今日は。
コージィ城倉がちばあきおの「キャプテン」の後日談を描くとのニュースが入ってきました。
コージィ城倉は手塚治虫を意識するあるマンガ家を描いた「チェーサー」などを描いている作家であり「グラゼニ」や「江川と西本」といった野球マンガの原作者(ペンネーム森高 夕次)でもあります。
この「キャプテン」も期待できそうです。
今回は、久しぶりにマンガ、それも野球漫画について書きたいと思います。
「トキワ荘」の住人で、「新漫画党」党首の「寺田ヒロオ」の代表作です。
<スポーツマン金太郎:
野球マンガのバイブル?>
1.イントロ
僕は、しばらく、精神的につかれていたようです。
好きなマンガも読む気になれませんでした。
そんな時に、思い出したのが、この「スポーツマン金太郎」です。
寺田ヒロオのような優しい漫画なら読めるかなって思い、相棒のKAITOにヤフオクでせり落としてもらったのこの本が本箱にあるのを思い出し、読み始めました。
すると、読めるんです。
こんな少しブルーな時は、人間模様のギタギタしたマンガより、寺田ヒロオのような純粋な子供が主役の作品が合いますね。
考えてみると、「スポーツマン金太郎」は桃太郎と金太郎という「おとぎの世界」のスーパー スターを、漫画の世界ではありますが、一緒に登場させた野球のおとぎ話です。
更に、後半ではこの二人のライバルとしてアメリカのスーパー ヒーローのターザンもプロ野球の世界に登場させます。
最近のCMで、いつも驚かされるのは、「桃太郎」「金太郎」「浦島太郎」たちが一緒に活躍する、AUのCMです。
ここ数年、ソフトバンクの白い犬を押させえて、圧倒的な人気かと思いますが、こんな日本のおとぎの世界のスーパー スター達を一緒に登場させたのは、この「スポーツマン金太郎」が最初かもしれません。
CMのヒーロー達は、役者さんの関係で成人してしまっていますが、この「スポーツマン金太郎」のヒーローたちはおとぎの世界のままの少年なのが更に「おとぎの世界」を演出しています。
何せ、試合の時は、ちゃんとユニフォームを着ていますが、普段の生活は、金太郎はあの丸金印のついた、前掛け姿ですし、桃太郎は袴姿なのですから。
金太郎は、まん丸な健康そうな体と目が特徴で、感情をそれこそ目いっぱい外にだす少年です。
一方の桃太郎は、色白の少年で、感情をあまり外に現さない少年。
二人は野球はもちろん、私生活でも子どもらしく他愛もなないことで、競い合いますが、この対照的なライバル二人が印象的ですね。
それと、金太郎の友人として、クマの「クロちゃん」が一緒に生活しています。
桃太郎の友人は、ウサギと犬と雉。
それも、人間の言葉を使うのです。
こんな子どもがプロ野球にいきなり入り、その時に動物と一緒に生活をする荒唐無稽な設定は、やはり昭和30年代の作品らしいですね。
又野球漫画、それもプロ野球を舞台にした漫画に、こんな言葉を話す動物を登場させた例はないと思います。
僕は、何の違和感なしに読み進めていましたが、さすがに後半の新聞社の一日カメラマンのところで、熊のクロチャンもいっしょにカメラマンになるところではさすがに「あれっ」と思いました。
2.ストーリー
〇章立て
寺田ヒロオ自身によって、各巻、章立てはされていません。
また、僕の読んだ講談社漫画文庫の1から4巻からなるこの作品は1から最終の33迄、通番が振ってあります。
考えてみると、野球の背番号みていでいいですね。
その上に、選手の名前ではないですが、例えば「1.おとぎ村の野球選手」とでもタイトルを書いてくれると更によかったのですが・・・。
僕も、各番号の後に、タイトルはふれませんが、全体を、勝手に、章をつけてみました。
第一章:ジャイアンツVSホークス編(作品1~10)
第二章:ジャイアンツ チームメート編(作品11~19)
第三章:ジャイアンツVSホエールズ編(作品20~26)
第四章:ターザン編(作品27~33)
〇ストーリー
第一章:ジャイアンツVSホークス編(1~10)
おとぎ村選手権試合が開催され、足柄山ジャインアンツの ピッチャーで四番の金太郎と鬼が島ホークスのピッチャーで四番の「きびだんごや」の桃太郎が試合をします。
何回やっても1対1で、勝負がつかず、回は進みますが、二人以外の選手はもうへとへと。
そこで、勝負を決めようと 桃太郎はホークスへ、金太郎はジャインアンツへ入ろうと、クマの「クロちゃん」と上京することにします。
金太郎は、後楽園球場で、川上監督にアピールし、ジャインアンツ練習場で入団テストを受け、テストに合格
一方の桃太郎は、ホークスでグランド・ボーイをしています。
鶴岡監督は、新聞でジャインアンツに金太郎が入団したのを知ります
そこで、金太郎が、桃太郎の友人ということで、特別に入団テストを受けさせることにします。
野村・広瀬・小池相手にピッチ―をやり、3人にホームランを打たれますが、三人がすごいボールだと監督に進言し、めでたく入団が決定します。
ここからの二人の活躍が始まります。
金太郎は、後楽園で、バッターとして村山投手から、ランニングホーマーを打ちます。
桃太郎はピッチャーとしてマウンドにあがります。
こんな二人金太郎と桃太郎の人気は高まります。
どちらが野球がうまいかがファンの関心毎です。
そんな二人は、オールスターに選ばれ、金太郎があわやホームラン性の当たりをうつのですが、外野手広瀬に取られ、ここでも引き分け。
第二章:ジャイアンツ チームメート編(11~19)
桃太郎は、1年中、チーム内で、同じポジションで競争ができると、金太郎のいる巨人に入団。
それからは、毎日二人は起きた時間、顔を洗った時間の早さまで争うようになります。
第三章:ジャイアンツVSホエールズ編(20~26)
桃太郎は、自分の競争心がうすれてきたため、大洋ホエールズに移籍します。
最初の試合から、桃太郎・金太郎も1番打者で登場
桃太郎は、金太郎のグラブだ届かないところにヒットを打ちます。
第四章:ターザン編(27~33)
大リーガー ターザンジュニア 阪神に入団します。
藤本監督は、「金太郎の100と桃太郎99をあわせたよりすごいと言う」で 背番号200をターザンに与えます
ホームランを打つターザンは雄たけびをあげます。
このターザンを倒すために、下手投げの投球で挑みます。
〇象徴的な場面
この作品を表すエピソードとして「20」を紹介いたします。
桃太郎は、自分の競争心がうすれてきたため、大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)に移籍します。
最初の試合から、桃太郎・金太郎も1番打者で登場。
桃太郎は、金太郎のグラブだ届かないところにヒットを打ちます。
金太郎「さすが桃ちゃん、打球ののびがすごい」
桃太郎「さすが金ちゃん、とられると思った」
お互いに褒め合います。
桃太郎が犠打で本塁を突くのを、金太郎の矢のような本塁送球が阻止します。
その裏、今度は金太郎が三塁桃太郎の右を抜きヒット。
金太郎が、果敢に三塁に向います。
この時の絵がスピード感あって、すごいです。
今の作家でこんなシーンは描ける人は少ないんではないでしょうか。
判定はアウト。
金太郎が猛烈に審判に抗議します。
桃ちゃんは、落球したと。
桃太郎は、審判に言います「僕落としたよ」
それでも、審判はジャッジを変えないので、桃太郎は「ごまかせません」と自ら退場を申し出ます。
審判団が協議の結果「セーフ」に変更。
正に、この場面を寺田は描きたかったのではないでしょうか。
「ごまかせない」少年ならではの心理です。
このように寺田は、漫画もごまかせなかったのだと思います。
純粋なマンガを書きたいという思いを、たとえ「古臭い」と言われても、寺田の信念がそれを許せなかったのでしょう。
そのため、人気があったのに、若いうちに、「筆を折る」ことになってしまったのでしょうか。
寺田ヒロオの作家の姿と「スポーツマン金太郎」のもう少し詳しい内容は次回3月4日のPART2で紹介したいと思います。