わたしが短大を卒業して就職をした頃、我が家は引っ越しをした。
今までは駅まで徒歩25分の一軒家だったのだが、年老いてくると庭の手入れが面倒になったらしく、駅近のマンションに引越したのだった。
1日の乗車人員が10万を超える駅の駅前にあるマンション。そのため、わたしの部屋の窓を開けていると、ガタンゴトンという電車の音だけでなく、駅の自動アナウンスがバリバリ聞こえる。「◯番線に下り列車がまいります」というやつだ。
とにかく、煩くて、何もやる気が起こらなかった。
でも不思議と、リビングに居ると、それらの音は全く聞こえない。
そんな状況に嫌気がさして、お願いだからクーラーを付けて欲しいと頼んだ。そうしたら、窓を閉められるから。
何年も何年も頼んだ。多分、5年くらい。
だが、何度訴えてもダメの一点張り。
既に就職をしていたので、自分で購入するお金もあったため、わたしがクーラーの代金を支払ってもいいからと頼んだのだが、結局聞き入れてもらえなかった。
平成一桁の頃とはいえ、真夏なら30度を超えていたから、窓を閉め切るわけにもいかず…。
今なら確実に熱中症になっていただろう。