……というのが内部を見た第一印象でした。
茅野君は開口一番、
「猫、飼ってるのかな?」
私もそれに相槌をうつと、馬場君は、
「うちには居ないが、周りには何匹かいるよ。匂う?やっぱりなあ。いくら掃除しても、抜けないんだよね」

玄関から上がってすぐ左が階段。
玄関(西)から正面(東)へ真っ直ぐに廊下があり、突き当たり右(南東)がダイニングキッチンで、左(北東)が浴室。
私たちは、上がって右手(南西)のバンドの練習室に通されました。

「す、涼しい。いや、寒い。エアコンは?……な、ない!窓は?……閉じてる」

窓の外に妙に目立つものが……よく見ると枯れ木でした。


510:おじゃま道草<2>2/3:02/05/2613:59

「この部屋が1階では一番まともなんだ」

マネージャーの女の子が茶を入れている時、やっと馬場君が話を始めました。

馬場君の話の概要は、・1階で寝るとうなされることがある。
・2階に全員が居る時、1階から話し声が聞こえる。
・1階から上がってくる足音がしたのに誰も来ない。
・引っ越してきた時、押入の中にケース入りのゴルフクラブ一式が残されていた。
・台所に行くのをみな嫌がる。
といった現象なのですが、猫について次の様な体験を話してくれました。

「昨日、2階に居たら1階で物音がしたんで、買物に行ってたヤツが戻ってきたかな?と思って下へ降りてきたんだ。
そしたら、玄関のドアは開いてたんだけど、誰も居ない……
よく見ると、近所の猫が入り込んでたんだな。
ところが、そいつがなかなかつかまらない。
ちょっと掴むと、必死で引っ掻いて抵抗する。この引っ掻き傷、見てみなよ。
そこで、窓を開けてやったんだな。
ところが、追い回したけど猫は窓を無視するんだね。
そして、そのうち猫が玄関へ走ったんだ。
やった、出てくぞ……
そう思ったら、猫が変な行動をとったんだ。
玄関に降りるやいなや、ビタッと立ち止まって急に向きをかえたんだね。
そして俺の足下をぬけて階段上がって、2階の窓から屋根越しに逃げたんだ。
でさぁ……その、玄関での行動なんだけど、本当に変なんだよね。
何か目の前に恐ろしいものでもいて、あわてて引き返した……という感じなんだ。
俺に追いかけられるよりは、よほど怖そうだったよ」



511:おじゃま道草<2>3/3:02/05/2613:59
この話を聞いた茅野君は、
「その猫、何かに操られてたんじゃないかなぁ」
とコメント。
私はその話の間も、廊下を猫が行ったり来たりしている様な感じがしていました。

「その猫はたまたまそうなっただけで、普段は生きていない猫がうろうろしているみたいだね」

私がそう言うと、すかさず茅野君は、
「うん、今も廊下をふっと影が通った様な気がしたよ」
と意見が一致。
しかし、大切なのは、さっきの茅野君のコメントです。
私は茅野君の勘(感)を生かすつもりで、彼にたずねました。

「でも、本体は猫じゃないな。台所へ行ってみる?」


「いいや、今はよすよ。明後日は休みだから、明るいうちに来よう」


この後、馬場君からもう少し話を聞き、新曲のデモを聞かせてもらい、台所には足を踏み入れず、午前2時ごろ帰途につきました。


515:おじゃま道草◆yjBaPtjU:02/05/2617:11
茅野君を送った後、私は自宅へ戻りました。

「ん?誰も居ないはずの弟の部屋でひとの気配がする……」

電気をつけて覗くと……やはりいない……

「来たな……」

私は「くるな!」と強く念じ、気配が消えたのを確認してから床に入りました。

明けて、すぐ私はフィルムを現像に出しました。
その日の夕方には仕上がりますから。

職場へ行くと、弟(大輔)からの伝言がありました。

「今晩、帰る。友人を呼ぶ。酒、買っておいてくれ」

弟は職場が遠いので、その近くに下宿しており、およそ月に1度、衣替えに戻っていました。

私は仕事の帰りに、上がったプリントを引き取りました。
持ち帰るとまず、ネガで現像ムラや光線洩れ、傷などをチェックし、それからじっくりプリントを調べました。
枯れ木がとても目立ち、何枚かのカットに気持ちの悪い印象を与えていました。
と……よく見ると、そのうちの1枚に……
南西の角のブロック塀に小さい赤い光点(豆電球でも点いているかように見える)が写っているものを見つけました。
同アングルの他のカットにはなく、そのカットにだけ写っていました。
ネガにもきちんと写っており、物理的な処理の過程で出来たミスとは考えられません。
赤……一般に負のエネルギーです。
小さな光点……強い霊体です。
色の感じからも判断して……
結論……祟りじゃーーっ!


517:おじゃま道草<3>2/3:02/05/2617:13
ちょうど写真を見終わった頃、大輔が友人の榎本君を連れて現れました。
そして、私がテーブルの上の写真を片付けようとすると……

「何写したの?」


「お化け……じゃ」


「へぇーー、どれ?見せて……家?……お化け屋敷?」

そのうち、私と大輔とのやりとりを見ていた榎本君が身を乗り出してきました。

「見せてもらっていいですか?」

彼が写真を捲っている間に、大輔が彼について教えててくれました。
学生の頃の剣道部の仲間だそうですが……何と彼は霊感が強く、それを見込まれ、密教系の寺院でアルバイトをしている……という変り種だそうです。
彼によると、
「こういう赤いのって、神仏の罰てぇことがあるんです。強いなあ……
うかつなことは言えないので、これ、2・3日預っていいですか?
師匠に相談して見てもらいます。僕だったら、ただですから……」

ネガがあるので茅野君には焼き増して見せればよい、ということで、私は例のカットの他、数枚を榎本君に預けました。


518:おじゃま道草<3>3/3:02/05/2617:13
榎本君は遅くまで飲み、その日は一泊して帰りましたが、大輔は馬場君の家に興味を示し、翌朝……

「今日、茅野さんと行くんだろ?俺、明日も休みだからつきあうよ」
と言いだしました。

「あぶねぇぞ……憑かれるぞぉ~」


「武道やってるからかも知れないけど、おれ、そんなの平気だよ」


約束の正午に茅野君が現れ、私たちは3人でB宅へ向かいました。
私は例の猫が気になっていたので、途中、鰹節のパックを買っていきました。

519:おじゃま道草<4>1/3:02/05/2617:13
馬場君宅へ着くと、ちょうどバンドの練習中でした。
すぐに終わると言うので、待つ間に建物の周囲を調べることにしました。
林が切り開かれ、宅地として分譲された場所のようでは在りましたが……
近くには古そうな農家が点在しています。

「わざわざ木を切らなくても農地があるのになぁ」

私はだんだん土地の成り立ちが気になり出しました。
そして、しばらく歩き回るうち、
「ん?水の気配がする……」
。池か井戸か……溜まった水のようです。
場所は限定できませんが、どこかにあったと思われます。
そのうち馬場君宅が静かになり、女の子(船井さん)が呼びに出てきました。

中へ入ると、まず使わない皿を2つ貸してもらい、1つには水を入れ、もう1つには鰹節をのせました。
猫の気配がもっとも多い階段の下に、それらを置きました。
そして、しゃがんで手を合せると、「ここにとどまるな、去りなさい……」と念じました。

それから5分位後でしょうか……練習室でお茶を飲んでいると、廊下の方から、
「ニャン」
という鳴き声がしました。

「また猫がはいってきたか?鰹節狙ってるんだろう」

馬場君が立ち上がって、廊下を覗きました。

「ありゃ、いない。今ないたよなぁ……」

馬場君が首をかしげながらもどり、また元の雑談になりました。
そしてその後、猫の気配はぱったりと途絶えました。

ところが、この猫供養が、本体をつついたようです……


520:おじゃま道草<4>2/3:02/05/2617:14
さて、3人でキッチンへ……
6畳の広さがあるダイニングキッチンでしたが、だれもそこで食事を取らないため、テーブルなどの家具もなく、広々としていました。
まずは写真撮影……

「ん?なんだぁあれは……」

柱の上部に、貼っていた紙を剥がしたあとがある……
きちんとはがさずびりびりになって、中央部が残った状態です。
黄ばんでいて古そう。
しかも、そこだけでなく、部屋の四方に同じものがある……
御札で何かを封じた……しかし破れた……
最も剥がれていないものに近寄って見てみると、真ん中が妙に黒い……
絵?……黒犬。御嶽山か……?

「足がちくちくする……いるな」

私は茅野君へ向かって、
「何か感じない?」


「何か足がひりひりするよ」


「そう……俺と同じだね。どの辺がひどい?」


「この流しの前のあたりかな」


「そうだろう……」

またしても意見が一致。
それまで黙していた弟の大輔が口を開きました。

「すごい……殺気がある。
目を閉じると、今にも誰かが斬りかかって来そうな気配があるよ。
それに、昔痛めた腰が痛くなった。弱いところをつついて来るみたい。
この感じ……修学旅行で関ケ原へ行った時以来だな。
普通は俺、こういうの平気なんだけど……ここは別だよ。何がいるんだぃ?」


「ここで「見る」と危ないな。帰ってからな」



521:おじゃま道草<4>3/3:02/05/2617:14
私は、これは猫のようなわけには行かないな……無理だなと思い、馬場君に転居を勧めることにしました。
そして、私がもう2,3枚写真を撮ろうとすると、茅野君が
「何か気持ちが悪くなりそうだから、向こうで御茶飲んでるね」
と言って台所をでました。

「俺もそうするよ」

大輔も同じことを言いだしたので、私も出ることにしました。

練習室へ戻ると、馬場君が横になって寝ていました。

「明け方までかかってバンドスコアを書いたって言ってたからね。
でも、何か安眠してるようではないみたいね」

船井さんがタオルケットを馬場君にかけながらつぶやきました。


524:おじゃま道草<5>1/2:02/05/2618:38
しばらくすると、うつ伏せの馬場君がうなされ始めました。
なにやら寝言で、
「うん、うん」
といっています。

「あれ?」

よーーく馬場君の方を見ると……何か気配があります。
彼の上に、影の様なモノがのっているようです。
私は茅野君に、
「どう思う?」
と意見を求めました。

「これ、金縛りじゃぁないの?押さえ付けられてんのかな?」

茅野君の直感は当てになります。私は確信しました。

「馬場君は、意思が強く、行動力もあり、覚醒時は強い……
したがって、疲れてうとうとしている様な弱い時につけこんで憑依してくるんだ」

船井さんが
「起こそうか……」
と、馬場君の肩をゆすりました。
でも起きません。相変わらずです。

「あっ、ちょっと待って、もし意識が飛んでいたらマズイ。帰還に失敗するかも……無理に起こさないで」

私は、強く揺すろうとした船井さんを制しました。
その時、茅野君が……

「あれぇ……何か動いたよ。馬場君の背中の上……」
と言い出しました。
そして馬場君の背中の上、30cmほどのところに、手をもって行こうとして……

「おーーーっ」

彼は、あわてて手を引っ込めました。

「ああ、ぞっとした……ちょっと、やってみなよ」

私にも促します。
なんと、茅野君にも見えたのです。

「やばいな。俺たちも影響をうけてるな……」

私はそう思いながらも、彼に倣いました。


525:おじゃま道草<5>2/2:02/05/2618:38
そおーっと手を出す。
動いている影の輪郭を抜け、突っ込む……
ひんやりとしています。冷蔵庫に手を入れたときのようです。
それでもヤツは動こうとしません。
そおーっと手をひっこめる。
冷たさは消えます。ヤツはうごきません。

「ねっ、冷たいだろ?」
と、茅野君が同意を求めてきました。

「隙間風なんか通ってないよね……やっぱり居るんだね」

彼はいつになく真顔です。
私は乗っているヤツがいまだ退こうとしないので、除霊九字を切りました。
そしてそれが効いたのか、ヤツの気配は消えました。
いや、一時的に退いただけですが……
切った後、馬場君を揺すると、彼はすぐに目を覚ましました。
起きるなり彼は、
「ああーーっ、疲れた。おれ、うなされてなかった?
揺すったでしょ。分ったんだけど、夢がさめないんだ。
これで4回目かな。同じ夢見たのは……
2階じゃ見たことなくって、いつもここで寝た時にだけ見るんだ。
おれ、何か寝言を言ってた?」

と、目をこすりながら一気に話しました。

「うん、うん……っていってたよ」

船井さんが答えると、
「そうか?おれ、うんう……って……自分では首を振ってたつもりなんだけどなぁ……聞いてもらえる?」

そう言って、馬場君は夢について語り始めました。


526:おじゃま道草<6>1/2:02/05/2618:39
馬場君が見た夢の要旨は次のとおりでした。

「気がつくと座敷に座っている。
広い座敷で30畳ほどはある。電燈もなく、造りも古い。時代劇のセットのようである。

しばらくすると少女が現れる。5,6才で可愛らしい。
赤っぽい振り袖を着ている。七五三参りに行く姿のよう。髪もキチンと結ってある。
時代劇でなら、武家の娘という役がら。
少女が、「おにいちゃん、あそんで」とせがむ。
遊んであげたいが、自分はここを動いてはならない。動くと帰れなくなるかも知れない……という不安感がある。
そこで、少女に「外で遊んできなさい」と勧める。
しかし聞き分けない。
「あそんで。あそんで」と繰り返しせがむ。
しかたがないので、少しだけこの場所で……と思うと、それを察したのか少女はニコッとして、持っていたお手玉を差し出す。
さて、どうしようかな。そう考えながら、受け取ろうとする」



527:おじゃま道草<6>2/2:02/05/2618:39

「と、その時、座敷の奥の方から、「遊んでいてはイケマセン」という母親らしき声が響く。
その途端、少女の笑顔は消える。
蒼白となり、自分(馬場君)の陰に隠れようとする。
「呼んでるよ。行かないと叱られるよ」と言うと、少女はおびえ始め、今にも泣き出しそうである。

そしてついに、母親が座敷のはずれから姿を現す。
和服を着込み、すらっとしている。
初めは遠くではっきりしないが、近付くにつれ、綺麗な顔だちであることがわかる。
優しそうな母親じゃないか。そう思って後を振り向くと、少女は消えている。
あれ?不思議に思いながら、母親の方を向く……
先ほどの顔だちはかき消え、なんと般若になっている。
恐怖に捕らわれ、にげなきゃ……そう思った時、夢からさめる」


馬場君が話を終えた時、バンドのメンバーが2階から降りてきました。
ライブの打ち合せに皆で出かけるそうです。
腰をあげて私たちも帰る支度をはじめると、天井から……いや、2階から、タッタッタ……と誰かが走り回る様な足音がしました。
全員聞こえたようで、一瞬、皆動きを止め、顔を見合せました。

「聞こえた?これで2度目だな?今、2階には誰もいないよなぁ」

馬場君が言うと、メンバー全員がうなずきました。
茅野君がすかさず、
「大人だとドスッドスッという足音になるから、あれは子供だな。
実際、2階で子供が走り回ると、あんな足音になるよ」
とコメント。
しばらく皆沈黙し、次の音を待ちましたが、もう足音は聞こえませんでした。

皆が出かけ、私たちも帰路につきました。

528:おじゃま道草<7>1/2:02/05/2618:40
自宅へ戻ると、写真などをもとに背後関係を見てみました。
1階を歩き回っている「本体」は、千数百年前の怨霊です。
(何であるかは伏せておきます。
土地へ縛られてはいますが、出張して動くこともあるのでうかつに波長があうと危険ですから)
本来はこの土地のものではなく、因縁を背負った不幸な一族に執り憑いた状態でやってきた悪霊のようです。
一族を惨死に追込みながら、強烈な結界を形成し、自らを土地に呪縛してしまった形となりました。
負の結界はその吸引力により、捕まえられるものは何でも取り込んでしまいます。
写真の中には、犠牲となった浮遊霊などが多数みられました。
そしてその中に、決定的な取り込みがあります。
ある時、気がおかしくなった住人がいて、とんでもない大変なことをしでかしてしまいました。
屋敷を増改築する際に道祖神が邪魔になり、なんと石仏を井戸に投げ込んでしまったようです。
現代ならまだしも、普通の昔の人がそんなことをするはずはありませんから、余程狂った状態だったのでしょう。
オマケにその井戸は、その後そのままの状態で埋められてしまいました。
榎本君が神仏の罰かも知れないと言っていましたが、正にその可能性は大です。
「本体」を核とする結界内で、井戸の石仏が新たな強い核と化し、いわば二重ブラックホールを形成していることになります。
例の少女は、これらの吸引にひっかかってしまった、もっと新しい一族のひとりです。
今から百数十年前のものだと思われます。
母親が怨霊にやられたため、苦しい目にあったようです。
病気になり他の場所で亡くなりましたが、念だけはここに残りました。
例の猫は、その娘が可愛がっていた猫です。


529:おじゃま道草<7>2/2:02/05/2618:40
いずれにしても、浄化できるような代物ではありません。1日も早く転居すべきです。
私は電話で馬場君にその旨を伝えました。
しかし彼等は、転居の際に持ち金を使い果たしたらしく、すぐには越せないとのこと。
彼等も重なる不穏な現象に嫌気がさしていたが、お祓いなどでおさまるのならば……と思って、私に相談をもちかけたもようです。
私が
「だめだ……」
と告げると、
「そうか、やっぱりね……」
と納得し、出来るだけ頑張ってバイトをして金を貯め、急いで転居することを約束してくれました。

その後2ヵ月ほどで彼等は転居に至りますが、その間に随分と失うものがありました。
霊障が原因の人間関係のもつれです。

さて、私たちの方ですが、やはり霊障を免れることは出来ませんでした。


530:おじゃま道草<8>1/3:02/05/2618:40
翌日の晩、榎本君から連絡がありました。次の様な内容です。

あの後バイト先へ行くと、師匠が彼の顔を見るなり
「どこ行ってきたの!」
ときつい口調で言った。
そして、彼を本堂へ連れて行くと、
「祓うからそこへ座って。自分の背後は見えにくいものだからなぁ」
といって除霊をしてくれた。
浮遊霊がついてくることはよくあるが、普通は寺に居るうちに自然に落ちてしまう。
わざわざ祓ってくれるのはめずらしいことである。
その後、
「かなり危ないことに関わってるね。やめなさい……」
と言うので、預っていた写真をみせ、知っていることを話した。
師匠の鑑定の結果は……


531:おじゃま道草<8>2/3:02/05/2618:41

「お地蔵さまが抜魂をしないまま捨てられ埋っている。
その下には水脈があり、お地蔵さまは泥にまみれている。
その結果、この土地には仏罰がくだっており、その後、性質が逆転して怨霊の住み家と化した。
また、惨殺された者がおり、その殺傷因縁が凄じい。
意識を飛ばしただけで、その怨霊が斬りかかってくる。
ある部屋にお札が貼ってあるが、まったく効果なし。
命懸けで対峙すれば怨霊はなんとかなるかもしれないが、仏罰の方は手の施しようがない。
ここに関わるのは命を捨てる様なものである。
自分なら頼まれても絶対に拒否する。
出てきたもの憑いてきたものを、祓ったり追い返したりすること、即ち除霊は可能だが、浄霊は難しい。
ましてや土地の浄化などとんでもないことである。
そっとしておくしかない。障らぬ神に祟りなし。
一日も早く手を引かないと命にかかわる。
日本で有数の祈祷師であっても、現状では無理だろう。
そこ一帯を穿くり返して整地する覚悟があれば、可能性が見えなくもないが……
それにしても、わざわざ命をかけて浄化するメリットが見当たらない。
それに、この土地がそのようになってしまったそもそもの原因は、日本史以前にまで遡る。
もちろんそれを調べる必要性はない。
この様なスポットは所々に存在するので気をつけよ。
しかしながら、この様な土地に引き摺り込まれたのには、やはり何等かの因縁がある。
部外者にとっては考えようによってはいい経験だが、当事者つまり住人にとっては死への誘いである。
因縁を自覚しないと、またどこかで引き寄せられるであろう。
引っ越しの際にはすべての家具に荒塩をふり、出来るだけ早期に除霊の祈祷を受けなさい」

というものである。
死人がでない内に、手を切ったほうがよい。


532:おじゃま道草<8>3/3:02/05/2618:41
榎本君はこの他にも、自分の考えなどを教えてくれました。

この内容は茅野君にも伝えました。
そして、もう行くのはよそう……という話になったのですが、実際には問題が持ち上がり、1週間後、もう一度だけ足を運ぶことになります。
それはさておき……しばらくは悪影響が続きました。

私の自宅で最も頻繁だったのは、弟の部屋です。
誰も居ないはずなのに人の気配がする。ぼそぼそと話し声が聞こえたこともあります。
何等かの関連がある浮遊霊のようでした。
電灯をつけたり、「帰れ」と念じたりするとすぐに消えました。
週に1,2度そんなことがありました。

また、私が行(読経)をしていると、背後に気配がする……
しかも、鳥肌が立つような気配がする……ということが数回ありました。
これは「本体」(親玉)でなく、付属霊(手下)のようです。
気合いを入れて行を続けるとその内に消えました。
お帰り願っただけで、決して浄化しようとしたわけではありません。
この様な付属霊だけならなんとかなるのですが、手を出すと芋蔓式に出てきますから、いずれ「本体」と接触しかねません。
浄化などとんでもないことです。

悪影響は茅野君にも及びました。
彼が仕事から帰ってうとうとしていると、自分が畳の上に座っている感じがしたそうです。
いやーーな感じだと思った時、周りの様子が見えてきました。
どうも、馬場君が語った夢の中に出てくるあの座敷のようです。
茅野君は、少女が現れ、やがて恐ろしい母親が出てくることを予想しました。
ところが……その気配はありません。
これは夢だから覚めなくては、しばらくそう考えているうち……
ついに……座敷の奥の方から近付いてくる足音が聞こえてきました。
般若面の母親か……
彼は筆舌し難い恐怖感を覚えたそうです。
しかし、現れたのは母親ではありませんでした。

「……!」

この時点で茅野君は、「それ」が「本体」であることを知りませんでした。
でも彼は見てしまったのです。「それ」を……
「それ」はだんだん近付いてきました。
彼は恐ろしさのあまり、
「神よ仏よ……お爺ちゃん!」
と助けを請いました。

「うわっ・・・・!」

危機一髪、祈りは通じたようです。彼はなんとか夢から覚めることができました。


534:おじゃま道草<8>4/4済みません分割目測誤りました(汗:02/05/2618:42
茅野君はすぐに私に連絡をくれました。
聞いてみると……
彼が話す特に「本体」の描写は、私が想像していたものよりリアルでした。
(その描写については、記述を控えます。ご容赦ください>ALL)
私が
「「それ」が「本体」だよ」
と伝えると、彼は
「げ!例の斬りかかってくるヤツ?マジかよ~」
と、しばらく絶句してしまいました。
でも有難いことに、彼がこの夢を見たのはこれっきりです。

私の見解と茅野君の描写を合せると……
オソロシイ……今でも思いだしたくないくらいです。
(実は、私自身が書くのを嫌がっているのです……m(__;)m)


535:おじゃま道草<9>1/3:02/05/2618:43
悪影響は身体にも現れました。
私自身では、妙に肩が重い、指先が痺れる、などの症状がでました。
もちろん、透き通った「お客さん」がその原因です。
普段なら弾き飛ばすし、乗ってきても振り落してしまうのですが、仕事帰りに電車で居眠をしていたり、疲れてうとうとしている時を狙ってくるので、つい背負ってしまいました。
このタイプは浮遊霊ばかりなので、落とすのは簡単……とは言っても、落とすまでは吐き気を伴った肩こりに悩まされます。
この肩こりがもとで体調を崩してしまうと、ヤツらの思う壷ですから、健康管理には妙に神経質になってしまいました。
また、めったに遭わない金縛りにも、その当時だけは続けて2,3度見舞われました。

弟の大輔には、昔痛めた腰の傷みが復活しました。10年以上前の症状の再発です。
彼には元々ある因縁があり、その影響で腰痛を患ったのですが、ヤツらはそこにつけこんできました。
弱点をつつき回すのは、ヤツらの常套手段です。
腰が痛いと言う大輔をうつ伏せに寝かせ腰を診ると、そこだけが吸熱されていました。
「お客さん」を祓い落とし、気の通りを促すと傷みが消える。
数日するとまた痛みだすので、自宅へ戻って私に気の流通を修復させる。
つまり、しばらくは痛んだり直ったりの繰り返しでした。
これは、皆があの土地と縁を切るまで続きました。
しかしながら、彼はそのことをきっかけにして、自分の弱点と因縁をはっきり認識したようです。
それ以来、彼はたいへん謙虚なものの考え方をするようになりました。


536:おじゃま道草<9>2/3:02/05/2618:43
さて、茅野君ですが……
怖い思いをしたわりには、影響が最も軽かったようです。
軽い肩こりと鼻づまりで済みました。
彼には強い守護の力が働いているためです。

で、最後のお呼出……
馬場君宅へ2回目に行った1週間後のことです。
私の自宅へ茅野君が寄っている時に、大輔が榎本君を連れて帰宅しました。
当然、榎本君を囲んだ「お化け屋敷からの撤退」という臨時作戦会議になりました。
結論は、
「影響下から離脱したら、綺麗さっぱり縁を祓い落とす」
ということです。
そして、もう関わらないぞ……と決心した時、電話が鳴りました。
馬場君からの連絡でした。
「状況が悪化したのですぐに来てくれないか。家の中の様子も不穏だし、バンドが分裂の危機にあるんだ」とのこと。
もちろん、断るつもりでしたが、馬場君の頼みは強く……つまり断り切れず……
茅野君と私の二人で出かけることになりました。
大輔と榎本君は、何かの時に備えて待機です。


537:おじゃま道草<9>3/3:02/05/2618:43
出発に際し、榎本君が警告をしてくれました。

「あるものが見えてて、それはとても危険なものです。
しかし、見間違い、勘違いをしやすいものなので、何であるかを言う訳にはいきません。言うとかえって危険です。
知らないで行けば、おそらく見た瞬間にそれだと気付きます。
それは動かない物体です。気をつけてください。
そうだ、よく効くお守りがあるから貸してあげましょう」

彼が言う物体が何であるかは、私にはわかりませんでした。
借りたお守りは茅野君が身につけ、私は水でシャワーを浴びて気を引き締め、夜9時ごろ車で出発しました。

538:おじゃま道草<10>1/3:02/05/2618:44

「こりゃぁ、あの土地に呼び寄せられてるな。
おいで~~、おいで~~って、手で招いてるみたいだな。
たぶん馬場君も魅いられていて、俺たちを引き摺り込む手先になってるんだよ。
何が危ないかって……そりゃぁ最も用心が必要なのは、行き帰りの車の運転だな。
簡単に体を切り刻むとしたら、交通事故がいちばん手っ取り早い……」

そう話しながら、私は安全運転に集中しました。
助手席の茅野君も真顔です。
ときどき助言をしたりして、彼自身もハンドルを握っているつもりで注意を払ってくれました。
馬場君宅に近付くにつれ、緊張感が高まりました。茅野君も同感のようです。
彼の言葉を借りると、
「敵陣深く乗込んで行く……てぇのは、映画だとわくわくするんだが……違うんだよなぁ。
背筋がぞくぞくするのは同じなんだが、緊張感がすごいね。神経がバリバリに張りつめてる。
ずっと鳥肌が立ちっぱなしだよ」

といった感じでした。

そして、もう2,3分で到着……というところで通行止。
工事中につき迂回せよ、とのこと。

「ありゃぁ。よりにもよって、こういう時に工事しなくても……」

茅野君は不平をいいましたが、こういう時にこそこういった障害が出てくるものなのです。

「コの字型の迂回路が書いてあるよ。注意して行こう」

私は矢印のとおり、ハンドルを右に切りました。
順路に従って進むと、前方に交差点。迂回路を示した地図にあったとおり左折。
その先をもう一度左折すれば、いずれもとの道と交差するはずです。

300mほど進むと、舗装が跡切れ、砂利道になりました。

「あれぇーー。やばいかな」

私は警戒しました。
しかし、少し行くとまた舗装路に戻りました。
で、ほっとして前方を見ると……路肩に白い車が止っています。


539:おじゃま道草<10>2/3:02/05/2618:44
嫌な感じがしたので、私はスピードを落とし徐行しました。
嫌な感じはさらに増しました。

「何か違うな、戻ろうか……」

私がそう言うと、茅野君も同意しました。
道幅が狭いので、Uターン出来る場所を探すと……
前方のその白い車の先は、少し広くなっているようです。
私はそのまま車をすすめ、白い車に4,5mの所まで近付きました。
そして、ライトを上向きにして車を照しだしました。
廃車のようです。フロントグラスが割れ、車体には蔦が絡んでいます。
そのとき、背筋をぞーーっと冷たいものが走りました。

「これは!」

近付かない方が良いようです。
私がブレーキを踏もうと思った瞬間、茅野君が
「うわっ、ダメ!止って!戻ろっ!」
と叫びました。
茅野君も同じものを感じたようです。

「バックで戻るぞ!そっちの路肩、見てて!」

私は車を後退させ、そのまま砂利道を抜けました。
そして、舗装路にもどると道幅も少し広がり、なんとかUターンすることが出来ました。

来た道を逆に戻ると、途中で別の迂回路を見つけました。
未舗装なので路地と勘違いし、さきほどは見逃していたようです。
道を確かめていると、通行止の方から地元のものと思われる軽トラックがやってきました。
そして、その道へ入って行きました。

「それ、ついて行くぞ」

1分ほどついて走ると元の道へぶつかり、まもなく馬場君宅が見えました。

着くと、まず先ほどの道について馬場君に尋ねました。
図を書いて、例の廃車の位置を示すと……

「あれ?その道、高速道路にブチ当たって行き止まりのはずだよ。
高速の壁とか、見えなかった?おれは、行ったことないけど……
でもさぁ、その辺の道って、両脇が畑だったりするからな。
路肩が崩れたりすると、ハマルかもなぁ……」

馬場君にはわからないようです。
すると、バンドのメンバーの後藤君が口をはさみました。

「その廃車の先……道……ありました?
俺、バイクでそこの道に入り込んだことがあるけど、廃車で行き止まり……その先は薮になってたはずですよ。
昼間だったから辺りもよく見えたし……
でも、へんだなぁ、その廃車のところのおよそ10mだけが舗装、いや、アスファルトでなくコンクリート敷きだったな……
あ、そうそう、近くに廃屋がありませんでした?
見るからにお化け屋敷ってやつ……そうか、夜だと判らないか……
でも、確かに嫌な感じの場所ですね。墓でもあるのかなぁ?」



540:おじゃま道草<10>3/3:02/05/2618:45
私は榎本君の言葉を思い出し、電話を借りました。

「あ、大輔?榎本君と代って……あ、榎本君?もしかして、例の物体って車?」

「ええ、ありました?
僕に見えたは、白い車が止ってる所です。物凄い霊気があるから、近付くと捕まるかも……
でも、すぐわかったでしょ。
え?そんなに近くまで行ったのですか?わぁ……危なかったですね。
そっちにいると、見る力が弱まるか曇るかするんで、気をつけて下さい。
あえて言わなかったのはね、白い車ってどこにでもあるから、全部に気を取られると見落す可能性があって、かえって危険だと思ったからなんですよ」


残念ながら?この場所の真相はわかりません。
この後、確かめる機会がなかったからです。
また、そうしようとも思いませんでした。
馬場君宅と関係があるのは、間違いなさそうです……

霊障を受けないように気持ちをしっかりさせていたつもりですが、土地の邪気は強く捕まりかけたようです。


541:おじゃま道草<11>1/3:02/05/2618:45
バンドの他のメンバーが夜食の買出しに出た後、馬場君が話し始めました。
彼が訴えたこの1週間の間に起った現象は、次のとおりでした。

1:3日前の雨の時、近くに落雷があり、その影響でシンセサイザーとシーケンサーのデータがとんでしまった。
特にシンセは完全に駄目になり、買い換えねばならない。
とりあえずはレンタルでしのぐが、余計な出費であり、引っ越し費の積み立てが滞る。
場合によっては、来月のライブを諦めねばならない。

2:ギタリスト兼アレンジャーの葉山君が、ある人妻(郁恵さん)とデキているが、その影響で音楽への熱意が別の方向へ向いている。
どうも、他のバンドに声をかけられているようだ。
(注:郁恵さんの写真があったので見せて貰ったところ、すごいすごい、なかなかの因縁持ちでした。
その内の不要な1枚をもらい受け持ち帰って、榎本君に見せたところ……

「この人の目……人間ではない……操られてますね」
という感想が返ってきました。
あとで判ったことですが、馬場君宅を仲介したのは、郁恵さんに紹介された不動産屋でした。
入れ替わりの速い物件は礼金で稼げるのかな?!)


542:おじゃま道草<11>2/3:02/05/2618:45
3:1階では寝ないので例の夢は見なくなったが、2階で寝ていると胸の上に重みがかかってくるようになった。
それほどの重みではなく、目を開けると消える。
あの子供ではないか?(注:当たり!)

4:蒲団を敷いた後しばらく1階に行き、用を済ませてもどったところ、蒲団の中に誰かが居たように感じた。
シーツを触ってみると、寝汗をかいた後のようにほのかな湿り気が残っていた。

5:階段を上ったり下ったりする音が2度聞こえた。2回とも深夜2時ごろだった。

6:家の周囲を歩き回ると、足を掴まれるような感触がして歩みが遅くなる。
ぼうっとしていると、いつの間にか足が釘付けなってしまい、はっと我に返るとその場に立ち尽くしていた。

……ということが、バンドのメンバーのそれぞれに数度ずつあった。


543:おじゃま道草<11>3/3:02/05/2618:46
私は馬場君に、
「とにかく命にかかわることだから、引っ越しを第一優先しろ。
死んでからでは音楽活動もできないぞ。
ここにいる内は、全てが裏目裏目にまわるから何も成功しない。
おれももうここには来ないぞ。来たら最後かもしれん。
今度会うのはお祓いに行く時だからな」

と釘を刺しました。
そしてさらに30分ほど引っ越しの際の諸注意をし、帰途につきました。

立ち去る際、家から10mほど離れたところで九字を切りました。
振返ると、例の立ち枯れの木が妙にゆらゆら揺れていました。

この後、2ヵ月を待たずに彼等は転居、つまり脱走に漕ぎ着けました。
幾らかは借金が残ったそうですが、大事に至らずに何よりでした。
しかし、バンドは解散しました。
葉山君は別のバンドへ参加し、馬場君とベーシストの後藤君は、新たなバンド結成へと動きだしました。

ここで気になることがあります……
葉山君と郁恵さんを除いた関係者全員が、わたしの目の前でお祓いを受けました。
しかし、その2人だけは別の所(神社らしい)に行って祓ったそうです。
その後、彼等とは縁がないので、きちっと切れたのかどうかはわかりません。
まあ、悪い噂も聞こえては来ないので、死んだりはしていないでしょう。
問題は、葉山君がどれほど郁恵さんに食われるか……です。
ナンマンダブ……

完!


544:おじゃま道草これで終わり:02/05/2618:46
この話の読後、よく周囲で「浮遊霊」が動くことがります。
ですが、それは大方この話とは関連がないものです。
意識を「相手」ではなく自分自身に向ければ、簡単に切れます。
言い方を変えれば、「気にしなければ消える」ということです。
しかしながら、一応気の弱い方のために……オマジナイを。
自分の気力を強める効果があります。

次の言葉を3回唱えるか、心の中で強く念じてください。


「ギャーテイ、ギャーテイ、ハーラーギャーテイ、ハラソーギャーテイ、ボージーソワカー」
私が小学4年生か5年生の頃ですから、もう20年以上前の出来事になります。
夏休みに祖父母の家に遊びに行きました。古い大きな家でした。

ある日、昼寝から目覚めてみると、家中が静まりかえっていました。
歩き回っても誰もいません。どうやら一人っきりのようです。

昼寝をしていた部屋に戻ると、天井にぶら下げられている大きな梯子が目に付きました。
これを下ろせば天井裏に上れるんじゃないか?
そう考えた私は、椅子に上って、梯子を引っかけている金具を外しました。
下ろしてみると、それは梯子と言うより、収納式の階段のようなものでした。
手の届くところまで階段を登って天井板を押すと、それは案外簡単に開きました。
初めて登る天井裏は薄暗くて、小さな窓から漏れる光に埃が渦巻いていました。
そこかしこに古そうな箱や戸棚のようなものが置いてあります。

ちょっとの間それらの箱や棚を探っていましたが、すぐに飽きてしまい、天井裏を探検することにしました。

箱や戸棚のある区画を外れると、梁に渡してある板がなくなり、足下は直で天井板です。
所々にある隙間から下の光が漏れていましたが、窓がないのでほとんど真っ暗でした。
天井板は薄くてすぐに割れそうだったので、梁の上を伝って移動することにしました。
板の隙間から下を覗こうとしましたが、狭すぎてよく見えません。

一旦戸棚の所まで戻り箸を取ってくると、先端を板の隙間に突っ込みました。
押し込んだ箸の径が太くなるにつれ、隙間が拡がり下の光景が見えるようになります。
そうやって部屋を上から見ると、家具の配置や大きさが普段の目線とは違って見えて、
人のいるスペースがやたら小さく見えました。
そういうのが面白くて、梁を伝っていろんな部屋を覗き見て回りました。

そうこうするうちに、自分の覗いている部屋の位置関係が分からなくなってきました。
部屋の数が多いのに加えて、上から見下ろしていると方向感覚が掴みにくいのです。
しかも周囲は真っ暗。
ちょっと怖くなってきたので、そろそろ戻ろうかと考え、
ぼんやりと明るくなっている方向に向かって歩き始めました。


その時、横に小さな扉があるのに気が付きました。
天井裏に扉?
妙な感じがして、ついその扉を開けました。
するっと横開きしたその先は、他の場所と何ら変わりのない天井裏の光景でした。
やはり下から明かりが漏れている箇所があります。
何となくためらいながらも、箸でその隙間をこじ開けて下を覗きました。
隙間が狭くて一部しか見えませんでしたが、かなり広い部屋のようです。
ただ、見える範囲に家具はひとつも無く、やけに殺風景な部屋でした。
窓が小さいのか、全体に暗い感じです。
変だったのは、床の畳の上には、何かを書き散らした紙が散乱していたことです。
人の顔や文字などが書かれた紙。それぐらいしか覚えていません。とにかく何十枚もありました。
もう一つ奇妙だったのは、畳の上に白い文字が書かれていたことです。
あまり規則性はなく、書き散らかしているように見えました。
漢字だったと思うのですが、当時の私には意味が分かりませんでした。

もっとよく見ようと思い、体の位置を入れ替えてもう一度覗きました。
が、何も見えません。
角度の加減なのか、はずみで隙間が詰まってしまったのか、
とにかく隙間を拡げてみようと、無造作に箸を突っ込みました。
一瞬、柔らかいものを突いた感触が手に伝わったかと思うと、ドタンッと大きな音がしました。
思わず顔を上げて立ち上がりました。
下の部屋からは、ドタンバタンという振動が伝わってきました。
時折、シュッシュッと畳を擦るような音も聞こえてきます。
立ち尽くす私の足元の天井板が、下からドンドンと叩かれました。
天井を叩く音は次々と位置を変え、何かを探しているようにも思えました。

怖くなった私は、梁の上を走って元の階段のところまでたどり着き、
慌てて下に下りると、天井板を閉めて階段を元通り天井に上げておきました。
しばらく耳を澄ましていましたが、さっきの物音はもう聞こえて来ませんでした。

やがて、祖父母と両親と妹が外出先から連れ立って戻ってきましたが、
私は怒られるのを恐れて、留守中の出来事については黙っていました。

それから2度ほど祖父母の家には遊びに行きました。
内心ビクビクものだったのですが、祖父祖母の態度には特に変わった様子はありませんでした。
やはりビビリながらも、あの殺風景な部屋を見つけようと探し回ったのですが、
不思議なことに、どうやっても見つけることは出来ませんでした。

数年前、祖父母が相次いで亡くなると、家は売りに出され、今では更地になっていると聞きます。