今日は。
ワールドカップ ラクビ―で、日本の活躍に対する思いがヒートアップしているように思いますが、あたりを見回すと、少し「涼しさ」を感じたりする今日この頃ですね。
明日9月27日は「中秋の名月」だそうです。
きれいなお月様が見えるといいですね。
今回は「『サイボーグ009』」石ノ森章太郎 」に続き、「サイボーグ009」の「少年キング編」です。
「サイボーグ009(少年キング編)」
「サイボーグ009」をもう少し詳しく見てみましょう。
この作品を読んだことが無い人には、「ネタバレ」になってしまうかもしれません。
でも、そんなストーリ―は知っていてもこの作品は堪能できると思います。
<009 第一章 :誕生編>
少年誌では、戦争物の漫画(「ゼロ戦太郎」、「ゼロ戦レッド」)といった太平洋戦争で活躍したゼロ戦とそのパイロットを描いた戦記物や、「鉄人28号」のような戦中の技術から生まれた主人公が流行っていたのです。
この「サイボーグ009」は戦争をテーマにしているが、新たな「第三次世界大戦」を念頭におく新しいタイプの作品でした。
その「第三次世界大戦」をたくらんでいるのが、世界に武器と戦争を売る「死の商人:ブラックゴースト」。
ブラックゴーストは成層圏戦争用兵士として、ギルモア博士らの科学者をだまし、サイボーグを用意しようとし、研究開発に着手しました。
そのための実験用人間狩りを開始します。
その「人間狩り」された一人が、 「嶋村ジョー」でした。
この作品、「サイボーグ 009」こと嶋村ジョーの少年鑑別所からの脱出から始まると記憶していました。
今回見直して、核兵器が投下される場面だと知りました。
当時小学生だった僕にはただの爆弾程度だと思ったと思い簡単にスル―していますが、、成人した僕にはかなりショックなシーンです。
そしてソ連のロケットの打ち上げが描かれ、超高層での戦いを示唆しています。
第一部誕生編は、ここに全てが凝縮されていると思いました。
その後に、ジョーの少年鑑別所からの脱出が始まります。
余談ですが、 「少年キング」の連載時は、「人間狩り」の話は「009」だけで、文庫化にともない、後から009以外のメンバーの誕生のストーリーを追加したそうです。
そのメンバーは001から009まで、ソ連からの「001」 、アメリカからの「002」 、フランス人
「003」 、ドイツ人「004」 、アメリカのインディアンの「005」、中国人「006」、イギリス出身の「007」、アフリカ出身の「008」そして日本とアメリカの混血の「009」と世界中から集められています。
国連の五大国(正確には当時はまだ中国でなく、台湾だったが)に日本とアフリカそしてアメリカの一部であるインディアンという構成が面白いですね。
ある意味、五大国は核との関連なのかもしれません。
そのメンバーを束ねる、ギルモア博士の出身は明らかにされていなかったと記憶しています。
話がそれますが、ギルモア博士の鼻が大きいのはやはり「鉄腕アトム」の御茶ノ水博士の影響なのでしょうか?
この「第一章:誕生編」はギルモア博士が、ブラックゴーストの真の正体を知り、9人の「00ナンバーサイボーグ」をブラックゴーストの手から連れだし、ブラックゴーストと戦いを開始する章です。
ここでの「009」とロボットや戦車との戦いのシーンはスピードに溢れています。
後年ですが、石ノ森の作品は動きを抑えているのではないかと感じていたのですが、この頃の009のスピード感は映画的で、半端ないです。
映画的と言えば、第一章のブラックゴーストが引き上げるシーンの最後がすごいのです。
ブラックゴーストの潜水艦と飛行機の大軍団が大海原のどこかに立ち去るシーン。
潜水艦と飛行機が大軍団で点になっています。
そして、ブラックゴーストの首領がつぶやく…
「われわれぜったい滅びないのだ」「世界中のやつらがにらみあっているあいだはな」。
<009 第二章:黒い幽霊団(暗殺者)編
そのブラックゴースト(黒い幽霊団)は、ギルモア博士の親友のいる日本に戻った00ナンバーサイボーグに、「0010」から「0013」までのサイボーグを、 「刺客」として送り出します。
ブラックゴーストを裏切った、試作の「00ナンバー」のサイボーグとその生みの親であるギルモア博士を倒そうとする「009」以降のナンバーを持つ「刺客」サイボーグとの戦いが始まります。
刺客に送られるサイボーグは「009」までの人間型のサイボーグとちょっと違うサイボーグもでてきます。
0010はプラス極とマイナス極を持つ兄弟サイボーグ。これは人間型。
0011はクモ型の大型ロボット。
人間の脳のみを持っているからサイボーグなのだという。
0012は、これも人間型ではなく、脳機能を持つ「洋館」。
0013は 口のきけない少年(加速装置がついている)。
脳波が巨大ロボットを操る。
人間とロボットのコンビネーションです。
この「0013」は刺客のサイボーグの中で少し異彩を放つ。
「009」と「0013」が単なる少年として接する時に、「009」に優しくされ、戦うのを少し躊躇します。
でも、「0013」はブラックゴーストを裏切ると爆破されるようになっているので、戦わざるを得ない設定です。
「0013」の心の中が最後にダイイング メッセージとして紹介されます。
「(009と)友達になりたかった」
時々、石ノ森はこういった言葉を作品に散りばめるのです。
そしてブラックゴーストとの戦いは、潜水艦に乗って、日本を離れての「第三章:放浪編」「第四章:ベトナム編」と続きます。
「ベトナム編」は当時実際に大きな戦場だった「ベトナム」が舞台になっています。
作りものではなく、実際に戦争が起きている舞台へ読者を作者は連れて行っているのです。
ここで、戦争は架空のものでなく、現在実際に起きていることを読者に石ノ森は伝えたかったのでしょうか。
この章には「サイボーグマン」というサイボーグがでてくるのだが、ブラックゴーストの武器を政府軍や「ベトコン」紹介する「死の商人」を演じています。
<009 第五章 ミュートス サイボーグ編>
ブラックゴーストとの戦いは、一旦、この章でクライマックスに達するのです。
これが、連載が最初に開始された雑誌「少年キング」での最後の章だから。
この章で、ギルモア博士のブラックゴースト時代の研究仲間のガイア博士とウラノス博士が登場します。
ウラノス博士は、ブラックゴースト時代に、ギルモア博士と仲が良く、ギルモア博士とは戦いたくないという設定です。
一方のガイア博士にブラックゴーストから「00ナンバー」サイボーグの抹殺命令が下るのです。
エーゲ海の火山島「マグマ」に来て戦えと、ギルモア博士に連絡します。
おそらくここにでてくるサイボーグのキャラクターからギリシャを意識しているのでしょう。
ガイア博士とウラノス博士が準備したのが「ミュートス サイボーグ」です。
ミュートスサイボーグは個々の能力は、「00ナンバー」サイボーグより格段に優れているのだけれど、お互いの能力を知らない設定になっています。
ここが「00ナンバー」サイボーグとは大きな違いになっていのです。
「ミュートス サイボーグ」を紹介しましょう。
ケンタウロスDとケンタウロスK:
名前の通り、上半身が人間で下半身が馬。
ガイア博士に忠実なサイボーグ。
アキレス:
両足が加速装置。
003を助けようとした「パン」に右足の加速装置を噛ま
れ、両足のバランスを崩した状態で加速し、失速。
アトラス:
サイボーグというより、自立するロボット。
ヘレナ:
木馬を009に壊されるも、009に助けられる
逆に、アポロンに負けた009を助ける。
アポロン:
「ミュートス サイボーグ」の中では、中心的なサイボーグ
で、「00ナンバーサイボーグ」の「009」的存在だ。
能力的にも、加速装置だけの「009」に比べ目にみはる
ものがある。
「アポロン」と009の二人の戦いでの会話が印象的です。
アポロン 「僕の体は摂氏3000度のぐらいまでの熱をだせる。
手のひらからは6000度の熱波。
ゆびさきからは、8000度の熱量を持つレーザー光線だ。
さてそれで、お前の能力は?
まさか加速装置だけというんじゃないだろうな。」
009:「(あとは)、勇気だけだ。」
アポロンとの戦いで、一度009は負け、海に落ちてしまいます。
その後、再びこの二人は戦うが、途中アポロンの姉ヘレナがアポロンがその自身が発する高熱のために、入れないとする海へアポロンを落としてしまいます。
そして、009とアポロンの戦いの中、発生していた地震に「マグマ」島は、海に沈んでしまうのです。
まるでアトランティス大陸のように。
最後は少し、連載終了のため端折っているところがあります。
この「ミュートス サイボーグ編」は仲間を信じあう試作のゼロゼロナンバーと、個々の能力は高いけど、仲間を良く知らない「ミュートス サイボーグ」の対比が面白かったです。
読者に難解という理由で、この戦いを最後に、「少年キング」での連載が終了してしまいました。
石ノ森の心中はどうだったのでしょう。
ここで、この作品の連載を中止しなくてはならないとはさぞかし、無念だったことでしょう。
当時、「少年キング」は小中学生が読者だったのだから仕方がないのかもしれません。
そういう当時小学生だった僕も、ここまではあまり記憶にありません。
アポロンが印象的で、彼の事くらいしか覚えていなかったと思います。