「お願いがあります」

その一言から始まったままたのセリフを他所に、サク、ぽめ、ぱるむはそわそわと周囲を警戒していた。

天気は素晴らしい快晴、雲ひとつ無い秋晴れの日に三人はままたの海の家を訪問していた。
理由といえば正しく呼び出されたわけではある。
白いダイニングテーブルを囲み、出されたティーカップを傾けつつ、しかし警戒は怠らない。
何故か。
ままたの呼び出しは十中八九何処かに連れて行かれるからである。
毎度毎度手段が変わるそれに対し、段々と警戒を持たれていることをままた自信は確実に理解していた。
まず玄関をくぐるにあたり、サクは片足を入れたかと思うと足場がしっかりあるのかを確認し、その背後を守るかのようにぽめとぱるむはキョロキョロと見回していた。
次に、ダイニングの椅子の座面を周到に確認し、そして座ってからもテーブルの上、天井、床などとにかく確認する。
特に鋭く気配を伺うサクはままたの一挙手一投足を五感すべてを以って警戒していた。

「お願い、とは?」
出された珈琲はいつも通りの味で何か入っているわけではなさそうだ。
そんな様子にままた本人はというと、いつも通りへらへらと笑っている。
「いやね、知り合いのとある屋敷の女主人がさ、ちょっとプティパから何人か連れてきてって言われてさ」
そう言うとままたは三人と同じようにダイニングチェアに腰掛ける。
「お手伝いですか?」
ぽめの問いにままたはしっかりと縦に頷いた。
「どうしても人手が欲しいらしい。良い人だし、ちょっと昔から縁が有ってね。一緒に助けてもらえないかなと。」
「そうなんですね!お手伝いしますよ!」
ぽめとぱるむの快い返事にサクも同意の意思を表す。
「どちらのお屋敷でしょう?」
サクの問いにままたは
「さすがだなぁ、いやはや素晴らしい」
と、妙に明後日な返事を返す。
そこで、サクが気がついた。
「ままたさん、照明変えたんですか? 以前は紐付きではなかったですよね?」
ダイニングテーブルの真上、程よく装飾された照明の真ん中から一本、照明の紐にしては太めのそれが垂れている。
「さすがサクっちお目が高い~」
ニコニコと。とてもいい笑顔でままたがその紐に手を伸ばす。
その瞬間、サクはぽめとぱるむを抱えて海の家から飛び出そうと地面を蹴った。

しかし、一瞬遅くままたが紐を引いた瞬間、ガコン!と大きな音がして。


海の家の床が抜けた。



「こんな大掛かりな仕掛けをおおおぉぉぉおおおおおおおお」
落ちていくサクと、サクに抱えられ、涙目なぽめとぱるむをままたは宙に立って見送っていた。
「立体フォログラフィー万歳!」



何故、もっとシンプルな入り口を用意できる癖にわざわざ一度穴に落とそうとするのか。

サクはもう何度目か分からない浮遊感に身を任せることにした。
危険が無いことは承知している。
ただ、何故落とすのか。
問いただしたところで、いつもの返事が返ってくるに違いないということも承知はしている。

「お約束かと思って(テヘペロ☆」

あぁ、次はどんな世界なのかと、どこか冷静な頭が思い馳せていた。