私的 アメリカ フォーク列伝Part8:ジョニー・ミッチェル:元祖「ギタ女」 | 懐かしエッセイ 輝ける時代たち(シーズンズ)

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懐かしい’60s’70s’80s
ひときわ輝いていたあの時代の思い出のエッセイ集です。
毎週土曜日更新予定です。

 今日は。

 今日は梅雨の谷間なのでしょうか、空が青く気持ちいいです。

 その空に、アニメ「ドラえもん」の初代ジャイアンの声の「たてかべ和也」さんが逝ってしまいました。空の上で、得意の歌を歌ってください。


 今回は、もうパート8まで来てしまいましたが「私的 アメリカ フォーク列伝」で、この女性をお届けしたいと思います。


<ジョニー・ミッチェル>


ジョニー1  最近「ギタ女」なる言葉が流行っています。
 何のことはない、ギターを弾く女性のことだといいます。
 そう言えば、テレビでも、最近若い女性シンガーでアコースティック・ギター持って歌うアーティストが割と目立ちます。
 「ギタ女」がトレンドだといいます。
 「miwa 」「Yui」といったアーティストがいるそうです。


  でも僕らの世代の「ギタ女」は何と言っても、ジョニー・ミッチェルでしょう。
 このエッセイのタイトルが「私的アメリカフォーク列伝」で、ジョニーはカナダ出身ですが、北米大陸ということで、アメリカに入れさせて頂きます。


 ジョニーの「青春の光と影」「サークルゲーム」をよく聞きましたと書きたいところなんですが、実はミッチルがギターの「変則チューニング」の代表であることは知っていましたが、残念ながら、高校生・大学生当時はそんなには沢山は聞いていなかったのです。
 わずかに一枚ライブ盤「マイルズ・オブ・アイルズ」を持っているだけでした。
 このアルバムは2枚組で、LAのサックスの「トム・スコットとLA Express」がバックを務めていました。


 大学生の頃にジョニー・ミッチルを聴こうと思って、ベスト盤が無かったので、ヒット曲を演奏しているライブ盤を購入したのだと思います。
 このアルバムには、「青春の光と影」・「サークルゲーム」といった彼女の当時の代表作が入っていましたから。

 

 このアルバムはLAにあるユニヴァーサル・アンフィシアターでほとんど収録されています。
 両開きのLPジャケットは、その客席からステージを撮った写真に、赤いペニキュアを塗り、椅子に脚をかけるジョニー自身が写っています。
 大学生当時少し、赤いペニキュアに少しドキッとしたのを覚えています。


 このライブアルバム、購入時の予想と少し違っていました。
 もっとフォークぽいアルバムかと思っていました。
 実際には、このアルバムはトム・スコットとLAエキスプレスとのJAZZがかった曲と、「青春の光と影」「サークルゲーム」といった従来のフォークのパートからなっていました。
 今から思えば、このアルバムはトム・スコットとLAエキスプレスがフィーチャーされているのですから、全編フォークであるはずがないのはあきらかなのですが、当時はトム・スコットが何者か知りませんでしたので仕方ないことかと思います。


 「青春の光と影」はジュディ・コリンズのバージョン、「サークルゲーム」は映画「いちご白書」で使われたバフィ・セントメアリーの曲が有名で、僕自身もジョニー・ミッチルのバージョンをこのアルバムで初めて聴きました。


 でも、このライブでも、ギター1本で歌うジョニーの「青春の光と影」・「サークルゲーム」は、やはりすごかった。
 ギターはもちろん、変則チューニング、「オープンD」だと思います。
 (このエッセイを書くのに色々調べたら、実際は「オープンG」チューニングでした。)


 ギターのチューニングの「オープンG」チューニングについて、少し説明しましょう。


 ギターのチューニングは、ノーマルでは、6弦からミラレソシレ(EADGBE)です。
 これは基本的には、エレキギターもアコースティックギターも同じです。
 上から下まで弦を弾いてもコードにはなりません。


 変則チューニング「オープンG」は
 6弦から(レ)(ソ)レソシ(レ) (D)/(G)/D/G/B/(D)となります。
 つまり、( )でくくった6弦と5弦と1弦の音をノーマルチューニングから変えています。
 弦全体を弾くと、シレソ(BDG)の和音でGコードの音になります。
 この「オープンG」の何がいいかというと、ギターのフレットをおさえることなく和音が響くので、文字通り「オープン」な響きがでることです。


 「オープンG」チューニングで歌う彼女の曲は、歌がのるギターがとても解放的で、その上に彼女のファルセットの少し細い繊細な歌が響き、とても不思議な雰囲気を醸し出します。
 もう一人の女性の代表シンガーで、太めの声のジョーン・バエズ とは少し違います。




 
ジョニー3  70年頃の彼女の映像(BBCライブ)をYouTUBUで見てみると、白いワンピース姿で歌う彼女は、決して美人ではありませんが、とても可憐な女性です。
 この彼女は、その後に、この「マイルズ・オブ・アイルズ」頃のアルバムにもその片鱗がありますが、「あねご」のような、一種の凄味を出してくるのは予想できません。
 ギター一本で、時にはピアノを弾いていましたが、不思議な存在感があるシンガーです。
 冒頭で紹介した日本の「ギタ女」のシンガーとはやはり、何かが違います。


 僕の経験では、曲というのは最初に聞いたバージョンが常に一番で、その曲の作者のバージョンであっても、その後に聞くと、最初に聞いたアーティストのバージョンに軍配があがります。
 「サークル ゲーム」と「青春の光と影」は後から聞いた作者ジョニー・ミッチェルの曲に軍配があがりました。
 こんなことは、あとにも先にも彼女くらいかと思います。
 (もう一人いました。ボブ ディランです)


 詩に関していうと、ジョニーの場合、不思議なことに、詩は他のアーティストとは別でした。
 ディランやバエズの場合は、その詩の世界も一緒に味わったのですが、僕にとって、ジョニーの曲はサウンドがあって、そのサウンドにのっているのが詩でした。
 なぜかわからないのですが、ジョ二―に関しては、今もそんなスタンスです。


 彼女はライ盤[アイルズ オブ マイルズ」の前のアルバム「ブル―」あたりからジャズに傾倒していきます。
 僕も、この頃ジャズを少しは聞いていましたが、もう彼女についていけず、当時は、彼女は僕の届かない世界へと行ってしまいました。