亜米利加石油業界で生きる ~開発編
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南米へ

来週から南米の産油国の一つへ出張することになりそうです。某石油会社の油田を一つまかされて生産最適化の評価の解析をする、まーコンサルティングっぽい内容になると思います・・・。50本くらいの井戸をScreenする予定なので結構楽しみです。うまくいくといいんだけど・・・。結構責任重大です。大丈夫かなあーと、少し弱気になっているのですが・・・。


出張前にボスが秘伝を伝授しに来てくれたんだけど、曰く

1.「一億の製品を買ってもらうには10億円の利益を示さないと奴らは首を縦に振らない」

2.「ポーカーで勝つには、一番頭の悪い奴を先に見つけること。見つけられないときは得てして自分が一番頭が悪いときだ」これはアメリカでよく知られたことわざらしいです。


助言1は分かりやすかったけど、2はどういう意図で言ったのか?でした。来週役に立つといいんだけど・・・

石油生産の最適化問題

近年活発に議論されている石油生産の最適化は大きく分けて四つのカテゴリーに分類できます。


1.Minimizing CAPEX (Capital Expenditure)

これは油田開発に伴う巨額な初期投資をいかに減らすかというものです。一つの油井あたり、陸上油田で掘削費用は大体5千万円から1億、海底油田では数億円から10億円程度かかります。よって、一つの油井で二つ以上の油田を掘りぬくCommingledProductionや、傾斜掘り、一つの油井から何本ものサブ油井を掘るMultilateral技術などを用い、油田あたりの井戸の数を減らし、CAPEXを制約する解析がまず行われます。


2. Minimizing OPEX (Operation Expenditure)

以前書いたとおり、石油生産現場における操業コストは莫大なもので、作業の効率化によって数千万円から数億円の節約は現実的に達成できるものです。ITや電信の発達によって遠隔地からOfficeへのData送信もサテライトを使ったりして可能になりました。またリモートコントロール流量制御装置は油井が水を生産し始めたとき、即座に生産を制御、中止することが可能です。


3. Production &RecoveryEnhancement

油田の状態は刻一刻と変化します。油を生産することで地下の圧力が減少し生産量はゆっくりと減少します。よってよく行われるのが注入井戸を掘り、水やガスを油田に圧入することで圧力を高く保つ手法です。一昔前はよく短期的な生産量を増やすことが注目されていたようですが、最近では長期的なVisionを大事にしようという動きが強くなっているように思います。これはやはり少なくなっていく資源を大事にしようという視点と、油価の高騰により1バーレルでも多くの油を生産したいという石油会社、産油国の思惑があるようです。


4. Minimizing Risk and Uncertainty

いまのTechnologyをもってしても、何千メートルも地下深くにある油田の情報を100%把握することは不可能です。よって石油生産には大きなRiskが伴うことが知られています。一般的には、生産を始めてデータを集計し、SimulationModelを構築しながら油層の情報を徐々に把握していく手法がとられています。

この作業プロセスは、一般に長い時間をかけて行われてきたのですが、IntelligentWellSystemの普及に伴いもっと早いタイムスケールで油田の情報をアップデートすることが可能になりました。またリモートコントロール流量制御装置の導入で、油井の状態をリアルタイムで調整しながら油田の変化に対応することも可能です。これは従来の油田開発に伴うリスクや不確定性に向き合う上で重要な技術のひとつになりつつあります。


以上が一般的に認知されている石油生産の最適化問題だと思います。次回は現在のTechnologyGapについて書こうかなと思ってます。

石油戦国時代

現在の石油業界の軸になっている会社は、大きく分けると4つのカテゴリーに分類できると思います。


1.石油会社

いわずと知れた油田を所有または開発権を保有して石油を生産、販売している会社です。スパーメジャーと呼ばれる会社には、エクソンモービル、シェル、BP、コノコフィリップス、シェブロンテキサコなどがあり、世界をまたに駆けて活躍しています。一方国営石油会社は、国主導で経営されている石油会社で、サウジアラムコなど、中東、中南米など主な産油国はほぼ国営石油会社を所有しています。第三勢力としてはインディペンデントと呼ばれる石油会社で、オキシデンタル、アナダルコなど、メジャーに匹敵する位大きな会社もあります。ここ数年は石油会社の買収、合併が急速に進んでいて勢力図がはっきり落ち着くまでしばらくかかりそうです。ただ大まかな傾向として十年くらい前から、国営石油会社のが急速に力を付けており、業界トップ10のほとんどを占めている状況です。


2.総合サービス会社

アメリカではいわゆる、Service Companyと呼ばれている会社がここに分類され、油田開発に関するほぼすべてのTechnology、サービスを提供しているのが総合サービス会社です。石油会社が油田を買収、経営(マネージメント)するのに対し、サービス会社は開発、生産に必要な装置の販売、油田の調査、ソフトウェアーの販売、現場での作業を担当もしくは補助、新技術の開発をおこないます。ビッグ4と呼ばれるのが、シュランベルジェ、ハリバートン、ベーカーヒューズ、ウェザフォールドの4社。ほかにもサービス会社はたくさんありますが、どちらかというと専門サービス会社的存在ととらえらえられています。


3.コンサルティング会社

小規模のコンサルティング会社は世界中に無数に存在します。石油会社にプロジェクト単位で、派遣社員のように働きに行くこともあるようです。石油会社や、サービス会社である程度の地位までいった人がアーリーリタイアメントを選択して、コンサルティング会社を起こすことも多々あるようです。起業するならこれが一攫千金の近道かもしれません。


4.アカデミック

これは大学、国の研究機関ですね。石油会社、サービス会社ともに、大学と研究プロジェクトを立ち上げて新製品の開発、研究などが活発に行われています。大学はこのスポンサー料で大学院生の授業料、生活費を負担するのが一般的です。だからアメリカの大学院生は1円も払わないで修士、博士課程を取得することも可能です。僕も大学院時代はお世話になりました。


ここ5-6年は石油業界どこへいっても、「Production Optimization」という単語がよく使われるようになりました。どこの石油会社、サービス会社でもProductionOptimizationという部署があるようです。大学の教授のレジュメを見てもExpertの欄に、ProductionOptimizationを載せている人が見られます。


日本語に訳すと「生産最適化」なのですが、実際これでは広義すぎて何を言っているのかがぼやけてしましますね。かっこいいのですが・・・次回に石油業界がなにをOptimizationしているのかもう少しサマライズしてみます。

石油開発現場の最新動向

5年前くらいから、Intelligent Well、Smart Wellと呼ばれる油田開発における新技術が実用化されだしました。日本語に訳すとどうすればいいか分から無いですが、とどのつまりは流量コントロール機能とセンサーを地下に(油層近傍に)兼ね備えた油井ということです。従来の油田開発方法に比べ圧力、温度、流量を実際の地下深く高圧高温の条件下で測定可能なことと、リモートコントロール機能によって制御された石油生産計画が可能になったということです。ちなみにうちの会社はこの分野では現在二番手に位置しています。


3年前まではIntelligentWellSystemの売り上げは一桁だったのですが、急速にこの技術が広がってきており一昨年に二桁になり、去年は20前後。今年は40-60の売り上げが予想されています。業界全体で見ても同じような傾向を示しており、まさしく倍倍です。従来の油井仕上げが2000万円前後程度ですが、IntelligentWellSystemはざっと5000万円から1億円以上かかります。最近の油価の堅調さも後押ししているのかもしれませんが、やはりこのテクノロジーを用いた石油生産の最適化というVisionが業界に浸透してきつつあるということだと思います。


いろいろなデータを見ていて驚くことが、この新技術の導入に積極的なのがいわゆるエクソン等のSuperMajorではなくて比較的中小規模の石油会社であることです。まー、小回りが利くということなのでしょうか。次回は石油生産の最適化についてもうすこし書くつもりです。

あけましておめでとうございます

2005年は好景気に沸いた石油業界でしたが2006年に入っても依然として原油取引価格は高い水準を維持しているようです。当面はは1バーレル(1 bbl)当たり40-50ドルのラインを維持するのではないかと思われます。


中小規模の油井で生産量が1,000 bbl/dayくらいだとしてTaxやロイヤリティーをひいた石油会社の儲け分が、$20/bblくらいだと6,000万円/月の収益があることになります。かなり大雑把ですが、年間で一つの井戸で7億前後のの利益の計算になります。うちの会社が100本の井戸を所有していたら・・・700億円前後ということになりますか。いやーもうかりますねえ。


油井の仕上げにかかる費用は標準的な装備の初期投資で大体1000万円から5000万円(掘削費用を除く)。これが、最新式の装備になると一億円前後まで上昇。その後にいろいろな補修作業等で数百万から数千万円の費用を定期的に投資をするのが一般的です。これが大深海油田になると数億円のレベルまで上昇することも。


歴史的に見て石油会社のストラテジーはコストフォーカスとバリューフォーカスの間をいったりきたり。原油価格が高値で安定しているときはバリューフォーカスに向かう傾向があります。現在の状況がそれにあたるわけです。現在の仕事は石油生産の最適化・・・です。詳しい話は次回にということで。