●元長柾木氏の歩み1 誕生~1998年(era of 13cm Part1)

最近WHITE SOFT『猫撫ディストーション』ニュー速VIPブログで紹介されたこともあって、予約分完売店舗も続出するなど非常に注目されており、このゲームを発表のときから期待していた身としては、大変嬉しく感じています。
しかし、一方で「話題になっているけど元長柾木って誰?」という声も結構目にしたりするので、今日からしばらくは元長柾木先生のこれまでの歩みについて、書いてみようと思います。


※なお、これから色々なゲームの名前を出しますが、(こういうことを書いていいのかは迷うところですが、)元長先生の"作家性"のようなものが個人的にはっきり感じられたものは
・『嬌烙の館』
・『フロレアール ~すきすきだいすき~』
・『sense off ~a sacred story in the wind~』
・『未来にキスを ~Kiss the Future~』
の4作品と、サブシナリオで参加された
・『プリンセスブライド』
それに『裏番組 ~新人女子アナ欲情生中継~』CD版・DVD版(※Standard Editionではない)と、『DEVOTE2 ~いけない放課後~ Standard Edition』(※CD版・DVD版ではない)に収録されたミニシナリオである
・『美術教師・涼子』、あとは
・『ラストオーダー』の終盤部分(New Order)くらいかなと個人的には思います。

もちろん、元長さんが関わっている/いない、入手が難しい/かんたん、値段が高い/安い、どこどこでの評判がいい/悪い、などの緒条件と、そのゲームが個人にとって良いと感じられるかどうかは、それぞれが全くの無関係です。

※また、リンク先がいわゆる18禁の場所となっている場合が多いので、気になされる方は踏まないよう、よろしくお願いします。

※入手難度や入手コストについては、こちらの記事をご参照ください。

以上、ご承知おき下さい。



元長さんの公認プロフィールは、"Street Storyteller in Strategic Stratosphere 元長柾木 webpage"内の"profile"に載っています。
もちろん、これだけでは何のことかさっぱり分からないかと思いますので、色々な本など(#1)で得た情報を基に、適宜補足しつつ話を進めていきます。


元長柾木さんは1975年1月22日に生まれ、兵庫県姫路市にて育ちました。
幼少期~少年期は、いわゆる「オタク」ではなく、氏の世代の多くがそうだったように、『週刊少年ジャンプ』と『ドラゴンクエスト』で育った――と、そう書かれています。
このあたりの感覚が、後にユリイカでジョジョのコラムを書くことにつながったり、「美少女ゲーム」業界で独特のポジションに納まっていることと密接に関連していると個人的には強く思うのですが、あまり言及されている箇所も少なく、下手をすると書籍からの全文引用になってしまいそうなのでこのあたりで。

その後、神戸大学工学部に進学。工学部を選択されたのは、「SFに憧れて」ということのようです。
大学時代は専ら図書館で笠井潔氏や島田荘司氏の小説や評論、また哲学関係の書籍などを読んでおられたそうで、ここがシナリオライターとしての強力なバックボーンとなっているように感じられます。
(詳しくは『最終批評神話』所収の対談、 "法・倫理・社会を超えて"をご参照ください。)
1997年夏前ごろから、「単位が足りずに進学できず、アルバイトを探した」ことがきっかけで、大学在学中にビジュアルアーツ傘下(#2)の13cmでゲーム制作の仕事を始められます。
その後、大学に行きつつ13cmにも通う生活を送る中で、以下のゲームの制作に関わられました。

●飼 -かう-
ぺとろの棚ぼた生活記-飼
発売日//////:1998年1月30日
ブランド//////:13cm
対応OS//////:Windows95
メディア/////:CD-ROM/1枚
定価////////:8,800円
音楽再生方式:Direct Sound
入手難度////:S
入手コスト///:E
参加パート///:シナリオのほんの一部、スクリプト。
参加パート///:スタッフロールで「Special Thanks:スターロッチ系」と出ているのが、おそらく元長氏のことだと思われます。
備考////////:Windows98以降のOSで動かす場合、Windows95とはフォントの取得方法が異なることが原因で、文字化けを起こす致命的なバグがあります。
備考////////:当該環境でプレイする際には、13cmが配布している修正ファイルを当ててください。
販売所//////:駿河屋
コメント//////:記念すべき元長ゲー第一作、といっていいんでしょうかこれ。
コメント//////:2005年末~2010年初頭まで、Windows2000/XP/Vista対応のDL販売版がゲームのDL販売サイト各社で取り扱われていたので、「プレイするだけなら」最も入手が容易なゲームだったものの、販売終了に伴い現時点では最も入手が難しいゲームのひとつになりました。
コメント//////:※とはいえ、当然ながら入手難度と値段とゲーム内容は、それぞれが全くの独立事象です。
コメント//////:ゲーム内容は、「巨大製薬会社の社長の息子である主人公が、怪しげな研究所にて、様々な事情で研究所にやってきた女性を薬物で調教する」というものなんですが・・・
コメント//////:やたらゲーム中にランダムイベントが発生するわ、やたら選択肢がシビアで慣れないうちは(慣れても気を抜けば)すぐにバッドエンドに直行するわ、やたら人死にがでるわで、本人のコメント『コンピュータゲーム史上最高(最悪?)のタナゲー(造語。タナトスゲームの略。エロゲーの反対語)。』というのがまさに言い得て妙に感じられてしまうものになっています。
コメント//////:買い求めても「記念品」以上のものではないと個人的には確信していますが、物好きな方はどうぞ。


●好き好き大好き!
$ぺとろの棚ぼた生活記
発売日//////:1998年7月31日
ブランド//////:13cm
対応OS//////:Windows95
メディア/////:CD-ROM/1枚
定価////////:8,800円
音楽再生方式:Direct Sound
入手難度////:S
入手コスト///:S~SS
参加パート///:スクリプトの雛形、テストプレイ。
参加パート///:これも、スタッフロールで「Special Thanks:スターロッチ系」と出ているのが、おそらく元長氏のことだと思われます。
備考////////:参加パートで書いているように、表に出る仕事に関しては「ほぼ無関係」です。
販売所//////:パソゲーの穴場
コメント//////:幼い日のトラウマ体験が原因で、重度のラバーフェチになってしまった主人公が、いつも同じ電車になって密かに想いを寄せていた女子校生を拉致監禁して全身ラバーマスクを被せるところから始まる悲劇的純愛物語。
コメント//////:「拉致監禁」といっても、Studio Mebiusの『絶望』みたいにやる気マンマンで拉致っているわけではなく。むしろ思いつめて拉致監禁しておきながら「食事が拉致った子の口に合うか」だとか、そんな事でうじうじ思い悩む主人公の思考回路の狂いっぷりが妙にリアルで、ひたすら物悲しいギターソロのBGMと相俟って、プレイしていると頭がおかしくなりそうです。
コメント//////:このゲームの制作の真っ最中に「児童ポルノ法」が成立するかどうか、「二次元の絵」が規制対象になるかどうか、という問題が勃発し、当初予定されていたロリロリの「めるん」というキャラクターが、原画やCGが大方できあがっている状態から削除されてしまいます。その素材は、後に別の形で世に出ることになるのですが・・・
コメント//////:あと、超どうでもいいことなんですが、いつのまにかあっちこっちの在庫が綺麗さっぱり無くなっていてびっくりしました。確か先月あたりまで駿河屋で6000円くらいだった気がしたんですが・・・


●入院
$ぺとろの棚ぼた生活記-入院
発売日//////:1998年12月11日
ブランド//////:13cm
対応OS//////:Windows95/98
メディア/////:CD-ROM/1枚
定価////////:8,800円
音楽再生方式:Direct Sound (ただし、主題歌『キミとSynchronicity』のみ、CD-DAで収録)
入手難度////:B
入手コスト///:E
参加パート///:細かい台詞と、幾つかのエンディング
参加パート///:スタッフロールで「Senario:メソポタ宮綾麿」と出ているのが、元長氏です。
販売所//////:駿河屋
販売所//////:Amazonマーケットプレイス
販売所//////:ぱそこん倶楽部Side-B
コメント//////:大学入学を控えた主人公が、お金持ちのお嬢様の車にはねられ入院する破目になった病院には、中学の頃からの幼馴染やドジな看護婦さんなどがいて、お嬢様も毎日見舞いに来てくれて―――という、「よくあるエロゲ」っぽい作品ではありますが、システム周りが微妙にカオス。セーブは「アイテム」欄の「日記」からできる、ということに気づくまで結構わたふたしました。
コメント//////:あと、主題歌『キミとSynchronicity』は桃井はるこさんの手によるもので、ちょっと調べた限りではこのゲームにしか収録されていないとか。
コメント//////:「中谷一族」初登場作品でもあります。女の子とのエンディングに辿りつけなければアッ――!!

サイズと日付の問題で、1999年以降はまた明日。



(#1)・・・主な情報ソースとして
(#1)・・・Street Storyteller in Strategic Stratosphere 元長柾木 webpage内"works"
(#1)・・・および"works"旧バージョン、その他に
(#1)・・・雑誌「Colorful Puregirl」2003年4月号・5月号所収 "物語の現在、美少女ゲームの未来"/ビブロス
(#1)・・・同人誌『美少女ゲームの臨界点・Hajou Hakagix』/波状言論
(#1)・・・同人誌『最終批評神話』所収 "法・倫理・社会を超えて"・講談社BOX『東浩紀のゼロアカ道場 伝説の「文学フリマ」決戦』収録版/最終批評神話・講談社
(#1)・・・を使用しています。
(#1)・・・他にも雑誌・単行本の著者紹介文やあとがきや、twitterでのつぶやきなども参考にしていますが、煩瑣になるので逐次の紹介は省略します。

(#2)・・・これは元長氏が自ら『最終批評神話』所収の対談、 "法・倫理・社会を超えて"で注釈されていることもあるのですが、
(#2)・・・「ビジュアルアーツ」という企業は、ゲームの卸売りサービスとゲームエンジンを他のソフトメーカーに提供している企業なので、「傘下」といっても、親会社・子会社の関係などの明確な資本関係があるわけではないようです。